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【書籍】実務の落とし穴がわかる!IT・AI法務のゴールデンルール30

 実務の落とし穴がわかる! IT・AI法務のゴールデンルール30(松尾剛行著、学陽書房を読みました。本書は、タイトルだけ読むとIT・AI関連の法務実務書のように思えますが、実際のところは”情報法務”の概観を示した本と位置付けるのが良いと思います。

 

1.本書の概要

 本書はIT・AI領域に造詣が深いと考えられる松尾剛行弁護士により書かれた書籍となっており、タイトルにもあるように、昨今のIT技術の高度化によりどのようなビジネスにおいても切っても切り離せないものとなった”情報技術”に特化した形での法務実務の全体像を簡潔に記した書籍になっていると思います。

 冒頭にも書きましたが、本書のタイトルだけ見ると、本書はIT・AI領域の個々の法務実務をサッと初学者にもわかりやすく学ぶための入門書のようにも思えますが、実際のところは、本書の冒頭にもあるように、著者がこれまで扱ってきた実務をベースにした”情報法務”の実務入門書として位置付けるのが適切だと思います。このような位置づけというのは実際に通読してみることでよくわかるところですので、私個人としては、本書は個別に気になる点を読むタイプの書籍ではなく、通読してこそ意味があるタイプの書籍だと思います。

 

2.本書の特筆すべき点

 私個人としては、本書の特筆すべき点としては2点をあげることができると思います。

 

 まず、特筆すべき1点目としては、”情報法務”という新たな領域の全体像を示した点にあると思います。

 これまでもIT・AI領域の法務実務書籍として有益な書籍は多数ありましたが、それらはいずれにおいても、契約審査領域に特化したもの、システム開発領域に特化したもの、AI領域に特化したもの、プライバシー・セキュリティ領域に特化したものといった形で、この領域を一気通貫に整理した書籍というものはなかったように思います。 

 また、法務実務という切り口から離れると、情報法という切り口での書籍はありましたが、実務の観点での情報法務という観点ではなかったというのは、これまた共通するところです。

 これらの状況下で、本書は、個人情報保護・オンライン取引・データと知財電気通信事業法プラットフォーマー・AIというそれぞれの軸で、実務に即したポイントを整理しているのは、非常にビジネス実態に即したものになっていると思います。また、こういった各論だけでなく、総論部分で情報法務における重要ポイントをまとめているのは、著者ならではの観点であり、非常に示唆に富むものになっています。これまで、著者は様々な分野で書籍を刊行してきた認識ですが、それらが一本の線につながる感覚がわかりました。

 

 次に、特筆すべき2点目としては、取り上げられている個々のケースとその解説が、なかなか他の書籍にはない非常に実務的な観点での記載になっている点があげられると思います。

 個々のケース自体はタイトルだけ見ると、まぁ実務を扱っていれば遭遇しそうなものであるし、他の書籍と違いも特にないと思いそうなものになっています。しかしながら、個々の解説部分を見ると、著者の実務ノウハウがよく言語化されており、示唆に富む記述が散見されます。例えば、パッケージ開発のケースに関しては、パッケージ開発とFit&Gap分析に始まり、Gapが大きすぎる場合のリスクを述べ、Gapを埋めようとすることで発生するリスク、さらにはそれに伴う経営の意思決定に関して論じることで、著者が法務の役割として重要視するであろう”全体最適”の議論にまで持ち込んでいる点は、非常に読みごたえがあります。というか、初学者ではこの記載は間違いなく難しすぎるとも思える記載になっています。

 

 上記のように、本書の内容は類書にはない著者のノウハウが言語化されているところであり、私個人としては純粋な初学者よりは、数年程度の経験を積んだ法務の方が読んだ方が得るものはあると思います。

 

3.本書からさらにもう一歩

 本書自体は、上記のように”情報法務”というものの全体像を示す書籍として非常に示唆に富みます。とはいえ、本書で書かれていることの多くは、既存の議論の組み合わせを変更したものに、著者の法務観を加えたものになっていると思います。

 おそらく実務家としては、この先において、この著者が整理する”情報法務”と言われる領域を実際のビジネスに適用し、仕組化していくことが必要だとは思います。具体的には、Saas領域のビジネスであれば、システム開発のプロジェクトマネジメントモデルや営業プロセスのマネジメントモデルであるザ・モデルといったものを参考にしながら動いているビジネスプロセスへの実装、製造業のビジネスであれば、モノ売りからコト売りへといわれる中でのECM・SCM領域でのビジネスプロセスへの実装など、個々のビジネス・組織ごとに現れる”情報法務”の具体的実装を行っていくことが必要かと思います。

 こういった具体的な実装の経験をつみ、それを自分の中で新たに言語化し、軸を作っていくということが、おそらく著者が本書でも扱っている”法務におけるキャリア論”にもつながってくるのだろうと思います。

 

 いずれにせよ、本書はこれまでになかった整理がなされている書籍であり、また、著者がやりたいことというのが非常によくわかる書籍にもなっていると思います。個人的にはおすすめの書籍です。




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