オーディオ業界では淘汰の流れが続いているようです。今度は 2025年末を目処にオーディオ機器ブランドの Marantz(マランツ)が、DENON、Bowers & Wilkins などと共に米国の「Sound United」から「Harman International Industries」へ売却されることになってしまいました。
Harman も元は米国の会社でしたが、現在は韓国 Samsung 傘下となっています。これにより Harman は、Marantz などの他に JBL、AKG、Arcam、Polk Audio など多数のオーディオブランドを擁することになりますが、Harman 自体の業績はあまり宜しくないようなので、今後ブランドの淘汰が進むことになったりしないか心配ではあります。
私がこれまで使っていた AVアンプは Marantz の「NR 1608」という、AVアンプとしては非常に薄型の機種。とかく大きく重く、電力消費が大きくなりがちな AVアンプの中では異色の存在といってもいい立ち位置の製品です。かつては ONKYO や Pioneer、Yamaha などからも薄型の AVアンプが発売されていましたが、今ではほとんど選択枝が無くなってしまいました。
1度電源が燃えて修理に出した ほかは特に問題無く使えていましたが、「NR 1608」を購入したのは 2018年の 2月。既に 7年半が経過しています。そんな折に冒頭のニュースを目にしたわけで、今後の Marantz がどうなるか分からないな・・・というわけで手に入るうちに買い換えてしまうことにしました。
選んだのは同社の「CINEMA 70s」。最新の Audio & Visual フォーマットに対応しつつ豊富な入出力を持ち、尚且つ薄くコンパクトであることが決め手です(まあ他に選択肢も無かったのですけどね)。
■ MARANTZ「CINEMA 70s」
「CINEMA」シリーズには、「CINEMA 30」「CINEMA 40」「CINEMA 50」という上位機が存在しますが、薄型タイプなのはこの「CINEMA 70s」のみ。最も安価なモデルではありますが、「NR1608」の系譜を引き継ぐモデルなので設置スペースの問題も含め入れ替えはスムーズ(結線は大変ですが・・・)。




かなりの大きさの箱で届きました。電源ケーブルと音場測定用マイク以外は一纏めにして収納されています。中には FM 室内アンテナ、AM ループアンテナ、リモコン + 電池、無線 LAN / Bluetooth 用アンテナ、組み立て式マイクスタンド、ケーブル判別用ラベルシール、書類一式が入っていました。
付属のスタートガイドは以下から PDF でも入手可能です。
ただこちらはセットアップを始めるまでの導入部分くらいまでしか書かれていないので、WEB マニュアルもダウンロードしておいた方がよいと思います。
今回購入した「CINEMA 70s」の主な仕様は以下の通り。
| サラウンドチャンネル | 7.2 ch(サブウーハー出力はプリアウトのみ) |
| 定格出力 | 50Wx7(8 Ω、20 Hz ~ 20 kHz) |
| 適合インピーダンス | 4 ~ 16 Ω |
| HDMI 端子 | 入力x6(8K 対応入力x3)、出力x1(4K 120p、8K 60p 対応) |
| 音声入力端子 | アナログx3、Phonox1、光デジタルx1、同軸デジタルx1 |
| 音声出力端子 | 7.2 ch プリアウトx1、ゾーンプリアウトx1、ヘッドホンx1 |
| チューナー受信周波数帯域 | FM:76.0 ~ 95.0 MHz(ワイド FM 対応)、AM:522 ~ 1629 kHz |
| Bluetooth | Ver.4.2 Class 1(通信距離約 30m)、対応コーデック:SBC(20 Hz ~ 20 kHz) |
| 無線 LAN | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2.4 GHz / 5 GHz) |
| 消費電力 | 250 W(通常スタンバイ時 0.2 W) |
| 最大外形寸法 | 442x109x384 mm(アンテナ収納時) |
| 重量 | 8.7 kg |
| 備考 | Apple AirPlay 2、Amazon Alexa、Spotify Connect、Qobuz Connect 対応 |
映像出力は 8K 60p、4K 120p、HDR10+、HDCP 2.3、eARC に対応。音声出力も Dolby Atmos、DTS:X、MPEG-4 AAC を初め主要なフォーマットを網羅しているので、PlayStation 5 や BDレコーダー 、 Apple TV などと接続して迫力の映像と音声を楽しむことが可能です。
これまで使っていた「NR1608」との比較では、
- 8K 60p、4K 120p 対応(NR1608 は 4K 60p まで)
- DTS Virtual:X、Dolby Atmos Height Virtualizer 対応
- HDR 10+、Dynamic HDR 対応
- HDCP 2.3 対応(NR1608 は HDCP 2.2)
- eARC 対応
- AirPlay 2 対応
- Bluetooth Ver.4.2(NR1608 は Ver.3.0)
- Wi-Fi 5 対応(NR1608 は Wi-Fi 4)
辺りが相違点となるでしょうか。もちろん各所ブラッシュアップは図られているようですが、基本的な性能にさほどの差は無いようです。また、細かな所では FMチューナー用のアンテナ接続端子が「NR1608」の「PAL型」コネクタから日本では一般的な「F型」接栓に変更されています。いちいち変換コネクタを買って来たりしなくてよくなったのは歓迎すべき点ですね。



シンメトリックなデザインは引き継がれつつも、先代の NR1711 と比べて随分洗練されてスタイリッシュになりました。発売開始は 2022年12月。以前は毎年ニューモデルが出ていましたが、現行モデルになってから間もなく 3年を迎えます。とは言え、ここ最近 AV 業界ではあまり劇的な技術的アップデートもありませんからね・・・。価格も多少はこなれて来たのかな?



コンパクトな筐体にぎっしりと入出力インターフェースが詰め込まれています。スピーカーターミナルはバナナプラグ対応。スピーカー出力に加えて全チャンネル分のプリアウトも備えているので、外部アンプを用いて更なる高音質化を追求することも可能。

「CINEMA 70s」ではリモコンもえらくスタイリッシュになりました。しかもこのリモコン・・・サイドのボタンを押すと光るんです。私は映画を観る時は部屋を暗くして観ることが多いのですが、これは結構助かります。ちと照明ボタンの戻りが悪いのが難点ですが・・・。
AVアンプは特に配線が複雑になるので一旦設置してしまうとまず中を開けることは無いと思うので、先にちょっと内部を見ておきます(普通は開けて中見たりせんかw)。









オーディオ DSP は Cirrus Logic の「CS49844A-CQZ」。DVD や BD のオーディオをサポートしており、こちらは NR1608 の頃から変わっていないようですね。「R5F564MJCDFC」と刻印があるのは Renesas Electronics の 32bit マイコン。イーサーネットと USB 機能を担っているらしい。「Pango PGC1KG 6CFBG256」というチップは電源管理などに使われているっぽい?「nuvoton MN864788」はリモートコントロール関係を制御しているらしい。元は Panasonic のチップでしたが、半導体事業ごと台湾の Nuvoton に売却されたそうです。また、写真を撮り忘れましたが DAC には Texas Instruments の「PCM5102A」が 4基使われているようです。

取り急ぎこれまで使っていた BDレコーダーや CDプレイヤー、PlayStation 5、PC などの機器を接続してみましたが、もう見ての通りの大スパゲッティ状態。接続するケーブルが多いから仕方ありませんが、ケーブルにラベルを着けておかないと何が何だかさっぱりです。それにしても AVアンプの入れ替えなんて夏場にやるもんじゃないですね。汗だくになってしまった(苦笑)
■ セットアップとカスタマイズ
私の場合は AVアンプの入れ替えなのでこれまで使っていた機器を全て接続し直してからセットアップを始めましたが、最低限「CINEMA 70s」とディスプレイ(または TV)を HDMIケーブルで繋ぎ、電源ケーブルを接続して電源を入れればセットアップガイダンス画面が表示されます。






基本的にはガイダンスに沿ってセットアップを進めていけばよいのですが、設定は後からいくらでも変更出来るのでどんどんスキップしていってしまってもいいかも知れません。特に「CINEMA 70s」では、付属の ” Audyssey ” 測定用のマイクを接続することで音場空間の自動設定が行えるのですが、測定位置を変えながら何度も測定しなけらばならず、かなり時間が掛かるので後回しにした方がいいんじゃないかと思います。測定中は外部の環境音が入らないよう気を遣わないといけませんしね。






一通り設定が終わった後はリモコンの SET UP ボタンから設定メニューに入ることが出来ます。入力端子の割り当てだけはしっかりやっておかないと映像や音声がうまく出てくれません。予めどの端子にどのデバイスを接続したかメモしておいた方がよいでしょう。測定用マイクを使った ” Audyssey ” のセットアップもこちらで後から行うことが可能です。「M-DAX」は、圧縮されたオーディオで省かれてしまった信号を補完してくれる機能です。使用出来るオーディオソースでは有効にしておくと結構効果が体感出来るのでお勧めです。
■ 「Marantz AVR Remote」と「HEOS(ヒオス)」
「CINEMA 70s」では、Marantz 製 AVアンプ共通のアプリ「Marantz AVR Remote」を使ってスマホやタブレットから操作することが可能です。
アプリはもちろん無料。2014年以降の Marantz 製 AVアンプに対応しているようです。私は NR1608 の頃から使っていましたが、機器を「CINEMA 70s」に入れ替えただけで特に何も設定する事無くアプリが使用可能になっていました。


スピーカーの出力状況や、設定されているサラウンドモードなどが一目で分かるほか、ボリュームの操作やサラウンドモードの変更などが行えます。また、このアプリから「CINEMA 70s」の設定を変えることも可能(ちょっと操作し難いですが)。


アプリを弄っていて「ウェブコントロール」なる項目を見つけました。こちらだとディスプレイ(TV)を見ながら操作しなくていいので楽ですね。追々設定を詰めていこう。
また、「HEOS(ヒオス)」という、Marantz、DENON 製品共通のネットワークオーディオアプリも利用することが出来ます(こちらも無料)。
「CINEMA 70s」では世界中のラジオ放送を聴くことの出来る「TuneIn Radio」というインターネットラジオを利用出来るのですが、選局するにはこちらのアプリがほぼ必須です。また、Spotify Connect を使って Spotify の音源を直接「CINEMA 70s」で再生したり、NAS に保存した楽曲ファイルからプレイリストを作って再生したりすることも可能です。


ただこの「HEOS」のアプリに関しては以前の方が使い勝手が良かったような気がします。何というか、UI がかなり使いにくくなってしまった・・・。まあ「Qobuz Connect」という新しいハイレゾ配信サービスにも対応したそうなので、そのうち試してみたいと思います。
■ 音楽観賞から映画鑑賞までなんでも卒なくこなしてくれる 1台
「NR1608」から「CINEMA 70s」に入れ替えた結果、以下のような 7.1ch 構成になりました。
| AVアンプ | Marantz CINEMA 70s |
| フロントスピーカー | DALI ZENSOR 3x2 |
| センタースピーカー | DALI ZENSOR VOKALx1 |
| サラウンドスピーカー | ONKYO D-309Mx2 |
| サラウンドバックスピーカー | ONKYO D-309Mx2 |
| サブウーハー | FOSTEX PM-SUB8x1 |
これらのほかに、CDプレイヤーの ONKYO C-733、BDレコーダーの SONY BDZ-FBT2200、PlayStation 5、Apple TV 4K、PC などを接続しています。Amazon Prime Video は Apple TV 4K で視聴。
「NR1608」の頃から既に 7.1ch のサラウンドシステムを組んでいたので「CINEMA 70s」に入れ替えたからと言って劇的な感動があるわけではありませんが、ヘリコプターは頭上を飛び越えて行きますし、コンサートライブ映像も会場の雰囲気を存分に味わうことが出来ます。

Dolby Atmos や DTS:X などの最新オーディオフォーマットに対応し、とにかく豊富な入出力を持ちつつも非常にコンパクトであることが魅力の「CINEMA 70s」。古い机を使って DIY した AVラックもどき(笑)にも難なく収まりました。AVアンプですが、もちろん 2ch サウンドも極上です。
使い始めてみてまず驚いたのが発熱の少なさでした。消費電力は NR1608 と同じ 250W なのですが、ある程度のボリュームで4K 映画などを視聴しても天板がほとんど熱を持ちません。製品保証は標準で 5年間が付いています。家電量販店などで独自の有料延長保証サービスを付けているところがありますが、恐らく自然故障までの対応なので付ける意味は無いですね。
最近はワイヤレスイヤホン・ヘッドホンの音質向上が凄まじく、わざわざ消費電力が多く場所を取るホームシアターシステムを組む方は減っているのかも知れませんが、やはり聞き疲れすること無く大迫力のサウンドに身を包むことの出来る環境はいいものです(近所迷惑にならない範囲で・・・ではありますが)。そうは言ってもやっぱりスペースが・・・という方なら サウンドバー を導入するのも良さそうです。先日ソニーストアで試聴させて頂いたのですが、なかなか驚きのサウンド体験でした。