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第299回:映画『野火』(1959年)感想と考察

今回は4Kバージョンで再上映されている映画『野火』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ、と言ってもリメイク版や原作小説も有名ですし、ちょっと核心に触れていく内容になりそうなので未見の方はご注意ください。

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イントロダクション

小説家 大岡昇平が自身のフィリピンでの戦争体験をもとに執筆した同名小説の映画化。2015年には塚本晋也監督によるリメイク作品もありました。

第2次世界大戦末期のフィリピン レイテ島。肺病を患った一等兵・田村(船越英二)は所属する部隊から追い出され野戦病院へと向かう。しかし、物資の枯渇と大量の病人を抱えた病院に彼の居場所は無かった。同じように入院を断られた永松(ミッキー・カーチス)や足を負傷し動くのがままならない安田(滝沢修)をはじめとした兵士たちと共に見えない敵兵に怯えながら熱帯のジャングルを放浪する。

監督は市川崑。有名なのは『犬神家の一族』(1976年公開)をはじめとした金田一シリーズではないでしょうか。この犬神家も2~3年前にリマスター版の再上映で観ましたね、佐清!仮面をめくっておやり!

主演は船越英二。同じく俳優の船越英一郎のお父さんにあたりますが、役作りがもの凄い。あばら骨浮き出てるよ。断食を行い相当体を絞ったようで撮影中に倒れたとか。流石にストイック過ぎます。なお市川崑作品ですと『黒い十人の女』(1961年公開)にも出演しています。シスターフットの臭いがする観たいやつ。

「人間らしさ」こそ戦争映画

今年は終戦80年にあたる年。どこぞの国は未だに侵攻や虐殺を働いており「終戦」という言葉を使って良いのかも分からない現状ではありますが、この80年の節目に合わせて多くの戦争映画が映画館で上映されています。我ながら真面目な性格なもんで”何か観に行かなくてはいかん!”と思い立ち選んだのが本作でした。まぁ原作を薄っすら読んだ記憶がありますしリメイク版も観た事があったので内容自体は知っていましたが…おやっ?結末が違う?

原作とリメイク版では、主人公の田村は生き残りその後の人生が描かれていたと思います。しかしこの59年版は戦場で力尽きたように見えます。この真逆といっていいラスト、恐らくは”猿の肉”を拒んだか否かの違いでしょう。拒まず食べれば飢餓からは救われるわけですから。つまり人間らしさを捨てて生き残るのか、それとも人間らしさを保って死ぬのかという絶望的状況。どちらを選んでも地獄に違いはありません。

私が戦争映画に求めているのはこうした人間が人間らしく居られるかどうかの狭間を捉えた作品です。例えば『フルメタル・ジャケット』(1987年公開)。ベトナム戦争を扱った作品になりますが、まさに人間が人間ではなくなる姿を俯瞰的に描いた傑作だと思います。また『この世界の片隅で』(2016年公開)では、戦時下の呉を舞台に人間らしい日常生活を保つための市井の戦いが描かれていましたし、実在した米兵を通した『ハクソー・リッジ』(2016年公開)に関しては、やや美談的ながらも自身の信仰や誇りを戦争という大きな力を前にどう貫くのかというテーマにグッと来るものがありました。

戦争は人を豹変させグロテスクで野蛮な世界へと導きます。だからこそ人間らしい文化的で平穏無事な日常のために声高に叫んでいきましょう。戦争すんな!戦争なんてやめちまえ!

まとめ

以上が私の見解です。

そういえば最近読んだ『指の骨』という小説も似たような話だったなと。飢餓や疫病による死者が多く出るというのも戦争のリアルなんですね。

そして何と言っても狂った老兵が蠅が集る臓モノか何かを貪るシーンはトラウマ級。モノクロながらあれだけの臭気が漂ってくるような気持ち悪さは強烈です。今回4Kになったからこそってのもあるか、恐るべし4Kの画質。

ということでこの辺でお開きです。ありがとうございました。




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