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【フォーミュラE 第1/2戦 香港】ワークス体制で参戦するアウディは、香港市街地で新型車「e-tron FE04」公開イベント

e-tronで新章へ、次世代のアウディのモビリティを提案

2017年12月1日 開催

アウディスポーツがフォーミュラEに投入する新型車「e-tron FE04」

 EV(電気自動車)のフォーミュラマシンを使って争われる世界シリーズ「FIA フォーミュラE選手権」(以下、フォーミュラE)の2017/2018年シーズンが、12月2日(現地時間)に中国 香港の「香港セントラル ハーバーフロント サーキット」で開幕した。シーズン開幕戦のラウンド1が12月2日に行なわれ、翌日の12月3日に続けてシーズン第2戦のラウンド2が実施される。決勝レースは各日15時(現地時間。日本時間は16時)にスタートする。

開幕戦へ向け設営の進む「香港セントラル ハーバーフロント サーキット」
開幕前日なのにいろいろ工事中
およそ2車線分の幅を持つメインストレート。レース時はこの直線で200km/h以上の速度での争いが行なわれる

新型車「e-tron FE04」を披露

新型車「e-tron FE04」のお披露目会場

 開幕戦の舞台となった香港市街では、開幕戦前日の12月1日にアウディは新型車「e-tron FE04」を報道公開。アウディ モータースポーツ代表のディーター ガス氏、チーム監督のアラン・マクニッシュ氏、ドライバーのルーカス・ディ・グラッシ選手とダニエル・アプト選手らが出席し、ワークス体制参戦の豊富を語った。また、この香港で「Audi RS5」をお披露目。フォーミュラEの開幕前夜を盛り上げていた。

アウディのレーシングカーがお出迎え
塗装も金色など、風水的に縁起のよさそうなもの
こちらはアウディらしくクールに
チャンピオンナンバーをつける新型車「e-tron FE04」
フォーミュラEはミシュランのワンメイク。市街地など荒れた路面で電気自動車のパフォーマンスをしっかり伝える役割が要求されている
新型車「e-tron FE04」とともに紹介された、アウディスポーツチームのメンバー
ドライバーのルーカス・ディ・グラッシ選手(中)、ダニエル・アプト選手(右)
「Audi RS5」のお披露も行なわれた

 チーム監督のアラン・マクニッシュ氏は、「フォーミュラEによって次世代のアウディのモビリティを提案していく」と語り、フォーミュラEがアウディにとって新たな挑戦であることを強く示す。また、フォーミュラE参戦は、WRC(世界ラリー選手権)、WEC(世界耐久選手権)に続くもので、マクニッシュ氏は「本で言えば、新しい章に入ること」と、挑戦する意味などを語った。

チーム監督のアラン・マクニッシュ氏

 ドライバーのルーカス・ディ・グラッシ選手は、「香港のレースはエキサイティング」と、香港の市街地サーキットの難しさを語りつつ、そこでレースができることを楽しみにしているという。ルーカス・ディ・グラッシ選手は、昨シーズンチャンピオンを獲得しているだけに、この開幕戦でも結果が期待されるところ。ラウンド1、ラウンド2と2戦開催となっているだけに、ここでの戦い方がチャンピオンに大きく影響してくる。

ルーカス・ディ・グラッシ選手

 アウディワークスのもう1人のドライバーであるダニエル・アプト選手は、フォーミュラEに参戦するドライバーで最も若い24歳、しかも12月3日の日曜日には25歳の誕生日を迎える。フォーミュラEの開幕について、「結果を求められるプレッシャーもあるが、楽しみにしている」といい、誕生日を勝利で迎えられたら最高だと、勝つことへの意気込みを語った。

ダニエル・アプト選手

アウディワークスが、フォーミュラEに参戦することの意味

 新車披露の後、アウディスポーツ代表 ディーター・ガス氏、チーム監督のアラン・マクニッシュ氏にインタビューする機会を得た。

アウディスポーツ代表 ディーター・ガス氏
アウディスポーツ代表 ディーター・ガス氏

 ディーター・ガス代表は、ワークスとしてフォーミュラEに参戦することについて、「我々にとって非常にエキサイティングだと思っている。昨シーズンからすでに我々の関与が強まっているが、明日(土曜日の第1戦)はまさに我々が責任をもってやることになります。そして、完全にオペレートするということで、それがどうなるか楽しみにしている」と期待を述べたほか、今シーズンからシングルギヤとなり、昨シーズンとはギヤボックスが変更されていることについて、「我々はすべての分野で改善をしている。ソフトウェアなどシステムの開発に大きな焦点を当てている」と語る。モーターを駆動するプログラム、バッテリーマネジメントプログラムなど、アウディワークスならではの作業が行なわれていると語る。

 アウディがワークスとしてフォーミュラEに参加することについては、「これまでのレースとはまったく違う。これまでのレースとは比べないようにしている。市街地で開催されるため見に来る人もまったく違う。(これまでの)モータースポーツファン向けというより、ファミリー向けのレースだ」と位置づけ、新しいモータースポーツ文化を構築するものと表現。

 とくに電気自動車の概念を変えていくことが大切だと述べ、「現在電気自動車は、一般の人は退屈なクルマだと思っている。そうではなく、信頼性があり、速いクルマであるということを証明していく必要がある」と説明した。

チーム監督 アラン・マクニッシュ氏
チーム監督 アラン・マクニッシュ氏

 アラン・マクニッシュ監督は、香港のレースについて「いろいろなシミュレーションをしてきたが、レースにならないと分からないことがある」と、レースならではの難しさを最初に語り、ワークスとして2人のドライバーで戦っていくことについては、「ドライバーについてはまったく同じ戦略だ。まったく同じチャンスが2人にある。チームからのサポートも、技術提供も同じ。レースは最初に予選がある。昨年の場合、予選はダニエルの順位がよく、ルーカスはクラッシュした。その結果、レースの戦略はまったく異なったものになった。いずれも予選でよい結果だった場合、勝利のために走る。どちらかがよい結果になるが、それがレース」と、昨シーズンのチャンピオンであっても、若手であってもチームとしてのレース戦略に違いはないことを強調。

 アラン・マクニッシュ監督自身、ル・マン24時間レースを優勝するなど顕著な成績を残してきたドライバーだけに、レーシングドライバーの気持ちを理解してチーム采配を行なっていくようだ。

 アウディワークスは、これまでWRCに挑戦して結果を残し、ル・マン24時間レースは13勝という輝かしい結果を残してきた。そのアウディワークスが、アウディスポーツとしてフォーミュラEに参戦することは3つの意味があるという。

「1つ目は、我々の技術的な能力を証明することになる。それは我々がル・マンでやってきたことと同じだ。WRCでクワトロを作り出し、ル・マンでTFSI、TDI、ハイブリッドを作り出し、勝利で証明してきた。2つ目は、新しい分野のレースであるということだ。バッテリーで動く電気自動車でシングルシータ-のモデルである。アウディにとってシングルシーターは初めてになる。3つ目は、フォーミュラEは都市で行なうレースになる。我々は電動化、サステナビリティ(持続可能化)にコミットするということを、直接都市の人たち、今回は香港だが、示すことができる。ここにお客さまがいる。クルマを買う人たちがいる。将来は東京でも(笑)。このクルマは東京でも走れる。我々は富士のWECに毎年参戦してきた。我々は日本でもレースをしたい」。

 アラン・マクニッシュ監督は、アウディのル・マンドライバー以前に、トヨタ自動車のF1ドライバーだったこともある。日本からの報道陣向けへのリップサービスはあるだろうが、日本の都市でフォーミュラEが行なわれることを楽しみにしていると語ってくれた。

 日産自動車は、この次のシーズンからフォーミュラEに参戦することを表明しており、日産の本社がある横浜での開催など、ゼロではない可能性はあるだろう。

 アウディスポーツのディーター・ガス代表、アラン・マクニッシュ監督が異口同音に語っていたのは、フォーミュラEだからこそできる都市でのレース開催。世界の人口は都市に集中する傾向が強まっており、その巨大都市での交通機関として電気自動車は主流を占める可能性がすでに見えている。その電気自動車を使った最高峰のレースであるフォーミュラEを制覇することは、e-tronで電動化を推進するアウディにとって大きな意味があるということになる。