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さらば、将棋倶楽部24

◆将棋とわたし

 私の将棋に対する感情はかなり複雑だ。

 私が将棋を始めたのは小学校の頃。親から習い、小学校の将棋クラブでよく遊んでいた。中学校からは部活に所属し、高校の時には団体戦で全国大会に出たこともある。ただ、当時は将棋の団体戦を組める学校は少なく、私の地域では3回ぐらい勝てばもう全国だった。全国ではギリギリ予選を抜けて、ベスト16で負けた。

 大学でも将棋をやるつもりはなかったのだが、部室の居心地が良くて、結局将棋部に入った。私が所属していた将棋部は全国大会常連のところだった。大学の将棋部は元奨励会員も多く、レベルが急に跳ね上がる。それまでの自分の腕前では太刀打ちできなくなり、詰将棋やら棋譜並べやら、いわゆる「将棋の勉強」にも結構真面目に取り組むようになった。

 部には気の合う友達が多く、ほろ酔いで十秒将棋を指し、麻雀やボードゲームカタン、Tichet to Rideなど)を囲むのはとても楽しい時間だった。漫画もたくさん置いてあって、『むこうぶち』『三月のライオン』『ブラックジャック』あたりも読み漁った。しだいに学生将棋の大会の運営の仕事を任されるようになり、かなりちゃんとこなしていた。コロナ前だったので部室も24時間出入りできた。総じて、いい時間を過ごさせてもらったと思う。

 (私と将棋の思い出については、この記事にも書いたことがある→将棋連盟の「女流棋士のプロ編入制度」について思うこと - 達而録

◆将棋を真面目にやるということ

 ただ、将棋に真剣に向き合うこと自体は、今振り返ると、私にとっては結構しんどかったかもしれない。

 よく知られているように、将棋というゲームは、相手に隠された情報が無く、運の要素が全くない。お互いに完全に公開された情報の中で、先の読み合いで勝つゲームだ。

 たとえば、麻雀・バックギャモン大貧民といったゲームには、ランダムの要素がある。スポーツだって、運の要素が皆無ということはなかなかないと思う。もちろん実力で差が出ないわけでないが、これらの競技は「運で負けた」ということがあり得るだろう。

 しかし将棋の場合は、「運で負ける」ことは、まずない。負けるのは、自分が悪い手を選んだからでしかなく、良い手を選べないのは自分の実力の問題である。つまり、「負け」が全部「自分の責任」になるのが、将棋というゲームの特性と言える。

 もちろん、勝ち負けにこだわらず、将棋というゲームの面白さを楽しむことはいくらでも可能なはずである。ただ私には難しかった。勝てないのは普通につらかったし、大事なところで負けるとかなり落ち込んだ。将棋対戦サイトでの自分のレーティングの上り下がりで一喜一憂し、こつこつ上げては一気に溶かす、というのを繰り返した。

 一般論として、将棋で一定以上の強さになるには、幼少期の積み重ねが重要である。高校までちゃんと将棋をしていたわけではない自分には、大学での棋力の伸びに限界があった。それでも普通の大学の部活なら全然楽しめるぐらいだったと思うけど、たまたま歴戦の猛者が揃ったところに入ってしまい(なにせ将棋ばかりやって八回生まで留年した人が数人いたようなところだ)、ずっと場違いな感覚があった。

 ただ、将棋自体が嫌いなわけでもなく、そういう猛者たちと囲まれて将棋に触れあえる魅力は抗いがたいものがあった。部活仲間のことも好きだった。私の将棋に対する感情は、ただただ「複雑」としか言いようがない。

将棋倶楽部24の思い出

 さて、中学生か高校生の頃から、将棋倶楽部24というオンラインの将棋対戦サイトで、ネット上の見知らぬ誰かと将棋をやっていた。対戦の内容(「棋譜」という)はデータベースに記録され、後から検索することができる。

 ここにはレーティングというシステムがあり、勝てば勝つほど点数が上がる。始めたての時はR800ぐらいで、最強クラスはR2800以上。私は、高校の頃はR1500(たぶん初段手前)ぐらいで、大学に入って3年経って、最高でR2300ぐらい(たぶん五段)になった。その後は将棋から離れるにつれて徐々に下降し、このブログの記事を調べてみると、去年の7月でR2150(たぶん四段)ぐらいだったらしい(日記(2025.7.21-2025.7.31) - 達而録)。

 将棋倶楽部24は、すごくシンプルな機能とUIで、それがいい意味でずっと変わらなかった。余計な機能は無く、対戦する分には最後まで無料だった。レトロな電子音もずっと一緒だった。これは簡単そうでかなり難しいことだと思う。(どんどん複雑な仕組みになり、課金要素も増え、余計な機能が増え、訳が分からないことになっているXと比べてみて欲しい。)

 チャットで感想戦ができ、たまに対戦相手とおしゃべりすることもあった。顔の見えない、どこかの誰かと将棋をやって、会話をしていると思うと、不思議な気持ちになったものだった。

 

 年が明けてから知ったのだが、将棋倶楽部24は、去年の年末でサービスを終了した。1998年からの歴史に幕が下りたことになる。

 改めて、27年ってすごい歴史だ。

 27年続いた、特定のゲームのサーバーって他にあるんだろうか。

 先に知っていれば、データベースで昔の棋譜をダウンロードして、自分の足跡を確かめられたかもしれないので、それだけがちょっと悔いが残る。別に残したって何にもならないのだが、自分の一部が消えてしまったような感覚になる。去年の10~12月頃はタイミング悪く将棋に触れていなかったので、まったく知らなかったのだ。

 もうレーティングを上げることがないと思うと悲しいが、下げなくてもいいと思うと、ほっとする気持ちもある。

 調べてみると、長年遊んでいた高段の方が、24の思い出を記した記事が出てきた。なかなか良い。→https://note.com/tiny_squirrel/n/neb36583bdb05

 あらためて、ありがとう。将棋倶楽部24。合わせて、対戦を受けて下さったみなさまにも、感謝申し上げます。

◆将棋ウォーズを久々にやった

 年が明けてからこの記事を書いていたのだが、なんとなく将棋をしたい気持ちになって、久々に将棋アプリ「将棋ウォーズ」に課金(600円)してみた。久々と言っても、ここ二年で何度か動かしているアカウントをまた動かしているだけだ。

 このアプリは大学の頃から始まったもので、大学時代にはよくやっていたが、私の場合、24よりもはるかにトキシックになりやすく、過集中してしまいやすいので、非常によくなかった。24がYoutubeの普通の動画だとすると、将棋ウォーズはショート動画だ。回転は速いのだが、その分熱中してしまいやすく、止め時を失ってしまう。

 私は、自分のメンタルの操縦が比較的上手い方だと思うのだが、ウォーズをやっているときだけは心ここに在らずになる。今思うと、やはり大学時代の追い込みが自分に悪影響を及ぼしているような気がする。人生において、将棋は勝つためにやるものではなくて、その時間を「楽しむ」ためにあるものだ、ということを改めて意識したいものだ。

 そんなことを考えながらも、結局いつも通りのめり込んでしまったのだが、意外とあっさり、五段に昇段できた。

 ↓昇段の瞬間。

 記憶が確かなら、大学でやってた頃は五段に上がれなかったはずだ。もちろん昔より強くなっているわけがないので、レートがインフレして上がりやすくなっているのか、向き合い方が変わったからなのか、課金しているとはいえ一日にやる局数が多すぎないからなのか、理由はよく分からないが、かなり嬉しかった。これで当分は将棋をやめられそうだ。

 知り合いで、友達対局したいという人は歓迎するので、ご連絡ください。通話しながら対戦しましょう。

◆こぼれ話

 以上で書きたかったことは終わりなのだが、将棋に関することはこの機会に書いておかないと当分書くことが無さそうなので、他のこぼれ話も載せておく。

 一つ目は、高校生の時に、Twitterの将棋界隈の人と繋がって、将棋短歌を書いて、同人誌(将棋文芸誌)に投稿したことがあるという話。電子版だけではなくて、紙になったものにも載せてもらった。その時に短歌を教えてもらった方は、そのあと不幸な事故で亡くなられてしまった。いまもその人の歌集は大切に持っている。

 そういえば、この記事(中村一義は「理想」を手放さない - 達而録)で書いた、中村一義のCDを貸してくれた人も、Twitterの将棋界隈で知り合った方だ。確か当時は名古屋に住んでいらっしゃった。元気にしているんだろうか。

 二つ目は、同じ頃に、自分の将棋の棋譜を載せてブログを書いていたこと。将棋のためというより、ブログに棋譜を載せて駒を動かせるのが面白過ぎたので遊んでいたのだ。当時は「フラ盤」というFlashプレーヤーを使っていたが、今となってはFlash自体過去の遺物になってしまったので隔世の感がある。他にも、自分の対戦記を載せている個人ホームページがたくさんあったのだが、Infoseekやジオシティーズで作られているものが多かったので大半は消えてしまったと思う。

 もし、2010~2013年頃のTwitterの将棋界隈にいた人がこれを読んでいたら、私に心当たりがある方もいらっしゃるかもしれませんね。またどこかで会えたら嬉しいですね。

(棋客)




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