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「新世紀ロマンティクス」

「新世紀ロマンティクス」
2025年5月9日(金)Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下にて。午後1時10分より鑑賞(7F/D-11)

~時代の空気がリアルに映し出されたジャ・ジャンクー監督の集大成的作品

 

ジャ・ジャンクー監督の「一瞬の夢」(1997年)を観た時はぶっ飛んだ。かつてのATG映画を彷彿させるインディーズの香り漂う作品で、「中国にこういう映画があるのか」と驚いたものだった。

それ以来、「プラットフォーム」「青の稲妻」「世界」「長江哀歌」「四川のうた」「罪の手ざわり」「山河ノスタルジア」「帰れない二人」と、ほとんどの作品を鑑賞してきた。彼の作品の多くは、中国の変わりゆく社会とそれに翻弄される人々を描いたものだ。今回の「新世紀ロマンス」もその延長線上にある。

男女の別れと再会を描いたドラマだ。2001年、中国北部の街、山西省・大同(ダートン)。キャンペーンガールやモデルをしているチャオ(チャオ・タオ)と、マネージャーで恋人のビン(リー・チュウビン)。だが、ビンは「よその土地で一旗揚げたい。落ち着いたら連絡する」と言い残して大同を去っていく。2006年、チャオは連絡のないビンを探すために奉節(フォンジエ)を訪れる。2020年、時は流れ2人はまた大同にたどり着く……。

実に22年間にわたる男女のドラマだ。そのうち2001年、2006年、2020年の3つの時代に焦点を当てて描いている。主演のチャオ・タオは、ジャ監督の妻で一貫して彼の作品に出演している。その24歳、29歳、そして45歳の姿が映し出されるわけだ。彼女の恋人役のリー・チュウビンも過去作に何度も出ており、彼の若い姿も見ることができる。

特筆すべきことに、この映画は4つの素材からできている。まず1つ目の素材は、「青の稲妻」「長江哀歌」など過去のジャ監督の作品の映像。2つ目は、それらの映画のために撮影されたものの、使用されなかった未使用映像。3つ目は、ジャ監督が長年にわたって撮りだめてきたドキュメンタリー映像。そして4つ目は、この作品のために新たに撮影された映像である。それらを使って過去の作品の焼き直しではなく、全く新たなドラマを生み出している。

といっても、ドラマ自体はジャ監督作品の中でも薄味だ。よくある男女の恋愛ドラマといってもいいだろう。ただし、陳腐な恋愛ドラマに堕しない工夫がある。ドラマの背景になる中国社会の時代の息吹が、生き生きと描かれているのである。

映画の序盤は明るい場面が続く。2001年、WTO加盟や北京オリンピック開催が決定するなど、中国本土は明るい未来を予測し、大いに盛り上がっていた。人々も楽しく歌い踊る。しかし、まもなく大同の炭鉱産業は廃れ失職者であふれかえるようになる。かつて賑わいを見せていた労働者向けの娯楽施設も閉鎖されてしまう。そんな中、ビンが一旗揚げようと大同を出る。

それから5年後の2006年。チャオは行方知れずのビンを探すため、約1,500kmを15時間かけて奉節を訪れる。おりしも奉節は、三峡ダム建設により水底に沈む運命にあった。「長江哀歌」でも描かれた雄大な長江の風景と移転を迫られざわつく人々。そんな中、苦労してようやく探し当てたビンには違う生活があり、チャオは別れを告げる。

終盤は2022年。コロナ禍の中、ビンはマカオに隣接する経済特区、珠海(チューハイ)を訪れる。そこで仕事を見つけたいと考えていた。だが、かつての知り合いを訪ねるとSNSインフルエンサーのマネージメント業をしていた。普通のおじさんが彼らの手で人気者になってしまう。ビンにはついていけない世界だった。仕方なく彼は大同を訪れ、そこでチャオと偶然再会する。

この最後のパートでは、チャオが勤務先のスーパーに導入されたロボットと対話するシーンがある。何となくユーモラスで、同時に社会の激変ぶりを示すエピソードだ。

こうして時代の空気をドキュメンタリータッチで描き出すことで、社会の変化をリアルに映し出し、薄味なドラマに濃い味付けをしている。ドキュメンタリータッチはジャ監督の過去作の特徴でもあり、本作でもそれがいかんなく発揮されている。特に三峡ダム建設に係わる映像は圧巻だ。俳優以外の市井の人々の姿からも、様々なことが伝わってくる。

そして、何よりも主演のチャオ・タオの存在感の大きさよ。24歳、29歳、45歳と確実に年を取ってはいるが、凛とした佇まいは不変。思わず「カッコいい!」と叫びたくなってしまった。しかも、本作で彼女のセリフはほとんどない。携帯メールの文章や心の内を文字で表示する程度だ。それでもわずかな表情の変化やしぐさで、感情を繊細に表現している。下手なセリフを言うよりも、説得力を持って主人公を演じている。

セリフは少ないものの、音楽は全編に流れる。冒頭は、中国のパンクバンド「BRAINFAILURE」の「野火」。それ以降も、流行歌、ダンスミュージック、ポップス、ロックと幅広い音楽がかかる。それが時代の空気を映す役割を果たしている。ちなみに、ダンスの場面で「ジンギスカン」が流れるのには笑った。ジャ監督の過去作「プラットフォーム」でもダンスシーンで流れていたし、確かディアオ・イーナン監督の「鵞鳥湖の夜」でも流れていたと思う。よっぽど中国では「ジンギスカン」が流行ったのかな。

それにしても中国社会の激変ぶりはすごい。その中で、2001年に未来への希望を抱いていた若いチャオとビンは、様々な経験を経て人生に疲れ2022年に偶然再会する。

ラストシーンで、チャオはランナーたちに交じって走り出す。呆然と見つめるビンを置き去りにして。その時のチャオの力強い表情。そしてエンディングでの力強い掛け声。それは主人公チャオのこれからの生き方を示唆するのと同時に、ジャ監督が今後も前を向いて映画を撮り続けていく覚悟を示しているように思えた。

フィクションとノンフィクションというジャンル分けを超越したスケールの大きな叙事詩だ。過去の作品の映像を使用しているというだけでなく、様々な点でジャ監督の集大成とも呼べる作品だと感じた。過去に多くのジャ監督の作品を観てきた自分にとっても、感慨深い作品だった。

◆「新世紀ロマンティクス」(風流一代/CAUGHT BY THE TIDES)
(2024年 中国)(上映時間1時間51分)
監督:ジャ・ジャンクー
出演:チャオ・タオ、リー・チュウビン、パン・ジアンリン、ラン・チョウ、チョウ・ヨウ、レン・クー、マオ・タオ
*Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほかにて公開中
ホームぺージ https://www.bitters.co.jp/romantics/
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