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経験の価値は感性によって変わる【ジョージ・オーウェルのパリ・ロンドン放浪記を読んだ】

ジョージ・オーウェルのパリ・ロンドン放浪記

最近読んで面白かった本にジョージ・オーウェルの「パリ・ロンドン放浪記」という本がある。

 

 

ジョージ・オーウェルはこのブログでも取り上げたことがあるが、「1984年」という近未来ディストピア小説で有名な小説家である。

 

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世間的にはSF小説家として有名な彼だが、「1984年」を書いたのは彼が46歳で結核で亡くなる3年前のことであり、それまでは売れないルポルタージュ作家であった。「パリ・ロンドン放浪記」は生活費に困った彼がパリとロンドンでホームレスをしながら書いた作品であり、当時のパリとロンドンの貧困層の様子や、その中でもホームレス仲間たちと懸命に生活を立て直そうとする様子が語られている。書かれているのは1920年頃のパリやロンドンの様子なのだが、100年経ってもあまり変わってないなと思うことが多く、かつ現在貧乏にフランスで暮らしている自分と重なる部分もありなんだか元気をもらえるのである。

 

特に面白いのが、彼がようやくパリで皿洗いの仕事を見つけ、レストランの人間関係や組織について述べるところである。

 

次に皿洗いだが、これもまたかわった様相をしている。彼らの仕事は何ら将来のみこみの立つ性質のものでない。ひどく体力が消耗する一方、技能とか興味といったものはつめの跡ほどもない。(中略)

とはいうものの、皿洗いは皿洗い。また誇りらしきものも持っている。下種下郎の誇りというもの、どんなでけえ仕事にも、ねをあげねえという男のもつ誇りなのである。その水準で行って、牛のように仕事をつづけていく力、ほぼそういったところが到達できるただ一つのとりえといえる。《気がきくやつ》というのが、どの皿洗いからいっても、となえてもらいたい呼名なのだ。フランス語でいう《デブルイヤール》とは、できそうもないことをやれといわれても、なんとか、やってのけるという男のことだ。

ジョージ・オーウェル. パリ・ロンドンどん底生活 (p.101). Kindle 版. 

 

パリのレストランの食べ物について話すところも超面白い。

 

たべものの質のよさが、時間を守り、うまそうに見せるために犠牲にされるので、きたならしさはホテルやレストランでは本来つきものだ。ホテルの使用人は料理を用意するのに忙しすぎて、それが食べられるものであるのを忘れてしまう。たべものは使用人には単に《注文品》にすぎないが、ガンで死にかけている人間が医者には単なる《症例》にすぎないのに似ている。たとえば、客がトースト一つを注文するとする。誰かが、地下深いところにある穴蔵で、仕事におしまくられながらトーストを作らねばならない。仕事の手を休めて《このトーストは人が食べるものだ、食べられるようにしなくては――》なんて考えることが、一体どうすれば出来るというのか? トーストのみてくれをよくしなくては、三分間で作らなくては、この二項目以外は彼の知ったことではない。大きな汗の粒が二、三滴、額からトーストの上に落ちることもある。

ジョージ・オーウェル. パリ・ロンドンどん底生活 (pp.104-105). Kindle 版. 

 

ジョージ・オーウェルから見た昔のパリやロンドンの様子が全編に渡って詳細に語られておりとても面白かった。特に彼がホームレス生活で出会う人々が個性に溢れていて、人情深い一面もあり、彼らが貧しくも楽しく人生を謳歌している姿に元気を貰えるのである。一方で、確かにジョージ・オーウェルのパリでのどん底生活は面白いのだが、彼はそこまで特異な経験をしているのではなく似たような暮らしをしている人はたくさんいると思う。しかし、そんな凡庸な経験をジョージ・オーウェルの視点で見るからこそ面白くなっていると思う。その感性と観察力が凄いのである。

 

感性と経験

よく、他の人ができないような経験をしたほうが良いというような事が言われるが、どんなに珍しい経験をしていても、経験した人の感性が貧しければその経験の価値は下がってしまうし、逆にどんなにありふれた経験であろうが、感性があれば、その中から多種多様な意味や価値を見いだせることもあるんだと感じる。

 

ただ、ジョージ・オーウェルの鋭い感性の裏には、パリで貧困生活をする前にイギリスの植民地であったインドで警察官として働き、植民地支配の虚しさ、差別意識を強烈に感じるなど多様な経験があったようである。よって経験によって感性が磨かれることがあれば、逆に感性によって経験の価値が上がることもあり、それらは双方的なものであると思う。ブログを書いたり日記を書くのも感性を磨くトレーニングのひとつと言えるかもしれない。

 

何が言いたかったのかよくわからなくなってきたが、とにかくジョージ・オーウェルのルポタージュはとてもおもしろいので是非読んでみてほしい。以前ブログで書いた、「あなたと原爆」もとても面白いのでオススメです。

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