「ドライブ・イン・マンハッタン」
2025年2月18日(火)イオンシネマ板橋にて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン1/F-7)
~タクシーの中だけで展開する運転手と乗客の会話、そこに恋愛の真実がある!?

映画の多くはドラマの中で舞台が変わる。だが、時にはずっと同じ舞台のワンシチュエーションのドラマもある。「ドライブ・イン・マンハッタン」は、真夜中のタクシー内を舞台に運転手と乗客の2人だけで繰り広げる会話劇だ。「ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US」の脚本を手がけたクリスティ・ホールが、もともとは舞台劇を想定して脚本を書いたという。その出来が良かったことから映画化されることになり、ホール自らが監督を務めた。
夜のニューヨーク。ジョン・F・ケネディ空港に1人の女性(ダコタ・ジョンソン)が降り立つ。彼女はタクシーに乗り込み、自宅のあるマンハッタンへと向かう。運転するのはベテラン運転手(ショーン・ペン)。シニカルなジョークを繰り出す運転手に誘われて、女性も会話に応じる。運転手は二度結婚に失敗するなど様々な経験をしていた。一方、女性はプログラマーとしてキャリアを築いてきた。会話を交わすうちに、女性は恋人が既婚者であることを運転手に見抜かれてしまう……。
この映画の上映時間は100分。ジョン・F・ケネディ空港からマンハッタンまでどのぐらいかかるのか知らないが、さすがにタクシーを走らせるだけでは間が持たないと思ったのか、途中けっこうな時間、事故渋滞で車が止まる。もちろんそこでも2人は会話を交わす。
最初のうち、運転手はシニカルなジョークを連発し、女性も「なかなか面白い人だ」という感じで会話をする。そこでは、女性がプログラマーであることや故郷に帰っていたことなどが語られる。
その間、女性は会話の合間にスマホをいじる。相手は恋人らしい。「今どこにいるの?」「早く会いたい」などというメッセージが届き、それがスクリーン上にも映し出される。
そのうちに運転手は、女性のプライベートにもヅケヅケと踏み込んでくるようになる。あれ? コイツ、けっこう嫌な奴かも。
女性はスマホをいじるうちに表情を曇らせる。スマホの向こうの相手は、卑猥なメッセージを送ってくる。女性は適当にあしらいながら苦い表情をする。どうやら2人の仲は順調ではないらしい。
そのあたりで運転手は、女性が不倫をしていることを言い当てる。意外に鋭い奴なのだ。そして、持論を展開して女性にあれこれと助言する。「女の浮気は愛されたいから」「男は新しいおもちゃが欲しいだけ。愛はいらない」「不倫相手に“愛してる”なんて言うなよ」。そして、「別れたほうがいい。そのうち捨てられる」などとアドバイスするのだ。
何だ? こいつ。人のプライベートまで踏み込んで、しかも彼が話すことといったら偏見に満ちているではないか。まったく最低な男だな。その証拠に、女性も怒りだしたではないか。
だが、よく考えれば彼には彼なりの人生経験があって、それを基に話しているわけだし、全否定することもできないのは事実。うーむ、恋愛の話は難しい。
一度は運転手の言葉に反発した女性だが、やがて再び語りだす。どうやら、彼女の胸の内には誰かに語りたくてしょうがない思いが溜まっていたようだ。不倫相手のことや複雑な家庭環境などを運転手に打ち明ける。運転手の側も、自らの過去について語る。
どちらの話が面白いかということで、2対2のイーブンになったところで、女性はそれまで誰にも語れなかった重大な秘密を語りだす。運転手もその告白を真剣になって聞く。もしかしたら、こいつ、けっこういい奴かも。
そして、タクシーは女性の家に到着する。温かな態度を示す運転手。途中で思った「最低な男」という見方は、ここに至って完全に覆される。言葉や態度は粗野で偏見に満ちているが、心根は不器用だが優しい人なのだ。
こうして100分の会話劇は終了する。特に映画的な妙味があるわけではないが、恋愛を巡る様々な側面がそこには込められている。そして、最初の印象とはずいぶん違う2人がラストシーンで映し出される。これだけで十分に面白い会話劇だと言えるだろう。会話劇の面白さ、深さが伝わる映画である。
しかし、まあ、これを成立させているのは演じているのがショーン・ペンとダコタ・ジョンソンだからだろう。やや冗長に感じさせるところもないではないが、それを2人の演技が救っている。
ペンはまさにハマリ役で、言葉や表情の向こうに人生の深みを感じさせる演技だった。さすがである。一方のダコタ・ジョンソンはこれまであまり演技を見たことがなかったのだが、本作の演技は素晴らしい。運転手の言葉によって様々に変化する女性の感情を的確に表現していた。ちなみにこの人、ドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの娘らしい。
◆「ドライブ・イン・マンハッタン」(DADDIO)
(2023年 アメリカ)(上映時間1時間40分)
監督・脚本:クリスティ・ホール
出演:ダコタ・ジョンソン、ショーン・ペン
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