以下の内容はhttps://captaincinema.hatenablog.comより取得しました。


第329回:改めて都内のお気に入りスポットを考えた件

今回は映画の話ではありません。とは言え映画館についての話はする事になります。

以前、旧Twitterで東京都心で好きな場所ランキングについての投稿を見かけて私も思い付きで挙げてみたのですが、理由をしっかり考えてみようと思った次第。さぁ生まれも育ちもトーキョーのCityBoyで地方出身者からは色々言われそうな私が改めて東京と向き合って選定したスポット。これから就職や入学シーズンで上京される方々にとっては案外参考になるかもしれませんよ。

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↑東京といえば東京タワーでしょうか?ランキングには入れていませんけど

第10位

議事堂通り

甲州街道から伸び都庁議事堂と京王プラザホテルを間を抜ける通り。いきなり変なところを挙げたもんですが、あそこを夜に歩くの好きなのです。

まず人通りがかなり少ない。新宿とは思えない人っ気のなさが落ち着きます。まぁ飲食店や商店がありませんからね。そして丹下健三が設計したイカつい東京都庁のビュースポットでもあります。夜になるとただでさえ異様な形をした東京都庁の建物がオフィス街の光を受けてぼんやり佇んでいるのです。しかも場合によってはプロジェクションマッピングで毒々しく輝いている時もあり何とも”トーキョー”らしいカオスさが際立ちます。しかしあのプロジェクションマッピングは人気ないですね。SNS上では税金の無駄遣いなんて言われ、実際見ている人もまばら(たまに外国人観光客が写真撮ってるぐらいだもんね)。都としては新たな観光スポットを目論んだのでしょうが、成功とは言えなさそうです。

第9位

国立西洋美術館

上野恩賜公園内にある西洋美術を中心に取り扱う美術館。上野にはその他にも多くの美術館や博物館が点在しますが、特に好きな場所といったらここになります。

世界文化遺産に登録されている建物内で美術品が鑑賞できるという贅沢が味わえ、それでいて入館料が一般500円ははっきり言って破格です。これも偏に「国立」であるからこそでしょう。しかしそんな国立博物館や美術館に対して収入目標を定め、未達成の場所は再編という何ともきな臭い話もあるので、今後は値上がる可能性がありそうなので今のうちに行くべきかも。なお私のお気に入りの作品は ヴィルヘルム・ハンマースホイの「ピアノを弾く妻イーダのいる室内」。なんでしょうね、空間美っていうんでしょうか。シックな色合いも好みです。

あっちなみに公園内にある黒田記念館も良いですよ。なんてったって入館無料で黒田清輝の絵が見れちゃいますから。

第8位

新宿十二社熊野神社

西新宿に鎮座する神社。新宿の神社ですと新宿三丁目方面の花園神社が有名かもしれませんが、たまたま立ち寄った際にライブのチケット祈願を行ったところ見事当選した場所という事でランキング入りとなりました。結構立派な社殿を構えつつも人はまばらなため気持ちのリラックスが出来ます。

また隣接する新宿中央公園も好印象です。昔は昼でも薄暗いイメージがありちょっと近寄りがたい雰囲気が流れていましたが、いつ頃かガラッと変わりました。恐らく園内にカフェを併設したのがデカいんだろうな。

第7位

神保町 古書店街

言わずと知れた本の街。学生時代は空きコマの時間潰しによく足を運んだ場所です。別に何を買うでもカレーの有名店に入るでもなくぶらぶら。金の無い友人とはよくサイゼリヤで過ごしたものです。

という昔話も程々にしてそりゃ本屋が軒を連ねる街というだけでワクワクしますが、毎年秋に開催される古本市では沿道にも本が積まれたワゴンが並ぶ圧巻の光景となります。この古本市、今年はどうやら4月にもあるらしい。リニューアルオープンした三省堂書店をチェックするのも兼ねて行かないといけませんな。

第6位

コレド室町

日本橋にある商業施設。敷地内には福徳稲荷神社(芽吹神社)があり、ここが最近かなりの賑わいを見せています。何でもアイドルグループのライブチケットが当たるという噂があるらしく連日推し活女子たちが列を成しています。私にとっては第8位に挙げた神社がそれに該当するので、ゲン担ぎの寺社仏閣はその人それぞれで異なると思っていますがとにかく困った時は神頼みは皆同じです。

それに都内にあるTOHOシネマズで最も治安良い場所だと思います。マナーのなっていないクソ客との遭遇が記憶にない唯一のシネコン。個人的には傘を忘れて取りに行ったり携帯電話を家に忘れどうにかチケット発券出来ないかを交渉したりとハプニングに見舞われる事の多い映画館ですが、その都度丁寧な対応に助けられています。

さらに周辺には各地のアンテナショップが点在しているのもポイントが高くぶらっと散歩していると色々発見があります。

第5位

日比谷OKUROJI

日比谷から新橋に掛けて展開する高架下の商店街。青森県八戸市のアンテナショップや手ぬぐいを揃えた染物店と個人的にささる店が多いのが選定理由ではありますが、適度な人の少なさが有難いスポット。有楽町や銀座の飲食店はどこも混んでてうんざり。しかし中心地から少し離れたここに来ると比較的すんなり入店が出来ます。

しかしその人の少なさが影響したのでしょうか。私が好きでたまに行っていた常陸牛を使った肉料理の店が無くなったのが悲しみ。あそこのハンバーガーが個人的には今まで食べてきたバーガーの天井でした。あの味に変わるものはないかと色々食べてはみていますが、しっくり来ないんだよな…

第4位

新宿武蔵野館

新宿にある都内最古の映画館。本当は同系列だった新宿シネマカリテと書きたいところでしたが無くなってしまったので…

恐らく私が一番足を運んでいるミニシアターになります。つまりは映画の面白さの幅を広げてくれた場所です。シネコンで上映される大作とはひと味違った作品に出会えるのがミニシアターの醍醐味ですが、ここは上映作品の水槽を交えたディスプレイ装飾など作品そのもの以外からも感じられます。

また新宿駅直結という素晴らしいアクセスの良さもポイント。地下で繋がっているので雨の日や猛暑日なんかは楽に辿り着けます。

第3位

丸の内ピカデリー

有楽町駅すぐにあるシネコン。2階席を備えたシネコンは都内だと唯一か?私が認知しているのはここだけで絶滅危惧種となった2階席。(ミニシアターではシネクイント渋谷とシネスイッチ銀座にあります) いや、2階の一番前の席ってのが映画館の座席におけるベストポジションだと思っていますから。丁度スクリーンが目線の高さにくるのでめちゃくちゃ見やすいんですよ。

また、ここのDolby Cinemaが映画体験として格別だと思っています。映画がお好きな方々の間だとグランドシネマサンシャイン池袋のIMAXが人気っぽいですが、私はDolby派です。『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』(2023年公開)を観た時は本当に衝撃的でした。ただ料金がお高いので年に1回行くか行かないかの頻度です。

そして毎年、東京国際映画祭でお世話になるスポットでもあります。それでいうと丸の内TOEIの方が印象にあるんですけど、あそこも無くなってしまったからなぁ…

第2位

紀伊國屋書店 新宿本店

本を買うのは基本的にここ。そして新宿で時間を潰す場所としても基本的にはここです。昔は新宿駅南口の高島屋近くにあった店舗の方によく行っていた気もしますが、本屋といえば紀伊國屋のイメージが私の中に定着しています。

最上階にDVD/Blu-rayの販売コーナーが残っているのが有難い。滅多に買わないものの、今や絶滅したといっても良い円盤の販売コーナーなので、定期的に生存確認をしています。リニューアルする前は別館にあって結構な規模の売り場面積だったんですけどね。さらに地下1階にある飲食街も結構好き。特に 旅行雑誌「るるぶ」が運営しているレストランは何頼んでもハズレなしです。レストラン内にはるるぶの雑誌も置いてあるので、何処へ旅行をしようか思いを馳せるのにもうってつけです。

第1位

日比谷公園

吉田修一が芥川賞を獲得した『パークライフ』の舞台でもある都立公園。私にとっては圧倒的1位です。

イベント事が開催されていない限り人が少ない&適度な広さが丁度良いザ・都会のオアシス。銀杏並木の紅葉をはじめ季節によってはネモフィラやユリの花も綺麗に咲いているので、個人的には四季を感じるためのスポットとなっています。昨今の都市開発の事情に反するかのようにベンチも多く配置されており、晴れた日は読書やちょっとしたピクニック気分で昼食を取るのにも向いています。さらに園内にある日比谷図書文化館が暇つぶしスポットとして最適。三角の形をした面白い構図の建物で公園の緑を眺めながら本を閲覧できる座席が充実している良い図書館です。

といったようにで私が公園に求めている全てがあるといった感じ。上野や代々木公園も好きですけど、あそこはオアシスではなく観光地化してる印象なので少々”落ち着き”が足りないんですよね。

番外編

最後にランキングからは外したスポットを5つ列挙します。まずは、一度しか行った事がないためランキング外にした3選。

アドミュージアム東京

新橋にある広告・CMをテーマにした美術館。入館無料とは思えないボリュームで平気で2時間近く居た気がします。ちなみに近くにある旧新橋停車場も入館無料スポットです。

東京都現代美術館

清澄白河駅近くの現代アートを取り扱う美術館。建物が立派です。建物単体でいえば国立西洋美術館より好きかも。また周辺には東京の郷土料理 深川めしが食せる店が点在してるのも良い点です。

NHK放送博物館

神谷町近くの23区内で最も標高が高い山 愛宕山にある博物館。今では代々木にあるNHKですが、開局当時はここにあり、都内で高い場所だった事が電波塔を建てるのに好条件だったらしいですよ。こちらも入館無料とは思えないボリューム。受信料様々です。なお博物館隣には出世の階段で有名な愛宕神社もあります。

 

そして、とある理由でランキング外にした2選。

シネマート新宿

今や都内のジャンル映画好きが集う聖地、いや限界集落といって過言ではないミニシアター。独自路線を貫く上映ラインナップが非常に素晴らしい。ただ2番スクリーンがなぁ。座席と座席の間隔が狭い&前後の高低差が少なく前の人の座高次第で見えなくなる&通路が一本なので出入が過酷だった記憶。そのため2番スクリーンでの上映回は避け続けていましたが、今は改善されたのでしょうか?

ヒューマントラストシネマ渋谷

こちらもジャンル映画にめっぽう強い映画館。恐らく新宿武蔵野館の次ぐらいにお世話になっているミニシアターですが、ここは映画館というよりも渋谷という立地がマイナス。私あまり渋谷が好きではなくてですねぇ…新宿や銀座周辺と比べると街自体のキャパが狭いっていうんですか。道幅の狭いところが多く常に人が滞留している感じが苦手。また駅が迷宮。これは今改善しているところなんでしょうけど、京王井の頭線から銀座線に乗り換えようとした時、幻滅するほど路頭に迷った事は今でも忘れません。

まとめ

以上、ランキング外も含めると15の場所を取り上げました。

こうして列挙してみると

・人が少ない

・コスパが良い

というのがキーワードとなっていました。東京は人が多くて諸々の値段が高い。そのせいもあって何処か忙しない時の流れと人が冷たいコンクリートジャングルなのは間違いないでしょう。しかしちょっと視点を変えてみると意外にも安らげる場所があります。まさしく"Find my Tokyo"。捨てたもんじゃないな。というと事で思っていた以上に長くなりました。この辺でお開きです。ありがとうございました。

第328回:映画『しあわせな選択』感想と考察

今回は現在公開中の映画『しあわせな選択』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

去年のベネツィア国際映画祭で話題を呼んだパク・チャヌク監督最新作。賞レースを席巻か?みたいな記事を読んだ気もしますが、あれ?どうだったかな?

製紙会社に勤めるサラリーマンのマンス(イ・ビョンホン)は25年勤めた会社を突如解雇される。妻と2人の子ども、2匹の飼い犬を養うために一刻も早く再就職先を見つけたいものの就職活動は難航。このままでは自宅の一軒家を売りに出さないといけない状況に陥る。追い詰められたマンスは、自身を雇ってもらうために現状雇われているポストの人間を消し、空いたポストを狙うであろうライバルをも殺してしまう事を思い付く。

監督はパク・チャヌク。私の好きな監督の一人です。前作『別れる決心』からもう3年も経つんですね、早いなぁ。『オールド・ボーイ』(2003年公開)や『お嬢さん』(2016年公開)などの傑作が並びますが、どの作品もエロやフェテッシュさを品良く見せるのが特徴かと思います。今回はそのフェテッシュさをコミカル見せる事をやっていたように思えました。

主演はイ・ビョンホン。チャヌク監督とは『JSA』(2000年公開)と『美しい夜、残酷な朝』(2004年公開)で組んでいますが、それらも含めて『悪魔を見た』(2010年公開)や『KCIA 南山の部長たち』(2020年公開)など良作映画への出演が多いんですよね。でもハリウッド作品となると『G.I.ジョー』(2009年公開)みたいな何だかパッとしない役どころが多いのは気のせいか…いや気のせいじゃない!これは多分ハリウッドが悪いんです。とは言え『マグニフィセント・セブン』(2016年公開)は割と好き。

この社会は蹴落とし合い

さぁ上半期公開作品で一番期待していた作品のお出ましです。という事でちょっとバイアスが掛かった状態で観ているので悪しからずと言いたいところですが、非常にシニカルでパンチの効いた作品だったと思います。

イ・ビョンホン扮するちょっと情けないおっさんがどんどん狂気に憑りつかれる様やチャヌク作品らしい妙にフェテッシュでケレンたっぷりなシーンもあるので、前半は結構クスクス笑いながら観ていられたんです。しかし後半に差し掛かってくると段々と笑顔は消えていき”あぁ…心当たりがぁ…”みたいな複雑な気持ちにもなってきます。

本作で核となる「ライバルを殺す」というのは、フィクションだからこその極端な表現であって、誰しもがライバルを蹴落とす行為によって社会的地位を築いている事に気づかされます。なにも国会議員や大企業の取締たちの間の権力闘争に限った話ではありませんよね。就職や受験といった多くの人が経験であろうイベントでも僅かなポジションの奪い合いが行われています。自身がそこへ就職/入学できたという事は誰かが争いに負けて蹴落とされた事を意味しますから。こうした争いを「仕方ない」と切り捨ててしまうのが社会システムの常識。しかし本当に「仕方ない」で済まされるのでしょうか?それでは済まされない極限状況の人だって居るはずなのに…

だからこそあのチェロを弾く事しか出来ず、少し社会性に欠ける娘さんはそんな社会的なシステムから逸脱した存在に写ります。特出した才能を生まれながらに持っていれば"社会の殺し合い"に参加する必要はないのかもしれません。はぁー皮肉だぜ。

まとめ

以上が私の見解です。

チャヌク作品の中で最も現代への風刺が効いた作品だったかと思います。復讐や愛憎をテーマにした作品が多い印象ではあるのでかなりの変化球だったようにも思えます。でもあのセルフ抜歯のシーンね、あれは『オールド・ボーイ』を思い出しますよ。『お嬢さん』の指切りシーンもそうですが、暴力シーンをやたら痛そうに撮るの好きだもんな。決してグロテスクな感じではないので、ここも品の良さなんでしょう。あぁそうか『禍々女』の時にも品についてをテーマにしクサしましたが、原因はチャヌク作品にあったのかも。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第327回:映画『レンタル・ファミリー』感想と考察

今回は現在公開中の映画『レンタル・ファミリー』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

全編で日本で撮影が行われたハリウッド産ヒューマンドラマ。

日本に暮らすアメリカ人俳優のフィリップ(ブレンダン・フレイザー)は歯磨き粉のCMで一世を風靡したものの有名役者には成れず、しがない生活を送っていた。そんなある時レンタル・ファミリーなる会社の代表 多田(平岳大)と知り合う。その会社は仮の家族などを演じて依頼人が望みに応える仕事をしており、フィリップ自身も俳優としてのスキルを活かして働き始める。そこである少女と出会い…

監督はHIKARI。『37セカンズ』(2019年公開)を手掛けた監督です。あぁ…車椅子の…観たのは覚えてるんですけど、細かい内容が思い出せない。

主演はブレンダン・フレイザー。『ザ・ホエール』(2022年公開)でオスカー像を獲得しましたが、まぁこの方と言えばやっぱり「ハムナプトラ」シリーズでしょう。何だか4作目が製作されるだかでシリーズ復活って話がありますが、それには出演するのかな?

日本人キャストでは海外作品のイメージが強い平岳大(だって日本語より英語の方がスムーズに聞こえたもん)や芸能一家柄本家のボス 柄本明が出演。また宇野祥平や森田望智がチョイ役で出演しています。

建前という優しさ

いきなりですが私『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年公開)が大好きなんです。落ち目のハリウッド俳優がCM撮影のために東京にやって来て異国のあれやこれやを体験するソフィア・コッポラ監督作品。多少オリエンタリズム的な視点はあれど、東京らしい空虚で孤独な様相をしっかりと捉えたザ・東京映画として面白いのです。本作『レンタル・ファミリー』も同じくアメリカ人俳優が日本で過ごすという共通項があったので勝手に”これはロスト・イン・トランスレーションの再来かっ!”という期待していたところがありました。しかしちょっと違いましたね。「孤独」は一つのテーマにはなっていたかと思いますが、本作で描かれるのは建前文化だったかと思います。

主人公が働く事になるこのレンタルファミリーというのは何もフィクションの話ではありません。日本には依頼者の希望に合わせて家族や友人、恋人を代行する人材の派遣を行うサービスが実在し、こうしたビジネスモデルが成り立つのも社会的な体裁や対人関係を穏便にしようとする建前文化が根付いている事も一因だと思えます。
この本音を隠し仮の姿によって保たれる関係性や幸福が映画序盤では描かれます。しかし後半になると建前だけでは上手くいかない事も出てきます。建前という優しさを日本の美徳とするのも良いですが、時には本音で相手と向き合わないといけない時もあるというメッセージ性が感じられました。

でもさぁ、去年『爆弾』を扱った時に書きましたが、この日本らしいとされてきた建前文化はネット社会によって崩壊してきているように感じます。ネットって秘匿性がある事を良しとして、平気で他人を傷つけるような悪意ある”本音”が飛び交いますから困ったもんです。

まとめ

以上が私の見解です。

日本文化を紹介する海外向けな側面は少々あったかと思いますが、建前文化をはじめ人情や八百万の神といった現代日本が忘れつつある精神性を再確認する作品でもありました。そんな精神性を旅するブレンダン・フレイザーは良い演技をしてました。特に柄本明とのやり取りのシーンは総じて心に沁みるものがありました。お好み焼き食いたくなるわぁ~

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第326回:映画『禍々女』感想と考察

今回は現在公開中の映画『禍々女』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

お笑い芸人のゆりやんレトリィバァが監督を務めた恋愛ホラー作品。

美大生の早苗(南沙良)は、同じ学部の宏(前田旺志郎)に思いを寄せていた。しかし肝心の宏はというと別の女性の事が気になっており、早苗のことなど全く相手にしていなかった。そんな宏の身の回りで不可解な事が起き始める。それは好きになった男に憑りつく「禍禍女(まがまがおんな)」の仕業と思われるのだが…

監督のゆりやんレトリィバァは本作が映画初監督作品。アメリカに拠点を移して活動してましたよね?あれっそれは渡辺直美か?どちらも芸能活動の方向性が似ているような気がして混同してしまいますが。

主演は南沙良。存在は認識していましたが、何でお目にかかったのだろうか。調べてもピンと来なかったのですが、4月公開予定の香港映画『ROAD TO VENDETTA』がちょっと面白そうです。その他出演者の顔ぶれもなかなか揃っています。前田旺志郎、鈴木福、田中麗奈、斎藤工。そして我らが髙石あかり氏です。そりゃ本作を観に行った最大の理由は髙石氏ですよ。『ばけばけ』で魅せるのんびりした雰囲気とは違った攻撃的なヤンキー女が見られました。

そこに品はあるか?

いや、話自体はそんな悪くないんですよ。恋愛というよりは激しい嫉妬をテーマにした二転三転のあるストーリー。『呪怨』(2000年公開)を意識したであろうオムニバス形式なのも悪くないです。っていうか清水崇も本人役でゲスト出演しているのでかなり意識した作風ではあると思います。

ただ何でしょうねぇ…観ていて嫌悪感を抱いたのです。そこで考えたのがエログロ描写における「品」の問題。実は性や暴力が伴うセンシティブな描写には最低限の品が必要とされるのではないかと思います。デフォルメしてエンタメに振り切るのか色艶なんかを意識して芸術的に魅せるかは作品によりますが、見せ物として成立させるためにはある程度の格調が必須。これが無いと単なる猥雑なものと化し、観るに絶えなくなってしまうと思うのです。本作からはその品の良さがあまり感じられなかったんですよね。演出やカメラワークの問題でしょうか?セリフの途中でピー音が入るのとかは逆に下品に見えちゃったし。

それに急に始まる変な歌のミュージカルシーンは観ていて恥ずかしかった。去年の『8番出口』以来だわ、たまに遭遇する観ていて恥ずかしくなる現象は何故か邦画に多い。この奇天烈ミュージカルは芸人がステージ上やれば面白く見られるのかもしれませんが、それをそのまま映画に転用するのは決して良策ではないでしょう。コントと映画における”笑い”の表現の仕方、この辺の手腕は北野武や劇団ひとりが上手いのでしょうね。

まとめ

以上が私の見解です。

かなりクサしましたが、俳優陣は頑張っていたと思いますよ。南沙良は完全に振り切ってましたし、髙石さんも短い登場ながらもしっかり爪痕を残す演技をしていて良かったです。しかしその頑張りも何だか心苦しく感じられましたねぇ

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第325回:『考察する若者たち』という新書を読んで考えてみた件

今回は映画と少しは関係のある話を語っていきます。

最近よく目にする、耳にする「考察」というワード。物語展開を予測しながらアニメや映画といった映像作品を観る行為を示し、とりわけTVドラマにおいては”考察系ドラマ”というジャンルが確立しつつあるぐらい鑑賞スタイルの定番となりつつあります。現在放送中のTVドラマ『リブート』も誰が犯人かといった「考察合戦」がSNS上で賑わっているようなのです。ただし私、この考察ブームというものに対して違和感を覚えていました。”そんな観かたをして楽しいのだろうか?”と。こうしたモヤモヤを心に宿していたところ書店で発見したのが文芸評論家 三宅香帆による新書『考察する若者たち』。おぉなんとクリティカルなタイトル!これは私が抱える心のわだかまりを解してくれるのではないか?と手に取ってみたのでした。

というわけで今回はこの『考察する若者たち』を読んで考えた事を適当に書き連ねてみようと思います。ネタバレは多分大丈夫ですが、一応注意です。

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↑話題として取り上げる衆院選の日、東京も久しぶりに雪が積もりましたね

それは「考察」と呼べるのか?

まずこの昨今流行りの「考察」についてなぜ違和感を覚えているのかというと、物語の先行きばかりを気にしているとシーンごとの演出や演技の良し悪しを見落とし兼ねないと思っているからでした。基本的に記憶に残っている作品ってストーリーの結末がどうだったかよりも”あのシーンにテンションアガった”とか”あの俳優の表情が良かった”といった細かい部分に対する感情に付随している事が多いと思うんですよね。なので、物語展開を予想して正解かハズレたかで一喜一憂するのは正直どうでも良いのではないかと。

また「考察」と呼ばれているその鑑賞スタイル自体が果たして「考察」と呼べるのかどうかも疑問でした。私の中で「考察」とは、作り手はこの作品を通して何を伝えたいのか?背景にあるテーマは何か?といった事を自身が今まで触れてきた他の作品と照らし合わせつつ独自に読み解いていく行為であり、昨今の「考察」におけるストーリーの先読みは予測ゲームの範疇だと思っていたのです。しかし本書によると私の中で思っていた「考察」は「批評」に該当するよう。違いに関しては、

考察には「正解」がある=報われるゴールがある

批評には「正解」がない=報われるゴールがない

なるほど、確かに「正解」を求めているのであれば結末という答えに結び付くヒントを発見するための観察が必要であって、シーンごとに対する感情や独自の見解は必要ありません。何より作品を観たという行為が報われるか報われないかが重要視されているというのです。更にこの「報われ消費」は推し活やChatGPTといった現代の流行にも関わっているのではないかという話が展開されていきます。

報われるかどうかですか…私自身、一度も気にした事がなかった観点です。自分に合わない、つまらないと思った映画やドラマを観た際”これだったら他の観れば良かったじゃん、損した~”みたいな気持ちになる事はごくたまにありますが、それで鑑賞行動が報われなかったと思った事ないもんなぁ。とにかく現代人の多くは行動したぶんの「報酬」がポイントで、自分の意見や感想を持つ事以上に「報酬」が得られそうなものを選択する傾向なんですね。

「報われ消費」は選挙でも?

そして私が本書を読んでいる間には衆議院選挙が行われました。高市政権率いる自民党が歴代2位の得票数となる歴史的圧勝という結果に驚かされましたが、本書で述べられている事と準えて考えると腑に落ちる気がしました。

自分の投票した候補者が落選するなんて事があったら自身の投票という行動が報われない。だから掲げている政策内容よりも当選しそうな側の人を選んで報われようとする。こうした投票心理が働く人も居たのではないでしょうか。”サナ活”という言葉が登場したように、少なからず政治に「推し」の概念が持ち込まれている風潮なので、アイドルの総選挙感覚だった人も居たのかもしれません。

また、AIのアルゴリズムが提供してくる情報によって”界隈化”しているがために、自身の政治的な意見や価値観はぼんやりとしかなく、"どうやら高市政権は支持率が高いらしい"という何となくの流れに便乗する事が「最適解」だと考えた人も多かったのではと推測ができます。まぁ台湾有事の発言やおこめ券、憲法改正の問題等々に真面目に向き合うよりマジョリティっぽい方に染まってしまうのが楽ですから。

今やこの「報われるか報われないか」はエンタメ消費のスタイルのみならず社会そのものに影響を与えているのかもしれません。非常に危うい状況だと思いますね。

まとめ

では「報われ消費」が社会に広がり、それにマッチしたAIのアルゴリズムによって意見や個性がカテゴライズ化される中、どうすれば「自分らしさ」を維持出来るのか?

それはマイノリティになる事を恐れないに尽きるんだと思います。周りと意見や感想が異なっても良いんですよ。例え同じ意見持つ人が周囲に居なくても、世の中のどっかには多分居るだろうと思える心の余裕こそが鍵なのかもしれません。よっしゃ!俺も「最適化」に抗ってやる!いや、それはもう充分かも、寧ろ社会にチューニングしていく努力しないとダメかもなぁ…

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第324回:映画『ランニング・マン』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ランニング・マン』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

スティーブン・キングが1982年に発表した同名小説の映画化。映画化自体はアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『バトルランナー』(1987年公開)から2度目となります。

舞台は富裕層と貧困層の格差が決定的で社会が分断した近未来。ベン・リチャーズ(グレン・パウエル)は、幼い娘の医療費を稼ぐため再就職先を探していた。しかしその強い正義感と反骨心により国から要注意人物に指定をされているため、どこも雇ってくれない。そこで彼は、優勝者に巨額の賞金が与えられるリアリティーショー番組「ランニング・マン」への参加を決意する。その番組は、社会を支配する巨大ネットワーク企業が放送するもので、30日間の命を懸けた逃走劇を繰り広げるデスゲームであった。

監督はエドガー・ライト。英国が誇る天才監督ですね。『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010年公開)や『ベイビー・ドライバー』(2017年公開)、『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』(2021年公開)とオモロい映画しか撮ってないのでは?そう考えるとやはり幻の企画となったライト版『アントマン』は観てみたいですね。

主演は”グレパ”ことグレン・パウエル。『トップガン マーベリック』(2022年公開)で一躍注目を集め、今やオースティン・バトラーと並ぶハリウッドの若手スターといったところでしょう。『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』(2014年公開)でエレベーターダクトを登っていたのが懐かしく感じます。そして現在もリマスター版が公開中でまことしやかにブームとなっている『落下の王国』(2008年公開)の主演であるリー・ペイスも出演しているので、この二人目当てで観行く方も結構多いのでは?個人的には『コーダ あいのうた』(2021年公開)のエミリア・ジョーンズが出演してのが嬉しいポイントでした。

スカーフ代よりも薬代を

想像していた以上にシリアスな作品に感じました。シュワ主演の87年度版は楽天的でバカっぽいノリの映画のため、それをエドガー・ライトが調理するとなればオタク趣味全開の痛快エンタメ作品になるかと思っていましたが、そんな雰囲気は鳴りを潜めていました。初っ端から病気の幼い子供を抱えたグレパが再就職を嘆願する様からスタート。病を治すための薬代すら厳しい生活を強いられているのです。87年度版だとヘリコプター内での殴り合いスタートですからね。全く毛色が違います。

それもそのはず民間組織の武装集団が好き放題銃を乱射したり情報の捏造やフェイクニュースが横行したりする描写は、今まさしく米国で起きているような事ばかり。キングの書いたSF小説に悪い意味で時代が追いつてしまった事を意味するのではと思うと、何だかいたたまれない気持ちになってきます。いや、だからこその再映画化だったのかもしれませんね。2024年に「グラディエーター」の続編があったのと同じで“ヒーロー”が求められいるんだろうなと。社会に対してくだらないTV番組やスカーフといった道楽よりも薬というライフラインを充実させろと正々堂々と訴える事ができる”ヒーロー”が。

まとめ

以上が私の見解です。

かたっ苦しいテンション低めな見解となりましたが、観てる間は充分楽しめました。中盤のアパート内での追走劇シーンなんかは流石ライト監督、手堅い。追跡ドローンのカメラをとっ捕まえて「俺を取ってんじゃねーよ!」の凄みも良かったです。っていうかグレパの走り方が完全にトム・クルーズだったのは笑った。あの無駄に躍動感のある走り方が若手に引き継がれるなんてもはや伝統芸能ですね。

そして伝統といえば戸田奈津子の奥義「おっ死ぬ」の連発ですよ。どこかの方言なのかな?だとしても翻訳で使うワードではないよな。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第323回:映画『恋愛裁判』感想と考察

今回は現在公開中の映画『恋愛裁判』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

実際にあった裁判事例(男性ファンと交際した女性アイドルが所属事務所から損害賠償を受けた)から着想を得たというドラマ作品。

人気上昇中のアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」でセンターを務める山岡真衣(齊藤京子)は、幼馴染のパントマイムで日銭を稼ぐ間山敬(倉悠貴)と偶然再会する。次第に惹かれ合っていくものの、アイドル文化特有の暗黙の了解とされている「アイドルの恋愛禁止」が二人の進展を遮る。そんな中、メンバーが起こした騒動をきっかけにある事件が発生する。

監督は深田晃司。名前は良く目にするのですが、私が観たことある作品は2022年の『LOVE LIFE』ぐらいですね。カンヌに出展していた『淵に立つ』(2016年公開)とか観なくちゃな。

主演は齊藤京子。この方は日向坂46でアイドル活動をされ2024年にグループは卒業されているよう。TVドラマには色々出演してるみたいですけど、お初にお目にかかりますですね。いや「千鳥の鬼レンチャン」のサビカラオケで結構良い成績残してましたよね?歌上手いんだと思った覚えがあります。逆に相手役となる倉悠貴はちょくちょく目にしている気がします。『窓辺にて』(2022年公開)や『N号棟』(2022年公開)とか。で、この方をいつも見る度に若い頃の山田孝之に似てると思い、心の中で”ジェネリック孝之”とお呼びしているのですが…いや似てないかw

”推し”の心理は分からないけど

細身のメガネという風体からか「アイドル好きそう」なんて言われた事もある私ですが…申し訳ない、昔からその方面は明るくありません。最近のフルーツなのかキャンディーなのか全く区別が出来ない!それにどのグループもK-POP系の踊りが上手いだの清楚系だとかコンセプトが被ってんじゃねーか!分かるかっ!はい、これ以上は止めましょう。敵を作りかねないぞ。

こんな感じな人間のため、いわゆる”推し”という心理もいまいちよく分かりません。劇中にも目当てのアイドルと握手をするために同じCDを何十枚も買うオタクさんが登場していましたが、そこまでしないと満たされないのかと驚かされます。こうしたジャパニーズアイドル特有の文化の中でも代表的といっていい暗黙のルールが本作のテーマでもある”アイドルの恋愛禁止”でしょう。俳優やモデルといった同じ芸能活動している職業にはないルール。更に言えばこれは女性アイドルだけに課せられているようなものであり、男性アイドルに対してはそこまで要求されてる条件ではないというのも常々矛盾に思うところ。いつ誰がこんな枷を設けたのでしょうか?

って何だか社会問題を扱った路線になりそうだけど違う、そうじゃない。作品で描かれているのは、問題を提起する社会派ドラマというよりは一人の女性が人生を選択していく様だったと思います。タイトルにある裁判はシーンとしての尺自体が短めでしたし、それ以上に後悔のない決断をしようとする姿が抑えめな演出ながらも力強く描写されていました。社会の矛盾や不公平は数多ありますが、それらを目の前にした時に自分はどうするのか?どう生きたいのか?そんな事も頭に過ります。

まとめ

以上が私の見解です。

主人公の山岡さんとそのお相手の間山さんの距離感が良かったですね。近くて遠い存在を感じさせるポジショニングのシーンが多く、特にファン向けのライブ配信を行っている山岡さんの傍で間山さんが壁を表現するパントマイムをやるシーンは胸に迫るものがありました。

あっ同じCDを何十枚も買う行為で思い出した。私も『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のBlu-rayを複数持ってるじゃないですか。通常版、モノクロ版、4K版と色々違うから仕方ないんだよ。しかしファンでもない人からすると明らかに常軌を逸しているでしょう。寧ろ今の時代に円盤を所持している事自体が異質かもしれない。つまりジャンルが違えど同じ釜の飯を食う人間でしたねw

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。




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