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日産自動車、高齢ドライバーの安全走行のための「ハンドルぐるぐる体操」

新潟大学と共同創案した「リフレッシュ」「筋力アップ」「認知力アップ」の3つの運動

2020年3月19日 発表

 日産自動車は3月19日、高齢ドライバーの安全走行を促進・啓発するため、新潟大学と共に「ハンドルぐるぐる体操」を制作したと発表した。

 この体操は、主に高齢ドライバーが日々の生活の中で運動習慣をつけることで、筋力と認知力を高めて安全走行できるよう支援するためのもの。日産と新潟大学が共同でコンセプト検討を行ない、新潟大学が体操の内容を創作した。

 高齢者は運動不足になりがちなことから、徐々に足腰や腕の筋肉が劣り、筋力が低下した状態となり、加えて脳の指令通りにその筋肉を強く速く、あるいは巧みに動かせなくなるなど、運動機能が衰える。こうした運動機能の衰えは、クルマの運転機能にも、さまざまな悪影響を及ぼすことが新潟大学の研究から分かってきている。

 第1に、下半身(特に股関節周辺)の筋力が低下することで、楽な姿勢をとろうとするために運転姿勢が前かがみになり、メーターパネルを確認するたびに首の余分な上下運動が増え、ドアミラーを確認するたびに体の左右動作が必要になる。これが安全走行を阻害する原因の1つとなっている。また、脚を伸ばしたり曲げたりしてブレーキやアクセルを操作する動作がしにくくなると考えられるという。

 第2に、高齢者は肩から腕の筋力が低下することで、手を伸ばした姿勢でハンドル操作を続けることが辛くなり、特に長距離運転では背中の筋肉を中心に負担が掛かり、疲労が大きくなる。

 第3に、運動機能の低下は認知力低下を招き、前方車両の急ブレーキなどとっさの場面で、適切な運転行動ができなくなると推測される。さらにスピード感覚や視野機能が劣ってくると考えられており、運動機能の衰えと共に、クルマを安全に運転することが徐々に難しくなってくるという。

 そこでハンドルぐるぐる体操は、血流をよくする「リフレッシュ」、少しハードな「筋力アップ」、脳を刺激する「認知力アップ」の3つの要素があり、どれも覚えやすいように、3秒間4カウントで完結するリズミカルな動きの繰り返しで構成される。それぞれの体操の内容と目的・効果は以下のとおり。

項目内容目的・期待される効果
リフレッシュハンドルを持ち、肩を伸ばして引いて、片脚を前に出して体を前かがみにして伸ばし、最後に体をひねる運動。背筋と脚の筋肉を伸縮することで血流をよくして筋肉を活性化。運転前の体慣らしや、運転の合間の疲労軽減に効果が期待できる。
筋力アップハンドルを持ち、脚を前に伸ばしてバンザイしながら腰を下げて止める、脚を横に伸ばしてハンドル切りながら腰を下げて止めるという運動。ゆっくり大きな動きをすることで、肩と腰から太ももの筋肉を鍛える。運転姿勢が前かがみになるのを予防する。
認知力アップハンドルを回しながら首を左右に振り、脚を伸ばす運動。昨今介護や転倒予防に取り入れられている手法として、ゲーム性のあるミラーバージョン(鏡動き)もある。手と首と脚の別々の動きを組み合せることにより、脳に刺激を与え、認知力アップが期待できる。少し難しいかなと思うくらいがちょうどよい。
【企業】高齢ドライバーの安全走行のために!「ハンドルぐるぐる体操」(3分1秒)

 日産と新潟大学は、2018年に、まち・生活・交通を結び、安全な未来を目指す交通安全プロジェクト「トリトン・セーフティ・イニシアティブ」を立ち上げ、高齢者の運動・運転機能データの収集とその同期解析、高齢者への健康・交通安全教室、ドライバーに早めのライト点灯を呼び掛ける「おもいやりライト運動」などの活動を共同で行なっている。

 今回発表した「ハンドルぐるぐる体操」も「トリトン・セーフティ・イニシアティブ」における活動成果の1つで、新潟大学が取りまとめた高齢者約2000人の運動機能データに基づき、クルマの走行実験による知見も使いながら、高齢ドライバーが簡単で楽しく実践できる体操として制作したもの。

 またこの体操は、高齢ドライバーだけでなく、運動不足になりがちな方、誰にでも推奨できるもので、高齢者がその家族や地域住民と一緒に励ましあい、楽しめる運動としている。高齢者が周辺の人々や社会と一体となり、明るく健康な暮らし、好きなところに安全に移動できることを目的に制作された。

 日産は高齢ドライバーの関わる事故を減らすことを目的に、2019年より従業員の声から活動を始めた「助手席孝行」を呼び掛けていて、今後も先進安全技術の幅広い車種への搭載や、さらに安全な技術開発の推進を通じて、交通事故のないゼロ・フェイタリティ社会の実現を目指すとしている。