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【ル・マン24時間 2018】FIA ジャン・トッド会長、「2020年規定は、自動運転車、コネクテッドカーで転換期を迎えている自動車産業にふさわしい新しい取り組みだ」

2018年6月16日(現地時間)開催

左から、FIA耐久委員会 委員長 リシャール・ミル氏、FIA 会長 ジャン・トッド氏、ACO 会長 ピエール・フィヨン氏

 日本のJAF(JAPAN AUTOMOBILE FEDERATION、日本自動車連盟)など各国ASN(Authority Sport Nationale)を束ねるFIA(Federation Internationale de l'Automobile、国際自動車連盟)の会長であるジャン・トッド氏が、ル・マン24時間レースの主催者であるACO(Automobile Club de l'Ouest、フランス西部自動車クラブ)会長のピエール・フィヨン氏、さらにFIA耐久委員会 委員長 リシャール・ミル氏と共に、6月16日15時(現地時間)にスタートを迎えるル・マン24時間レースに先立って記者会見を行なった。

 この中でFIAのトッド会長は「ACOが発表した2020年の新レギュレーションに満足している。耐久レースは走る研究室であるべきであり、自動運転自動車、コネクテッドカーで転換期を迎えている自動車産業にふさわしいレギュレーションだ」と述べ、新しい2020年規定に賛同の意を表明した。

耐久レースは走る実験室であるべきであり、転換期を迎えた自動車産業にふさわしいルール

ジャン・トッド氏:今回の記者会見を開催したのは、新しいレギュレーションにFIAが満足していることを表現するためだ。WECは我々が持つ素晴らしい選手権の1つで、そこにマニファクチャラーが参加していることを大変喜んでいる。これまで長い期間、FIA、ACO、メーカー、チームなどが参加して話し合いを続けてきたが、今回提案された2020年以降のレギュレーションは非常に強力なものであり、現在参加している自動車メーカーも、そして今後参加する可能性があるメーカーも参加して決まったものだ。

 自動車産業は、自動運転自動車、コネクテッドカーなどの誕生により大きく転換期を迎えている。それに併せて耐久レースも代わっていかないといけないし、歴史を紡いでいかないといかない。ACOは非常にいい仕事をしたと評価している。

 これにより多くの参加者が集まる見通しであり、FIAとしても今後もコミットメントし続けていく。私の持論は耐久レースは未来に向けた走る実験室であるべきで、今回の規定はハイブリッド、水素を利用した燃料電池など実に興味深いルールだと考えている。

FIA 会長 ジャン・トッド氏、自身も1992年、1993年にプジョーチームのマネージャーとしてル・マン24時間を制覇している

ピエール・フィヨン氏:昨日のACOの記者会見では、新しいルールの哲学とターゲットをお話させていただいた。昨日の記者会見の後、メディアやマニファクチャラーの関係者などからフィードバックを受けたが、多くの感想はポジティブだった。コンセプトは非常にクリアーで、次の5年間に実現できるルールだと考えており、さらに2024年には水素を利用した燃料電池を導入することで、ゼロエミッションにも貢献していく。(新しいルールでの車両の名称を公募することについて聞かれ)LMP1は確かに既に受け入れられている名前だけど、Hyper Carに関しても議論していい名前をつけたいと思ったのでそうした。

ACO 会長 ピエール・フィヨン氏

リシャール・ミル氏:我々の未来はよい方向に向かっていると考えている。(今回のレギュレーションは)政治的に正しいだけでなく、ショーとしても成立する必要がある。すべての車両がハイブリッドになり、将来的には水素を利用した燃料電池を導入する。今回の新ルールの鍵となるのは、コスト制御だ。コストの爆発的な増加を防ぐには、レギュレーションをドラスティックに変える必要があった。例えば、1000万ユーロ(1ユーロ=128円換算で、約12億8千万円)を投資してもアドバンテージがほとんどない、そんなことを避けたいと思って制度設計を行なった。

FIA耐久委員会 委員長 リシャール・ミル氏、超高級時計メーカー「リシャール・ミル」の創始者でもある

トッド氏:今回のルールは自動車レースの未来だけでなく、自動車の未来を規定するものだと考えている。すでにお話したとおり、私はレースは走る研究室だと考えているので、EVが街にあふれてくるなら、Formula Eがもっと流行るだろうし、耐久レースはハイブリッドや燃料電池の開発などに最適なものだ。50年前にル・マンはディーゼルの話をしてその規定を作った。そして今はそれがありふれたモノになっている。今後もレースを通じてそういうことを加速できるようにしていきたい。

フィヨン氏:ル・マン24時間レースのDNAは、メーカーがレースを使って技術をテストし、それを最終的にロードカーに適用するというものだ。水素を利用した燃料電池は未来の正しい方向でだと考えていく。

ミル氏:WECを含めた耐久レースにはもっと女性レーサーが参加出来るレースにしていきたい。これまで9ヶ月のディスカッションをしてきたが、今後も続けて11月の末にレギュレーションを決定していく。大事なことは継続性をもってやっていくことで、コンストラクターやチームが長い間安定して参加出来るようにしていくことが重要だ。

トッド氏:女性レーサーの参加を促していくことは重要で、女性が男性と同じように参加出来るように実現していきたい。むろん現状は男性はスポーツになっているが、サウジアラビアでも女性が運転したりモータースポーツに参加出来るようになっており、世界も変わりつつある。現在ミッシェル・ムートン氏が率いる女性モータースポーツ委員会がそれについて挑戦しているが、まだ十分だとは思っていない。そうした女性の参加を促すのに、耐久レースは最適なフィールドだと考えており、早くそういう時代を実現して欲しいと思っている。

──2020年以降にLMP2以下のカテゴリーはどうるのか?

フィヨン氏:新しい規定は、LMP1の進化形になり、現在はそこをディスカッションしている。LMP2は現状とてもうまく運営されており、現状そこを変える理由はないと考えており、LMGTEに関しても同様だ。