ビジネス法務2023年5月号の特集2は「法務を変える」費用対効果の意識と実践というものでした。参考になった部分の感想を書いてみます。
攻めの法務や守りの法務、経営法務人材等といった様々な法務業務に関する言葉が昨今出現していますが、法務担当部署自体はいわゆるバックオフィスに位置づけられることから、「費用」面については意識した上での業務遂行が必要になってくるように思います。本特集はそのような「費用対効果」の観点で法務業務を論じたものになりますが、この観点では、契約書作成・レビューの効率化:「着地点」を見据えた対応(板橋健・神田智之・外山信之助、本書71頁‐73頁)という記事が個人的には気になりました。
本記事は、三井物産における「着地点」を見据えた対応、具体的には、「中立的な」契約書雛形の作成による契約交渉コスト等の効率化について述べられていました。例えば、不可抗力、契約解除、損害賠償、秘密保持といった主要条項については売主・買主双方に適用されるようにするなどの法務部門が介在する契約審査であれば、かなり高い割合で修正提案がなされるであろう事項について、予め規定しておくといったもののようです。
実務上、反社条項などが片務的にしか規定されていないこともままにあり、双方規定に直すための修正を行い、先方に提案するという工程だけであっても、中々面倒であり、こういった中立的な条項が業務効率化をもたらすというのは理解できるところではあります。また、論点をあらかじめ絞り込むことによる効率化というのもなるほどなぁと思うところではあります。
ただ、デメリットとして、中立的であるがゆえに、例外的な案件の際にきっちりと中立的雛形とは別の条項を提案する必要がある場面をうまくコントロールできるかは検討する必要があるように思います。同社ではEラーニング等でビジネスサイドの担当者の自律的対応を促すとありますが、それがうまく機能するかは組織に所属するビジネスサイドのレベルや契約の頻度等次第な気もします。自社に合わせた運用が必要に感じます。
本特集のテーマで行くと、個人的には、契約審査において何をどこまで修正するのかについては、いろいろと議論されていっても良いと感じます。よく言われるところで言うと、てにをはをどこまで修正するのか、重要とは言い難い箇所について「何か気持ち悪い」という理由で修正することにどこまで意味があるのかなど、「効率性」という切り口でもう少し論じられても良いと感じます。契約審査といえば「リスクマネジメント」という切り口では様々な書籍でも語られておりますが、「効率性」という切り口だとWordのテクニックとか条項のストックとかAIレビューの議論に活きがちで、どこまで何を直すのかも真剣に考えるべきテーマだと思います。
個人的には、こういった「コスト」面の意識が進んでいくことは、ビジネスサイドへ意識が向いていく端緒になっていくと感じます。
中々勉強になりました。
以上