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「未完成の映画」

「未完成の映画」
2025年5月14日(水)池袋シネマ・ロサにて。午後12時55分より鑑賞(CINEMA ROSA 2/C-8)

~映画撮影中に襲うパンデミックの恐怖。コロナ禍をリアルに描いたフェイクドキュメンタリー

 

先日、「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」をもう一度観てきた。初見ではわかりにくかったところもほぼ理解できて、改めて良い映画だと思った。買いたかったパンフレットが売り切れで、入手できなかったのが残念だったけれど。

さて、前回取り上げたジャ・ジャンクー監督の「新世紀ロマンティクス」の終盤は、2020年のコロナ禍を背景としたドラマだったが、そのコロナ禍そのものに焦点を当てたのが、同じく中国のロウ・イエ監督の「未完成の映画」だ。

ロウ・イエ監督は、ジャ・ジャンクーらとともに中国の第6世代の監督と呼ばれている。「ふたりの人魚」「スプリング・フィーバー」「天安門、恋人たち」「二重生活」「ブラインド・マッサージ」「シャドウプレイ」「サタデー・フィクション」などの作品で知られている。中国国内では検閲を通らず上映されない作品も多く、「天安門、恋人たち」では当局から5年間の表現活動禁止処分を下された過去を持つ。

「未完成の映画」は、フェイクドキュメンタリーの手法で撮られた映画だ。つまり、フィクションをドキュメンタリーのように見せかけて演出する表現手法である。

映画監督のシャオルイ(マオ・シャオルイ)は、10年前に未完成に終わったクィア映画を完成させるために、キャストとスタッフに再招集をかける。2020年1月、撮影が終盤にさしかかる中で、新種のウイルスに関する噂が広まり、関係者の間に不穏な空気が漂い始める。やがてホテルがロックダウンされ、スタッフたちは部屋に隔離されてしまう……。

序盤からドキュメンタリータッチの映像が続く。手持ちカメラの不安定な映像で被写体を追う。

映画の冒頭、10年前のPCを映画監督のシャオルイたちが起動させる。そこには10年前に資金難から撮影を中断し、完成できなかった映画の素材が入っていた。シャオルイはこの映画に思い入れがあり、どうしても完成させたいと思っていた。そのために、かつてのキャストとスタッフを呼び集める。

そこでは、編集用のモニターにロウ・イエ監督の過去作「スプリング・フィーバー」「二重生活」「シャドウプレイ」などの映像が映し出される。それらの作品の主人公を演じたのはジャン・チェン(チン・ハオ)だ。彼はスタジオを訪れてシャオルイと話し合う。

チン・ハオは実際に「スプリング・フィーバー」「二重生活」「シャドウプレイ」などに出演している俳優だ。それがジャン・チェンという俳優を演じる。また、映画監督のシャオルイを演じるマオ・シャオルイは映画監督で脚本家。ロウ・イエ自身が演じるアイデアもあったようだが、さすがにそれは難しいというので起用されたらしい。

その他の俳優イエ・シャオを演じるホアン・シュエンと、アジェンを演じるリャン・ミンは、いずれも「スプリング・フィーバー」の撮影に参加したものの最終的にカットされてしまった。そして、劇中の撮影監督、サウンドデザイナー、編集、ヘアメイク担当、DIT(デジタル・イメージング・テクニシャン)スーパーバイザーは、本物の映画スタッフがそのまま演じている。

というわけで、フィクションとノンフィクション、ドキュメンタリーと劇映画が融合し、虚実が交錯する形でドラマが進むのである。

「どうしても映画の続きを撮りたい」というシャオルイに対して、ジャン・チェンは「それは自己満足でしかない」と断じる。その映画はクィア映画で、当時も今も中国では検閲を通らず上映できない。若かった昔ならいざ知らず、今は自分にも妻子がいてそんな映画に出演している余裕はないというのだ。

それでも撮影は始まる。ジャン・チェンも出演する。このあたりまでは関係者に余裕が感じられる。言葉は厳しくても、顔は穏やかに笑っていたりする。ところが、あともう少しで撮影が終わるという時にコロナの噂が聞こえてくる。メイク担当が武漢出身ということで、急遽帰るように言われる。これでは撮影はできない。シャオルイ監督は撮影を中断するかどうかの決断を迫られる。

そんな中、ついにスタッフの中から感染者が出る。一部のスタッフと俳優はホテルが封鎖される前に脱出するが、他のスタッフとジャン・チェンはホテルの部屋に隔離される。

そこからは隔離されたジャン・チェンを追うドラマが展開する。彼には生まれたばかりの赤ん坊がいた。そのこともあって、北京にいる妻のサン・チー(チー・シー)としきりにスマホのビデオ通話で会話する。そのスマホ映像が分割画面で映し出される。それを通して彼の苛立ちや不安、恐怖が伝わってくる。

帰ろうと思っていたところに、いきなりホテルから出るなと言われて、ジャン・チェンは激高する。その挙句、顔に怪我をしてしまう。

スマホの向こうでは妻が心配げな表情を見せる。彼女も赤ん坊を抱えて不安なのだ。「早く帰ってきて」と言うが、ホテルはロックダウン状態で外に出られない。

そうするうちに、ホテルでは防護服姿の人が目立つようになる。スタッフに感染者が出てからは、彼と接触していたことから自分も感染するのではないかと不安になる。やがてそれが恐怖へと変わる。

ジャン・チェンがホテルの部屋から窓の外を映した映像なども挟まれる。また、実際のドキュメンタリー映像も随所に織り込まれる。それを通して事態がどんどん緊迫していくことがわかる。

その一方で、ジャン・チェンが他の部屋にいるスタッフとビデオ会議をする映像も登場する。彼らが春節を前にカウントダウンで新年を祝い、はしゃぎまくる姿には、ぎりぎりの状況下でもたくましく生きる人々の姿が見てとれる。しかし、それも部屋の中だけのこと。部屋の外に出ればたちまち制止されてしまう。

そんな困難な状況を経て、ようやくコロナが収束に向かう。武漢の長いロックダウンが解除される際に、ずっと外出を禁じられていた少女が映したというスマホで撮った街の映像が胸を打つ。

ちなみにその後、市民と警察が激しく衝突するドキュメンタリー映像も登場する。最初から検閲を通らないと思ったからこそ、こうした映像が使われたのかもしれない。

映画の終幕近く。コロナ禍が終わってスタッフが再集結する。コロナ禍で彼らが映画を作ることには、どんな意味があったのか。それを問う場面だ。

つい数年前、世界中がパンデミックの恐怖に襲われた。日本でも社会が大きく変わるほどの影響があった。実のところうちの母親が亡くなったのも、コロナによるものではないかという疑いが拭いきれない。

しかし、時間が経つにつれてその恐怖も薄れつつある。今もコロナ感染はあるが話題にも上らない。マスク姿の人も少なくなった(私は極力マスクをしているが)。今では何事もなかったかのようだ。そんな中、この映画を観る意味は大きいと思う。それほどコロナ禍をリアルに映し出した映画である。

本作は、2024年の第77回カンヌ国際映画祭で特別招待作品としてドキュメンタリー部門で上映され、中国圏最大の映画賞である第61回台北金馬奨で劇映画部門の最優秀作品賞・監督賞を受賞した。

◆「未完成の映画」(一部未完成的電影/AN UNFINISHED FILM)
(2024年 シンガポール・ドイツ)(上映時間1時間47分)
監督:ロウ・イエ
出演:チン・ハオ、チー・シー、マオ・シャオルイ、ホアン・シュエン、リャン・ミン、チャン・ソンウェン、ヅォン・ジェン、フー・カン、ティエン・ジアミン
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