ニュース

ホンダ NSX-GT、鈴鹿で驚速ポールポジション 伊沢/大津選手、HRD Sakura LPL 佐伯CEが速さについて語る

中嶋レーシングに鈴鹿1000km以来の優勝があるのか?

2020年8月22日~23日 開催

SUPER GT第3戦 鈴鹿でポールポジションを獲得した64号車 Modulo NSX-GT。Q1をトップ通過した大津弘樹選手のアタック

 SUPER GT第3戦 鈴鹿が8月22日~23日の2日間にわたって、鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)で開催されている。22日の午後には予選が行なわれ、GT500は64号車 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組)がポールポジションを獲得した。

 しかも、64号車 Modulo NSX-GTは22日に行なわれた全公式セッション(公式練習、予選1回目、予選2回目)でトップという完璧なモノで、2位に0.4秒以上の大きな差をつけてのポールポジションとなった。チームのエースドライバーである伊沢拓也選手はポールポジションインタビューの中で「チームがいい車を用意してくれ、ダンロップもそれに合うタイヤを作ってきてくれたからだ。このクルマに乗れば誰でもトップになれるといってもいいクルマに仕上がっている」と述べ、NSX-GTとダンロップタイヤの組み合わせが高いパフォーマンスを発揮している理由だと説明した。

 そうした64号車 Modulo NSX-GTの2人のドライバーのポールポジション記者会見と、ホンダ NSX-GTの開発をリードするHRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏の話をお届けする。

64号車 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/大津弘樹組)ポールポジション記者会見

──それではそれぞれ今日担当のパートを振り返ってほしい。

大津弘樹選手:今は嬉しい気持ちで一杯。今年GT500デビュー年だったので、1年目から速さを見せないといけないと思っていた。そうした中で担当したパートでトップタイムをマークできて、ポールも獲得できたので嬉しい。

 今日は公式練習から伊沢選手のタイムが速くて、クルマもタイムもいい感触だったし、自分が担当のQ1でも自分の力を出し切ろうと思っていた。自分はSRS-Fの出身で、鈴鹿に関しては相当走り込んでいて、その経験とQ1に行く前に伊沢選手からもアドバイスを受けて、きっちりと走ることができた。

大津弘樹選手

伊沢拓也選手:今シーズンは序盤2戦苦労していたが、シーズン開幕前の鈴鹿のタイヤテストでも鈴鹿はいけると思っていた。想像以上に調子がよくて、大津選手がQ1をトップで通過してくれた。そうしたことに刺激を受けて、自分も頑張らないとと思って走り最終的にはQ2を担当してのポールとしては初めてのポールを獲得できた。

 今回ポールが取れたのは、チームがいいクルマを用意してくれ、ダンロップがそれに合うタイヤを作ってきてくれたからだ。このクルマに乗れば誰だってポールが取れるというほどのクルマだ。今年は移籍したこともあり、今年に賭ける想いというか、ここで自分の力を証明したいと思っていたので、(ポール取れたことを)嬉しく思っている。

伊沢拓也選手

──タイヤが今回のクルマと状況に合っていたということだが、具体的にどこが違うのか?

伊沢拓也選手:伝え方はとても難しいのだが、例えば富士のサーキットでは100Rのような高速コーナーは僕達は速いのだが、逆に低速コーナーは難しいという場面があった。それに対して今回鈴鹿を走ってみると、いいところしかないぐらいで、ダンロップの持っている特性がマッチしていると言える。GT500では3メーカーそれぞれの特性もあるし、タイヤメーカーの特性もあるが、両方を合わせていい方向に出ているということだ。

 明日のレース(日曜日の決勝レース)に関してだが、ピックアップなどが出る可能性はゼロではないが、幸いなことに一番先頭からスタートするので、そのまま行けばピックアップの心配もないし、自分のペースで走ることができることは意味があると思う。

──大津選手は今年GT500に上がってきて3戦目でポールポジションという結果を出したが、このことに関しての自身のキャリアへの影響は?

大津弘樹選手:GT300から上がってきて、このチームに入ってやらせていただいているが、他のチームに比べるとダンロップタイヤは1台しかいないという厳しい戦いの中でも、何か光るモノを見せないといけないと考えていた。その意味でも自分自身にとっても自信になる結果だ。これまでタイムが出せないというレースが続いていたが、速さを予選で見せることができたので、次は大事な明日の決勝で強さを見せていきたい。

──明日のレースへの意気込みを。

大津弘樹選手:明日はコンディションがどうなるのか分からないし、レースペースも未知数だが、貪欲に前を見て表彰台の真ん中を目指して走りたい。

伊沢拓也選手:クルマは非常に速いので、このスピードを明日は見せたい。まだ明日どちらがスタートを担当するか決まっていないが、自分の希望としてはスタートを担当し、20秒ぐらいぶっちぎって大津選手に渡したい。

Q2をアタックする伊沢拓也選手。2位を0.4秒以上突き放すタイムでポールポジションを獲得した

HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏 オンライン会見

 ポールポジション会見後、本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏によるオンライン囲み会見が行なわれたので、その模様もあわせてお伝えする。

佐伯昌浩氏:今日1日フリーから予選にかけて大きな問題も出ない1日だった。その中でナカジマレーシングのドライバー、ダンロップタイヤこの3つがうまくクルマをまとめ上げてくれて2戦続けてNSX-GTがポールポジションを獲得することができた。今年のクルマでこの路面温度、気温の中タイヤへの入力が高い鈴鹿を走るのは初めてで、富士からの流れからすると8号車、100号車が上位に入ると思っていたが、当然タイヤメーカーも技術競争しているので、この路面にぴったりはまったダンロップタイヤがポールポジションを取った。

 Q2に上位8台のうち4台がNSX-GTで、明日天候がどうなるか分からないが、確実にポイントを取っていくレースにできればと思っている。

──前回のレース後には鈴鹿に向けてあまり自信がないようなお話しだったが……。

佐伯昌浩氏:不安要素があったからだ。特にこのクルマで鈴鹿を走行したのは、ブリヂストンを履いた車両では17号車だけ。それにタイヤメーカー違いの64号車(ダンロップ)と16号車(横浜ゴム)の3台しか走っていなかった(鈴鹿のテストはタイヤメーカーのテストだったため)。もちろんブリヂストンを履く100号車と8号車ともデータは共有していたが、鈴鹿を走っていないそれらの2台がうまくまとめきれないのではないかということを懸念していた。

──一番ポイントを獲得している17号車がブリヂストンを履いた車両の中では前に来た。

佐伯昌浩氏:SUPER GTも第3戦を迎えて、ランキング上位の車両はウェイトで重くなってきて予選が苦しくなってくる。そうした中で着実にポイントを獲っていくというのがSUPER GTの戦い方の王道となる。ウェイトで言うと、40kg前後を搭載しているホンダの17号車、レクサスの14号車、38号車あたりがQ3に残っており、それらの中でどの順位でポイントを取れるかが勝負になる。その意味で17号車はなんとか食らいついているが、100号車や8号車にももっと上に来てほしかったというのがホンダとしての望みだった。

──そうした中で64号車がポールを取れた理由は?

佐伯昌浩氏:道具(車両)は同じモノを使っており、セットアップの違いや、路面温度と気温にキッチリ合わせ込んできたダンロップタイヤ、それが合わさった結果ではないか。何年か前に鈴鹿1000kmレースだった時代にもぶっちぎりで勝っているので、うまく条件が合わされば明日も大いにチャンスがあると考えている。

──今年からGT500にステップアップして初めてポールについた大津選手に関しての印象は?

佐伯昌浩氏:ひょうひょうとしているようで、肝は据わっているドライバーという印象。落ち着いて慌てずに常に冷静にドライビングしていると見えている。(同じ世代の牧野選手や福住選手と比較して)3人とも同じように見えている。外からの見え方は違うかもしれないが、3人とも常に冷静にドラビングに集中できているみている。

──伊沢選手がQ2を走って初めてポールを取ったというのは誰もが意外だったが、佐伯氏の感想はどうか?

佐伯昌浩氏:意外だったというのは同感ですが、感想としては嬉しいですね。というのは、このクルマを作るにあたり伊沢選手とは開発ドライバーとして一緒にやってきたからだ。そうした中でチームもブリヂストンのチームからダンロップのチームに移籍し、結果には反映されにくい所に行ったにもかかわらず、しっかりやってくれている。特にドラバビリティの部分は伊沢選手でテストしてきた部分もあり、開発側としても結果が出て嬉しいというのはある。

──明日のレースに向けて、これまでのNSX-GTでは夏場に苦しくなるという傾向があったと思うが……。

佐伯昌浩氏:今シーズンはシャシーは共通になっており、インタークーラーの位置もほとんど同じ場所ということで、車両の違いはそんなに大きな影響は及ぼさないのではないかと考えている。実際に富士では前に出て逃げればあのぐらいのマージンで優勝できたのだし。

──メーカーという枠で見ると、明日のレースにはどういう展開を期待しているか?

佐伯昌浩氏:ブリヂストンタイヤを履いたGRスープラ勢にはあまり大きなポイントを持って行かれるとシーズンが苦しくなる。そこでダンロップを履いたナカジマレーシングだったり、ヨコハマを履いた無限だったりに上位に来てもらうというのがホンダとしてはいいストーリーだし、その上でブリヂストンを履いたホンダ勢が上の方に来るというのが最良の展開だ。

GT500 予選結果
順位カーナンバーマシンドライバーQ1Q2タイヤWH
164Modulo NSX-GT伊沢拓也/大津弘樹1'46.1601'46.239DL
223MOTUL AUTECH GT-R松田次生/ロニー・クインタレッリ1'46.5001'46.699MI4
338ZENT GR Supra立川祐路/石浦宏明1'46.6311'46.769BS24
414WAKO'S 4CR GR Supra大嶋和也/坪井翔1'47.3831'46.899BS44
516Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT武藤英紀/笹原右京1'46.9921'47.147YH2
619WedsSport ADVAN GR Supra国本雄資/宮田莉朋1'46.9311'47.417YH4
717KEIHIN NSX-GT塚越広大/ベルトラン・バゲット1'46.7641'47.612BS40
8100RAYBRIG NSX-GT山本尚貴/牧野任祐1'47.4881'48.122BS22
939DENSO KOBELCO SARD GR Supraヘイキ・コバライネン/中山雄一1'47.577BS22
103CRAFTSPORTS MOTUL GT-R平手晃平/千代勝正1'47.631MI14
1137KeePer TOM'S GR Supra平川亮/ニック・キャシディ1'47.648BS58
1236au TOM'S GR Supra関口雄飛/サッシャ・フェネストラズ1'47.768BS60
1324リアライズコーポレーション ADVAN GT-R高星明誠/ヤン・マーデンボロー1'48.052YH2
148ARTA NSX-GT野尻智紀/福住仁嶺1'48.106BS8
1512カルソニック IMPUL GT-R佐々木大樹/平峰一貴1'48.668BS