「片思い世界」
2025年4月25日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後2時50分より鑑賞(シアター2/D-4)
~切ないラブストーリーかと思いきや××映画。主役3人の競演が魅力

何やらヒットしているらしい映画「片思い世界」。「花束みたいな恋をした」の土井裕泰監督と脚本家の坂元裕二による作品。しかもタイトルに「片思い」と入っている。これは間違いなく切ない恋愛映画に違いない。
そう思ったのだが違った。恋愛映画というよりも××映画なのだ。
××としたのは、この映画がネタバレ厳禁のためだ。いや、それに触れなければレビューなんか書けないじゃん。どうせ映画の早いうちにわかっちゃう設定だし。
というわけで、映画評論家や映画ライターでもない私は、ネタバレ厳禁を無視します。以下の文章は完全にネタバレしているので、ご注意ください。知りたくない方は読まないでください。
相楽美咲(広瀬すず)、片石優花(杉咲花)、阿澄さくら(清原果耶)の3人は、古い一軒家で一緒に暮らしていた。家族でも同級生でもない彼女たちだったが、お互いのことを思いあいながら、楽しく気ままな暮らしを続けて、もう12年になる。強い絆で結ばれた3人は、それぞれに届きそうで届かない“片思い”を抱えていた……。
映画の序盤は、主人公らしき3人の女の子の幼少期。彼女たちが入っている合唱団の発表会を前に、美咲は物語を書いていた。それに同じ合唱団の典真がピアノで曲をつけてくれることになっていた。だが、美咲が物語を書き終えると、そこに典真の姿はなかった。
まもなく合唱団のメンバーは仲良く写真撮影をする。そこにも典真はいない。直後にドアが開く。美咲は典真が来たと思った。しかし……。
続いて場面は、郊外の古い一軒家に変わる。そこでは20歳になった美咲、優花、さくらが一緒に暮らしていた。さくらの誕生日で美咲と優花はサプライズを仕掛ける。それに対して面倒くさそうな態度を取るさくら。しかし、実は彼女もサプライズを仕掛けていた。
というわけで、3人のキラキラした共同生活が描かれる。美咲は会社に勤め、優花は大学で勉強し、さくらは水族館で働いていた。帰ってきたら3人で一緒に晩ごはんを食べ、リビングでおしゃべりをして、同じ寝室で眠る。朝になったら一緒に歯磨きをする。3人は本当に仲良しなのだ。
だが、どこかおかしい。3人が話しかけても、話しかけられた人は無反応。誰かとぶつかっても、ぶつかった相手は何事もなかったように去っていく。はては美咲とさくらがコンサートに出かけて、ピアノ演奏中のステージに上がって大騒ぎしても、誰も何も反応しないのだ。
あれ? もしかして、3人は幽霊なの?
その通りなのだ。3人は合唱団に入っていた12年前に、通り魔の男の凶行に遭い死んでしまったのである。
早いうちにネタバレしてしまうこの設定。しかし、それにしては物理的におかしなところがたくさんある。そもそも幽霊は死んだ年から成長するのか? 色々と疑問は尽きない。何だかモヤモヤする。
まあ、それでも幽霊の女の子のキラキラ生活は、それなりに良く描けている。幽霊という設定を無視すれば、年頃の女性の喜怒哀楽が瑞々しく描かれた青春映画として十分に成立するだろう。
ドラマの中盤、なぜか素粒子の話になる。スーパーカミオカンデ(加速器)の話も出てくる。そして、3人はこの世に戻れるかも、と思うようになる。100時間後に、ある灯台に行きなさい、と指示される。うーむ、このあたりもモヤモヤ感が募るなぁ。
それを前に、3人はそれぞれ会いたい人に会う。優花は母(西田尚美)に会うが、彼女はすでに再婚して子供もいた。一方、さくらは自分たちを殺した犯人が出所をしているのを知り、彼に会いに行く。
そんな中、美咲は大人になった典真(横浜流星)に心を痛めていた。彼はピアノの才能があったにもかかわらず、自分が音楽に誘ったせいで美咲が犠牲になったことに責任を感じて、ピアノをやめてしまったのだ。
ここでは生きている者たちと、すでに死んだ3人の思いがすれ違うさまが描かれる。だが、話はすぐに加害者と被害者の問題に転化していく。犯人を許せないけれど許すべきなのかと悩みながら生きる遺族。それに対して、犯人はあまり反省しておらず遺族の言葉も響かない。そんな両者が対峙する。
母役の西田尚美の迫真の演技と、犯人役の伊島空のリアルな演技でなかなかの見せ場だが、ありがちといえばありがち。どこかで見たような展開なのは否定しようもない。
そんなこんながあって、はたして3人はこの世に戻れるのか?
終盤はなかなかの盛り上がりだ。美咲と典真が、かつて美咲が描いた物語を読み合う。この世とあの世を超えて。
そして、その後には合唱コンクールの感動の場面。坂元が歌詞を書き下ろしたという「声は風」がフルコーラスで流れ、そこに過去の様々なシーンがかぶさる。見事な場面で涙を誘う。さすが土井・坂元コンビだけのことはある。
観終わってもモヤモヤ感は消えなかった。色々なものを詰め込んでいるため、突っ込み不足なのも確か。
しかし、広瀬すず、杉咲花、清原果耶の主役級3人の演技は見逃せない。それぞれにキャラも立っていて、これ以上ないハーモニーを奏でている。細かいことは一切無視して、彼女たちの演技を堪能する映画といえるだろう。
◆「片思い世界」
(2025年 日本)(上映時間2時間6分)
監督:土井裕泰
出演:広瀬すず、杉咲花、清原果耶、横浜流星、小野花梨、伊島空、moonriders、田口トモロヲ、西田尚美
*TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
ホームぺージ https://kataomoisekai.jp/
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