日下部保雄の悠悠閑閑

JEEP「WRANGLER」

ジープ「ラングラー」

 ジープ「ラングラー」の試乗会が、愛知県豊田市近くの猿投(さなげ)アドベンチャーフィールドを舞台に行なわれた。名古屋まで足を伸ばし、そこからバスでアドベンチャーフィールドまで行くので1日がかりだが、アメリカの懐に触れるような試乗会だった。

 ジープは第二次世界大戦中にアメリカ陸軍が企画したタフな軍用車をルーツをとし、当初はバンタムが開発・生産したが、その後、ウィリス(商標を持つ)、フォードなどが大量生産を担当。紆余曲折を経て、現在はFCAが作るジープ ラングラーにその血は受け継がれる。

ルーツとなった車両のシルエットがフロントウィンドウに描かれていた

 ラングラーは、広大なアメリカの大地を駆け巡っているイメージを思い浮かべる。もちろんアメリカ人に愛されている4輪駆動であることは間違いない。しかし、北米の次の主要マーケットは日本だと聞いてびっくりした。今やジープは年間で1万台ほども販売されているのだ。ラングラーでは2位が中国だという。中国はラングラーのような趣味性の強いオフロード車を必要としないのかもしれないが、それにしても驚きである。

 新しいラングラーは2.0リッターの直列4気筒ターボと、従来からあるV6 3.6リッターを改良したNAエンジンを揃える。ボディはビルトインフレームタイプ、4輪リジットという4輪駆動のセオリーを踏襲したレイアウトだ。

 新しい4気筒ターボエンジンはスムーズでトルクがあり、最新のエンジントレンドに則っている。ラングラーのような2t近い重量級でも悠然と走る。直進安定性などはフレームタイプの常でステアリングセンターが甘いが、ジープのオフロード性能と頑丈さとの引き替えだと考えると頷ける。

 8速のトルコンATとの組み合わせで、ハイウェイクルージングなどでは回転が低く抑えられるし、エンジン自体のノイズも気にならない。

 静粛性の主な要素である風切り音はこの四角いボディに望むのは限界があるものの、デザインから想像するよりはるかに抑えられており、ユーザーにとっても許容範囲だろう。何しろラングラーはジープ伝統のデザインとそのライフスタイルが支持されているのだ。

岩登りをするラングラー

 そして、ラングラー自身も着実に進化しており、一見同じデザインであるようでも、サイドウィンドウを下げて直近の視界を改善したり、ウィンドシールド(感覚的にこの言葉がぴったりくる)の傾斜角度がさらに5.8度寝かされ、空気抵抗を低減するなど地道な努力がされている。また、ロングホイールベース仕様(3010mm)は後席のレッグルームが拡大され、かなり足下が広くなったのもユーザーにとって嬉しいところだ。

 ショートホイールベース(2460mm)では、最小回転半径が僅か5.3m。ロングホイールベースでも、なんとこれまでより0.9mも小さい6.2mになっており、使い勝手は大いに向上。オフロードはもちろん、市街地でも使いやすさを高めた。また、全幅は1895mmと幅広だが、ボンネットがよく見えるので実際のサイズよりも小さく感じさせる。

 ちなみに、JC08モードの燃費はロングの2.0リッターターボで11.5km/Lで、意外と走るなと感じた。それに、ロングでは燃料タンクに81Lも入るところもアメリカ車らしい。

 デザインは伝統のジープだが、インターフェースも含めてあらゆるところが現代的になっており、市街地中心の使い勝手にも適合させているという。

 日本では法規制の関係でできない部分があるものの、物理的にはフロントウィンドシールドはボルトで前に倒せ、その際、じゃまになるワイパーも簡単に外せる。また、ルーフトップもボルトで脱着可能。加えて、後席ルーフも4本のボルトで外せる。さらにドアも外せてしまうので、オリジナルのジープのようなスタイルで走ることも可能だ。しかも、これらはすべて車載工具でできてしまう。日本でもクローズドされた場所ならこんな楽しみ方もできそうだ。

 オフロード性能は前後コイルリジットのサスペンションで、超ロングストロークのサスペンションは岩場のような急な上り坂でもムズムズと這い上がる。デモ走行で見せてもらった場面では、オリジナルのオフロード用でないA/T(オールテレイン)タイヤが滑り出してしまう場面も何回かあったが、トライを繰り返しているうちに上り切ってしまった。岩場に下まわりを打つこともなく、タフな走りはジープに似合っている。

岩場を上っているところを正面から見ると、リジットサスペンションのストローク量がよく分かる

 4WDシステムはラングラー初となるオンデマンドタイプの4WD。日常では「4H AUTO」にしておけば自動で前後トルク配分を行なうので、大抵はこれで事足りる。本格的なラフロードではパートタイムレバーを4Hか4Lに入れれば、センターデフがロックされて、悪路でのトラクションが遺憾なく発揮されるというわけだ。

 というわけで、試乗後の猿投ではオレンジのラングラーの傍らで豪快にBBQを振舞われ、パートタイムのアメリカ人になってみたのであった。

 ところで、YOKOHAMA&PROSPEC Autumn Driving Park 2018@袖ケ浦は、おかげさまで好天の中無事終了しました。参加者の皆さんにはみっちりと練習していただき、本当にお疲れさまでした!

YOKOHAMA&PROSPEC Autumn Driving Park 2018@袖ケ浦では、参加者の皆さんにみっちりドライブ技術を練習していただきました!

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。