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一番精神的にキツかった授業で学んだフランス式チームワークの在り方

フランスでの修士1年前期が(ほぼ)終わり、冬休みに突入している。正直全体的にかなりキツかった。課題量は多いし、フランス語が喋れないので話に入れないし・・・。片道2時間かけて大学に行っていることも相まって期末テスト時期はかなり精神的にやられていた。今日はその中でも一番キツかった授業について書こうと思う。

 

その授業はインタラクションについての授業だった。先生が色んな国のインタラクティブなアートやゲームを紹介し、学期末にはチームで開発した一本のインタラクティブな作品を発表する。内容もとても面白そうだったし、フランス語がめちゃ弱い私にとってはペーパーテストよりも何かしらの作品で評価されたほうが良いと考え選択した。実際、教授はめちゃくちゃ熱血漢で、世界中の色んなインタラクティブ作品を紹介してくれて授業自体はとても興味深いものだった。

ドキドキ文芸部というアドベンチャーゲームについて熱弁する先生、私は手前のPCで翻訳しながら聞いている



 

しかし、最初の授業から前途多難であった。

 

教授「君はこの授業を受けないほうがいいよ」

まず、最初の授業の日、教室に行くといきなり険しい顔の教授が私のところに来て、「なぜ午前中来なかったんだ?」と問い詰めてきた。フランスではほぼ全てのクラスがC(クラス)とTD1(実習)に分かれており毎週その両方が開講されるのだが、授業の仕組みについて理解できていなかった私は授業の最初の日はC(クラス)だけだと思い、いきなり3時間のTD1をブッチしてしまっていたのである。理由を話そうにもつたないフランス語では全く通じない。モゴモゴしていると「この授業では抽象的な芸術などの話題を取り扱うので君のフランス語レベルでは厳しいと思う。別のクラスに変えるべきだ」と言われてしまった。しかし、履修登録は既に終わっており、別のクラスを探すのは困難だろうし、正直どの授業でもどうせ難しいと思っていたので「AIを使ってこちらで翻訳をするので理解に問題はないと思う。授業にとても興味があるのでなんとか受けさせてほしい」と伝えたところ、とりあえずこの授業が終わるまでは居なさいと言われた。いきなり大ピンチである。私がブッチした3時間で、既にグループは決まっており、なんとかどこかのグループに入れてもらえなければ授業を受けられないだろう。完全に絶望していると隣に座っていた女の子が話しかけてくれた(こういう時フランス人は非常に親切である)。私はその女の子、セレナになんとかチームに入れてくれないかと頼み込んだ。セレナは正直迷惑そうにしていたが、授業の終わりに先生のところに一緒に行って、私をチームに入れるよう交渉してくれ、私はなんとか授業を受ける権利を得ることができたのであった。

 

イデアが採用されない

私のチームは4人で、同じデザインコースのM2のミアとセレナ、5年間のエンジニアコースに在籍している男の子ティボと私という構成であった。既に開発する作品のテーマは3人の間で決まっており、「モノへの愛着をテーマにしたエモーショナルな体験」というものらしかった。正直全く理解できていなかったが四の五の言っている場合ではない。ただ、ミアとセレナの間ではほぼ形が固まっているらしかった。3人のディスカッションの間に入っていくのはほぼ無理であった。複数人で喋るディスカッションになると、私のリアルタイム翻訳AIは全く役に立たない。最初は英語で喋ってくれるのだが、込み入った話になると爆速のフランス語になるので私にはほぼ理解できない(それでも英語で時々喋ってくれるだけとても優しいのだが)。また、これは文化的な違いなのか、「エモーショナル」という事についてあまり考えたことがなかったので、アイデアを出してもほぼ採用されることはなかった。こうして私のフラストレーションは溜まっていった。

 

準備しても評価されない

ほぼゲームのアイデアで貢献できないとなると、実装の部分で貢献するしかない。なんとか存在感を見せようと思った私は、授業の度に、ゲームを実装するプラットフォームについて調べていったり、簡単なプロトタイプを作成して見せるようにした。しかし、これらに対する反応もあまり良くなかった。これで心が折れてしまった私は完全に授業を受けて、ディスカッション中も話を聞くだけの人間になってしまった。

 

超短期間の開発

やる気を無くしているのはチームメイトのティボも同じようであった。特にセレナがかなり強権的で何かアイデアを言っても、彼女のお眼鏡に叶わなければ潰されてしまうのである。ティボと私はゲームのコンセプト部分に関与することをほぼ諦め、実装を担当することにした。しかし、デザイナーであるミアとセレナからゲーム素材が上がってこないとプログラミングを始めることができなかったので、結局実装は最後の3週間に集中し、その結果めちゃくちゃ無茶をすることになった。フレームワークJavascriptとHTML,CSSを選択したのだが、Vueの経験はあったものの、シンプルなJavascriptで開発した経験はなく、ゲーム開発も初めてであり、めちゃ大変だった。また、ミアとセレナからどんどんゲーム仕様が五月雨式に追加され、かつ、彼女らのイラストや音声などの素材の完成を待たなければならなかったため、開発は遅れに遅れ、ゲームのエンディングを実装し始めたのが提出期限の2時間前になるほどだった。

 

このように非常にフラストレーションが溜まって、全体としてマジできつかったのだが、その反面、私たちのゲームは非常に高く評価されたのであった。正直今までのチーム開発経験の中で一番、時間あたりの完成度としては高いものになったと思う。何故なのか。

 

 

フェーズ毎に進んでいくチーム開発

このフランスでの初めてのチーム開発で一番強く感じたのは、開発の工程が完全にフェーズに分かれており、かつ民主的ということである。今回のゲーム開発で言うのであれば、アイデア出し→ゲームの仕様決め→素材の作成→ゲームの実装という工程が週単位で完全に分離していた。そして、あるフェーズでは別のフェーズの事については全く考えない。ウォーターフォール型の開発であった。私のプラットフォームの選定やプロトタイプが全くチームメンバーに刺さらなかったのは、アイデア出しの段階で仕様ぎめの話をしていたからのようだった。前もって何かを行うということが基本的にないのである。その代わり、各フェーズではチームメンバーが行った各仕事に対して民主的に承認しながらタスクをなるべくキッチリこなしていく。全員が一つのフェーズ(ゲームの仕様ぎめ等)に集中し、納得したうえで次に行くので、後戻りも少なくなる。日本でよく見る、誰か一人が猛烈にタスクをこなしていって、それを周りがサポートし承認するというような形とは異なるものである。

 

何で貢献するか?

各チームメンバーが行った仕事についての承認はチームメンバー全体で行うが、タスクの割り振りはあまり厳密に決めないのも個人的には新鮮だった。各々が得意で自分ができると思うことを勝手にやっていく感じである。今回は完全にミアとセレナがゲームのコンセプト決め、素材の作成を主導していたので、私とティボは実装に集中することにした。いい感じに分業ができていたとは思う。

 

自分ができなくても他人の仕事に口は出す

分業ができている場合、お互いの行った仕事に対してあまり口出しをしないのが日本流な気がするが、お互いの仕事に納得できないポイントがある場合はガンガン批判するのがフランス式である。実際、私も行った実装に関してデザイナーであるミアやセレナからガンガン直してほしいポイントが飛んできた。正直、こちらは無理なスケジュールで開発しているので、「じゃあお前がやってみろや!!!」と思ってしまったのが、実際批判されているポイントは直したほうがゲームのクオリティは上がるので、渋々直すしかなかった。自分ができない、理解が浅い部分にもガンガン口を突っ込む文化は無責任っぽく思うがアウトプットのクオリティを上げるのに必要かもしれないと思った。

 

「察してもらう」は甘え

自分のアイデアがあまり採用されないのが辛かったということを最終レポートで、「チームワークの文化が違い、かなり苦労した」という旨で書こうとしたところ、セレナにめちゃくちゃ謝られた。私のアイデアを却下しているつもりはなかったらしい。なんというか私もチームの輪に入りづらかったことや、自分が空回っており辛かったことをもっと皆に相談すべきだったと感じた。文化が違う海外で生活する事において、「察してもらおう」とすることは間違いである。基本的になにか思うことがあったら積極的に伝えないと分かってもらえない。日本はハイコンテキストな文化なので察してもらえるが、フランスでは全く通用しないということが身にしみた。実装面においても、ある機能を実装するのに、これだけ時間がかかるだろうという見積もりをデザイナーに伝えていなかった。大体わかってもらえるだろうと思っていたのである。これが非常に大きな間違いであった。

 

とにかく自分の貢献を口にする

評価されることにおいて、チームでの自分の貢献をアピールすることも非常に重要なスキルであると感じた。口下手であると認められない。そういう意味で、フランス語を上達させる必要性を強く感じた。

 

すげえ大変だったけど学びにはなった

フランスで初めて受ける授業にしては非常に難易度が高いものを選んでしまったと思うが、無事なんとかなって良かった。

それぞれのチームが開発したゲームの発表会での集合写真。右上で一人だけ死んだ顔してるのが私。

開発したゲームは以下のリンクから遊べます。フランス語ですがよかったら是非。

hypocrate-code.github.io




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