今回は現在公開中の映画『サブスタンス』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

イントロダクション
去年のカンヌ国際映画祭で脚本賞、さらに今年の米国アカデミー賞ではメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したホラー作品。
50歳の誕生日を迎えた元スター女優のエリザベス(デミ・ムーア)は、出演していたエアロビクス番組を容姿の衰えを理由に降板させられてしまう。仕事をなくして絶望する中、若さと美貌が得られるらしい「サブスタンス」という投薬療法の存在を知って試す事に。薬品を注射するとエリザベスの背が破け、”スー”(マーガレット・クアリー)という若い彼女自身が現れる。若さと美貌に加え、これまでのエリザベスの経験を兼ね備えたスーはたちまちスターダムを登り詰めるのだが…
監督はコラリー・ファルジャ。2017年公開『REVENGE リベンジ』以来の長編2作目となります。この『REVENGE リベンジ』が傑作。不倫相手の仲間にレイプされ、口封じのために崖から突き落とされた女性が重症を負いながらも復讐をしていくシンプルな内容の作品ですが、とにかく演出が過剰。最後の全裸ショットガンは一周回って感動するレベルです。
出演はデミ・ムーア。代表作は『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990年公開)でしょうか?人と映画の話になって観てないと言うと驚かれるろくろ回してるやつ。これを機会に観てみますかねぇー。近年だと『マッシブ・タレント』(2022年公開)に出演してます。あれはニコケイが自身の生き様を体現するような作品でしたが、今作はムーア自身が生き様を見せるような内容でもあったので、どこかシンパシーが感じられます。
そしてもう一人の主役がマーガレット・クアリー。去年の『ドライブアウェイ・ドールズ』や『憐れみの3章』に引継ぎ、ひと癖ある作品への出演が続ています。小島秀夫の新作ゲームにも出てるのかな?
やり過ぎの裏に
前述の通り過剰演出が輝く前作だけあって今回もとんでもないものを魅せてくれるだろうとは思っていましたが…これは近年稀にみる剛速球っぷり。人物の映し方や物語上そこまで重要ではないシーンに至るまでとにかく全てを過剰にみせてきます。エネギッシュにも程があるだろw
それに様々なホラー映画へのオマージュもやり過ぎてます。最初から諸に『シャイニング』(1980年公開)のオマージュでびっくりしましたし、『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000年公開)や『ザ・フライ』(1986年公開)へのリスペクトも見られました。ラストなんて『エレファントマン』(1980年公開)や『遊星からの物体X』(1982年公開)、『死霊のはらわた』(1981年公開)、『キャリー』(1976年公開)を彷彿とさせる超パワフルフィナーレでもう何が何だかwこれは笑うしかありません。SNS上では”笑うなんてどうかしてる”みたいな視点もあるようですが、ジャンル映画って社会に渦巻く不条理やモヤっとする事を笑い飛ばす要素を持ち合わせているのでは…?。
まぁその話は置いておいて、笑って観ていた私ですが、心の奥では切ない気持ちに苛まれていました。過剰演出の数々の裏にミドルエイジに差し掛かった孤独な女性の哀しみを感じていたからでした。他人から求められてきたのが容姿や美貌だけの人生を送ってきたエリザベスさん。老いにより突如としてそれが求められなくなり邪魔者扱い。自分には容姿しかないという思い込みが彼女を暴走させます。ここでポイントなのがエリザベスさんがお綺麗であるという事。そりゃ若さには負けてしまうかもしれませんが、パンピー視点からすれば美人そのもの。それに「他人の目なんて気にせず健康的で自由に生きたいよねぇ〜」と思う私からすると、そこまでして得たい「美」って何だ?とも思え複雑な気持ちを覚えました。だからこそ中盤の鏡の前に何度も化粧を直すシーンがねぇ…哀しい。
それに基本的に主人公が浴室で一人で何かやってるシーンばかりで、他人との会話が少ないのも辛い。スーさんはまだしも、エリザベスさんの方は一人でTV見てるか荷物受け取りに行くぐらいしかしてません。そんな人生はあまりにやるせない。エアロビ番組の最後に言う「自分の事を大事にねぇ~」が心に沁みます。
まとめ
以上が私の見解です。
いやー期待していただけありました。これが監督長編2作目?次は一体どんな作品を撮るのか今から楽しみです。
それに美術が良かったですね。真っ黄色のコートや真っ赤な車など、色彩がビビットでサイケデリックな雰囲気がスクリーンに映えてました。特殊メイクも凄い。ここ最近の映画では、拝む事が少なくなったあの特殊メイクだからこその気色悪さが素晴らしかったです。まぁ気色悪さで言ったら、デニス・クエイドが海老食ってるシーンの方が勝りますが。あんな喰ってたら甲殻アレルギーになりそうなのは置いておいて、『REVENGE リベンジ』でもおっさんがチョコレート菓子?を喰ってる様をキモく撮ってるシーンがありましたよね。えっ監督の趣味?w
という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。