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フォルクスワーゲン、2020年に本格導入するEV専用アーキテクチャ「MEB」ワークショップレポート(その1)

「ID.」は2019年にプレセール開始

2018年9月20日(現地時間)開催

フォルクスワーゲンのドイツ ドレスデン工場で新型アーキテクチャ「MEB」のワークショップを開催

 フォルクスワーゲンは9月20日(現地時間)、ドイツ ドレスデン工場においてEV(電気自動車)専用の新型アーキテクチャ「MEB(モジュラー エレクトリック ドライブ マトリックス)」に関するワークショップを開催した。

 同社はこのMEBをベースにするEVファミリー「ID.(アイディ.)」の生産を2019年末から開始することを発表しており、5ドアハッチバックのコンパクトカーとSUVモデルを2020年に、同社のマイクロバス「Bulli(ブリー)」を現代的に解釈したミニバンやBセグメントのセダンを2022年に導入することを予告している。5ドアハッチバックのID.は、「ゴルフ」のディーゼル仕様とほぼ同じ価格帯になるとのこと。

EVファミリー「ID.(アイディ.)」は5ドアハッチバックのコンパクトカー(左)とSUVモデル(右)を2020年に、さらにセダンやミニバンタイプ(中央)を2022年に導入

 このロードマップは2017年のフランクフルトモーターショーで発表された、フォルクスワーゲングループのブランド全体で2025年までに計80車種の電動車両を新たに販売する新戦略「Roadmap E」に基づいたものであり、2025年までにEVを含む電動化車両の市場でマーケットリーダーになることを目指している。そのため、MEBはアウディ、セアト、シュコダ、フォルクスワーゲン商用車といったグループブランドでも広く用いられていくという。

 今回のワークショップでは、「MEBアーキテクチャ」「バッテリー・セル」「充電と充電インフラ」という3つのテーマのグループセッションが行なわれたので、それぞれのテーマごとのプレゼンテーションの模様をお伝えする。

2017年まで「フェートン」を、現在はEV「e-ゴルフ」の生産を行なうドレスデン工場内はガラス張りで作られるとともにフロアにメープルウッドを用い、明るく開放的な雰囲気が特徴

EVをすべての方々に、すべての市場に提供

フォルクスワーゲン Head of CenterのFrank Blome氏

 ワークショップ開催に先立ち挨拶を行なったフォルクスワーゲン Head of CenterのFrank Blome氏は、“ELECTRIC FOR ALL”(すべての人々のための電気自動車)という同日に発表したスローガンについて触れ、「このスローガンは今回のワークショップのためだけに付けられたものではなく、現在内燃機関に乗られている億万人の方々にわれわれの技術を提供するために付けたもの。すべての方にわれわれの技術とモビリティを提供することを目標としており、このことこそが他の自動車メーカーと一線を画すもので、われわれの推進力になっています。1950年代のビートル、1970年代のゴルフというのはすべての人が手に入れることができるモデルでした。そして次のマイルストーンとしてMEB、ID.があり、毎日使えるモデルとして提供いたします」と説明。

“ELECTRIC FOR ALL”(すべての人々のための電気自動車)

 また、近年EV市場をけん引しているのがノルウェーや中国であり、EVを含む電動車両が2017年に新車登録された数は中国で約77万7000台、北米で約20万台、ドイツで約2万5000台、英国で約4万8000台、フランスで約3万7000台だったことを報告し、「電動車両の登録台数が伸び続けているのは明白で、今後さらにペースアップしていくことは間違いありません。現在、e-ゴルフは従来の120台/日から160台/日まで生産能力を上げたにも関わらず、納車に7か月お待ちいただいている状態です。これはすべての市場で需要が伸びているためです」と、電動車両のニーズが世界的に高まっていることを報告。

中国で電動車両が2017年に新車登録された数は約80万台。世界的に電動車両の登録台数が伸び続けている

 一方、ID.シリーズについてはMEB専用工場のツヴィッカウ工場で生産を開始し、1500台/日の生産を目指すという。まずは550kmの航続可能距離を持つコンパクトモデルとSUVモデルを2020年に導入し、さらに2022年に“ゼロ・エミッションバン”としてミニバンタイプのEVを発売することを報告。また、2019年~2020年には8世代目になる新型ゴルフ、さらに新型ゴルフと同セグメントに位置するというコンパクトモデルのID.をラインアップすることを予告した。

550kmの航続可能距離を持つコンパクトモデルとSUVモデルを2020年に導入

 また、ID.シリーズの特徴については“インテリアスペースの広さ”を挙げ、「ID.シリーズは属するセグメントの1つ上の広さを保証します。最初に登場するID.はコンパクトなオールラウンダーとして作られ、手に届くゼロ・エミッションモデルです」と述べるとともに、充電インフラについては「125kWhの急速充電システムにより80%まで30分で充電できることを見込んでいます。インフラの拡大も不可欠であり、IONITY(フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェ、BMW、ダイムラーAG、米フォードが展開する欧州の急速充電ネットワーク企業)というジョイントベンチャーが鍵になり、信頼のできる充電ステーションネットワークを欧州全体の高速道路に展開したいと考えています。最大で350kWの出力を誇り、2020年までに急速充電ステーションを400か所に導入する予定です」と解説を行なった。

フォルクスワーゲン、BMW、ダイムラーAG、米フォードが展開する欧州の急速充電ネットワーク企業「IONITY」

 最後にBlome氏は「ID.の市場導入は2020年ですが、プレセールは2019年から始めることができます。もう来年です。皆さま、このID.ファミリーによってフォルクスワーゲンはEVをすべての方々に、すべての市場に提供していきます」と述べプレゼンテーションを締めくくった。

プレセールを2019年に開始する