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ホンダ 八郷隆弘社長が「ホンダ アーキテクチャー」によるクルマ作りの進化を解説した事業方針説明会見

2025年までにグローバルモデルの派生数を3分の1に

2019年5月8日 開催

本田技研工業株式会社 代表取締役社長 八郷隆弘氏

 本田技研工業は5月8日、2018年度の第4四半期(2019年1月1日~3月31日)、ならびに2018年度通期(2018年4月1日~2019年3月31日)の決算を発表。東京 青山にある本社で決算説明会を開催した。

 今回の説明会は第1部「事業方針説明会」、第2部「決算説明会」の2部構成で実施され、第1部では本田技研工業 代表取締役社長 八郷隆弘氏、第2部では本田技研工業 代表取締役副社長 倉石誠司氏、本田技研工業 専務取締役 事業管理本部長 竹内弘平氏が登壇した。

事業方針説明も行なわれた2018年度決算説明会はホンダのYouTubeチャンネルで生中継され、アーカイブ動画も公開されている(1時間29分14秒)

 第1部で事業方針についての解説を行なった八郷社長は、自身が2015年6月に社長に就任して以来、「強い商品づくり」と「地域の協調と連携の強化」で“強いホンダ”を作り上げると発信してきたと語り、商品でホンダの強みである「グローバルモデル」と「地域専用モデル」をさらに強化するべく力を入れてきたことを紹介。「シビック」「アコード」「CR-V」「フィット(JAZZ)」「ヴェゼル(HR-V)」のグローバルモデル5機種がホンダ4輪車販売で6割を占めているほか、日本の軽自動車「Nシリーズ」や北米の「パイロット」、中国の「クライダー」といった地域専用モデルが、それぞれの地域における成長の源として重要な役割を果たしているとした。

 一方で、各地域の地域ニーズに対して必要以上の個別対応を行なってきた結果として、モデル数(車種)に加え、「派生」と呼ばれるグレード、メーカーオプションなどの組み合せが過剰となり、これによって開発、生産、販売などの効率が落ちてしまったと分析。今後は海外の6地域を市場ニーズや環境規制が近い地域同士でまとめ、商品ラインアップの見直しと共有化を進めていき、2025年までにグローバルモデルの派生数を現在の3分の1に削減。地域専用モデルは「より強いモデルに集約・削減」して効率を高めていくとの方針を示した。

グローバルモデルは「シビック」「アコード」「CR-V」「フィット(JAZZ)」「ヴェゼル(HR-V)」の5機種
地域専用モデルも各地域の成長の源として重要な役割を果たしている
必要以上に地域ニーズに対応した結果、「モデル数」と「派生」が過剰になっていると自己分析
4月からスタートした新しい4輪事業の運営体制により、北米、欧州、中国を第一事業部、アジア大洋州、南米、アフリカ中近東を第二事業部に担当分け。商品ラインアップの見直しや共有化を図っていく
2025年までにグローバルモデルの派生数を3分の1に削減し、地域専用モデルを集約・削減していく

2020年に市場投入するグローバルモデルから「ホンダ アーキテクチャー」採用

 クルマ作りでは「営業(Sales)」「生産(Engineering)」「開発(Development)」「購買(Buying)」の各部門を連携させ、企画、開発から生産までを革新させ、製品作りの効率化やスピードアップを図ってきたが、八郷社長は量産車の開発効率や部品共有を高める全社的な取り組みである「ホンダ アーキテクチャー」をすでに開発に導入していると紹介。“2020年に市場投入するグローバルモデル”がこのホンダ アーキテクチャーで開発した最初のモデルとなり、今後も適用モデルを順次拡大していくと八郷社長は明らかにした。

 また、八郷社長はグローバルモデルの派生数削減や地域専用モデルの集約・削減、ホンダ アーキテクチャーによる部品共有の拡大などにより、2025年までに量産車の開発工数を30%削減。工数を減らしたことで生まれるリソースを将来に向けた先進領域の研究・開発に利用して、「ホンダの将来を支える新技術」を生み出していくとした。

各部門が連携してクルマ作りに取り組み、効率化とスピードアップを図ってきた
基本骨格の共有化で開発や部品を効率化する「ホンダ アーキテクチャー」を導入
さまざまな取り組みで2025年までに量産車の開発工数を30%削減する
世界各国にある生産工場の能力適正化を進め、中国以外の工場で2022年までにフル稼働とする計画
中国では新工場の稼働などによって需要に応える体制作りを進める
北米市場での販売台数の増加に合わせてモデル数などが増えてきていたが、今後は派生の削減などによって「質の追求による成長」を目指していく
2025年までに生産領域の費用をグローバルで2018年比10%削減する
既存ビジネスを盤石化するための4つの施策

「小型i-MMD」搭載の新型フィットを「東京モーターショー 2019」で世界初公開

八郷社長は新型フィットを「東京モーターショー 2019」で世界初公開すると明言

 車両の電動化では、これまでにも八郷社長は「2030年にグローバル4輪車販売台数の3分の2を電動車にする」との目標を明らかにしており、車両の電動化によって得られるメリットについて「燃費の向上」「ゼロエミッション」の2つがあると解説。燃費向上で中心になるのはハイブリッド技術であると八郷社長は語り、ホンダが持っている2モーターハイブリッドシステム「i-MMD(Intelligent Multi-Mode Drive)」を今後はモデルラインアップ全体に拡大していくとの方針を示した。

 i-MMDは現時点で中・大型車にラインアップされている技術だが、新たに小型車向けのシステム「小型i-MMD」を開発。この小型i-MMDを4代目となる新型「フィット」に搭載し、10月に開催される「第46回東京モーターショー 2019」で世界初公開する予定だと明らかにした。

 i-MMDは採用モデルの拡大やグローバル展開の実施などでスケールメリットが増大することにより、2022年までにシステムコストが2018年比で25%の削減になる見込みであると八郷社長は語っている。

 ゼロエミッションについては、当面の間はバッテリーEV(電気自動車)をラインアップしていくことで対応。北米では米ゼネラルモーターズとの協業で競争力にあるバッテリーEVを市場投入し、中国では現地合弁会社と共同開発したバッテリーEVをすでに市場投入。欧州と日本では、3月に行なわれたジュネーブショー 2019でプロトタイプ車両を世界初公開した後輪駆動の新型バッテリーEV「Honda e(ホンダ イー)」の導入を予定。市場のニーズに合わせたバッテリーEVをタイムリーに展開していくとしている。

ホンダでは2030年をめどに、グローバル4輪車販売台数の3分の2を電動車にするとの目標を掲げている
車両の電動化で「燃費の向上」「ゼロエミッション」の2つのメリットが得られる
燃費向上の中心はハイブリッドになるとホンダでは想定
新開発した「小型i-MMD」を4代目となる新型「フィット」に搭載
i-MMDのシステムコストは2022年までに2018年比で25%削減される見込み
バッテリーEVは市場ニーズに合わせてタイムリーに展開していく

 最後に八郷社長は2030年ビジョンで掲げている「すべての人に生活の可能性が拡がる喜びを提供する」というステートメントの実現に向けて「質の追求」による成長を目指しているとコメント。「創業100年を超える2050年においても、社会から存在を期待される企業であり続けるように、ホンダは熱き思いでチャレンジを続けていきます」と締めくくった。

さまざまな施策を実現していくため、4月から新たな体制がスタートしている
「4輪事業の体質強化」「電動化の方向性」の取り組みについて示され、これをスピード感を持って実現していく
「質の追求」による成長を目指していると八郷社長はコメント