◎手元に朝日新聞の7月24日付けの夕刊の記事があります。日本人ピアニストの角野隼斗(すみのはやと)とフランス人ピアニストのジャンマルク・ルイサダの写真があって、「子弟の旋律 互い照らす」というタイトルで12月の共演を案内する記事でした。
ルイサダさんは、スタニスラフ・ブーニンさんが覇者となった1985年のショパンコンクールで4位の小山美知恵さんに次いで5位になり、そのユニークな風貌のルイサダを私もNHKの番組で見てよく覚えています。1958年、チュニジア生まれで2歳からフランス移住とか。私は、ある年、ブーニンのチケットが入手できず、代わりに京都のホールでルイサダのピアノを聴いたことがありました。
角野隼斗さんは、今年5月のNHKの番組で知ったピアニストです。華奢な感じで風貌がどこかショパンに似ています。東大卒のピアニストという変わった経歴です。年齢は…30歳になったばかりですね。(写真はネットより)

略歴
1995年7月14日、千葉県八千代市生まれ。家のリビングにあるグランドピアノに、物心ついた頃から触れていた。3歳からピアノ講師である母・角野美智子の指導を受け始め、6歳から金子勝子に師事。9歳時のテレビ出演において絶対音感、小学2年時点で作曲能力を有している「天才音楽家」として紹介された。
千葉県八千代市の中学受験をする児童がほとんどいない公立小学校から受験をして、開成中学校に合格。入試時の算数は満点と推定される(通っていた塾による採点)。開成高等学校から東京大学理科一類に現役合格。大学では、「東大ピアノの会」(クラシックピアノを弾くサークル)と「東大POMP」(バンドサークル)に所属。
東京大学3年次に工学部計数工学科数理情報工学コースに進学し、音声情報処理(特に音源分離)の手法について研究。東京大学大学院進学後は情報理工学系研究科創造情報学専攻にて機械学習を用いた自動採譜と自動編曲について研究。
2018年8月のピティナ・ピアノコンペティション(PTNA/ピティナ)特に、恩師金子勝子の強い勧めもあって、挑戦。卒業後の就職を考え、インターンシップをしながらタイトなスケジュールで猛練習をこなし、特級グランプリを受賞。音響工学研究者より音楽家になる決意を固め、コンサートピアニストとして活動を始める。
2018年9月より半年間、東大研究室の教授推薦により、フランス音響音楽研究所 (IRCAM) に留学し、音楽情報処理の研究に従事。
2019年に東大POMPの先輩らと男女混成6人のシティソウルバンド「Penthouse」を結成し、Cateen名義でPf.(ピアノ/キーボード)を担当。
2020年3月、在学中のピティナ特級グランプリ受賞・国内外でのピアニストとしての活躍が評価され、課外活動の分野で(成績も加味される)東京大学総長大賞を受賞[5]し、大学院(修士課程)を修了。
2024年3月、ソニー・クラシカルと契約。世界デビュー・アルバム『Human Universe』を10月30日にリリースした。
◎この朝日新聞の記事は二人の出会いから始まっているのですが、「小津映画からレッスン あふれる表現する喜び」という小見出しにもあるようにメインは映画の話題なのです。映画に関わる箇所を抜き出してみます:
映画を愛するルイサダは、ショパンのバラード第2晩のレッスンで、「小津安二郎の『東京物語』を観なさい」と角野に助言したことがある。「小津は当代最高の映画監督です。あれだけ動きも飾りもない画面で、人間の根源的な痛みや残酷な本質を、ほんのわずかなカメラの動きで伝えることができる。同じことが、角野くんならできるはずだと思ったのです」
角野は「カメラワークをミニマルにすることで、それぞれの人物が生きてくる。映画を観てからは、何かを表現しようとするのではなくシンプルに、ピュアに音楽を届ける事を意識するようになりました」。
やはり、二人の出会いも引用です:
出会いは2018年。パリ留学中の角野がルイサダのリサイタルを訪れた。「とぎすまされたピアニシモと、音と音の間(あわい)が作るふわっとした空気」に心を奪われ、会いに行った。
ルイサダもまた「どんなに美しい音を鳴らしていても、決して楽曲のフォルムを乱さない」角野に強い印象を受けた。「常に心を開き、新しい世界に出会うたび素直に感動し、『いいな』と自分の音楽の中に取り込み、自分なりの色を与えることができる。アカデミックな道を外れることすら恐れない。誰も歩んだことのない道へ、角野君は一歩を踏み出している」
そして二人とショパンコンクールとの関係も:
4年前に出場したショパン国際ピアノコンクールで、角野はファイナルに進めなかった。ルイサダもかつて同じコンクールに2度出場し、1度目の「失敗」に深く傷ついた経験がある。「彼が予選で弾いた葬送ソナタは震えるような名演でした。多くの出場者がショパンの本来の意図からかけ離れた派手な演奏を繰り出すなかで、とりわけ光を放っていた。お客様も、そしてきっとショパンも、角野くんの素晴らしさに胸を打たれたはずです。それでもう充分でしょう」
そして、角野に語りかけた。
「君は、自分の全てを捧げることから何かを創造する。君には自然な寛容さが備わっている。才気のある人が純粋であり続けるのはとても難しい。でも、君にはそれができている」

(↑ネットの写真より)
最近、ルイサダさんの姿をテレビで見たのは、NHKがブーニンさんを新たに取り上げた番組の中でした。遺伝性の糖尿病で左足首の壊死部分を切除して神経を繋ぐという手術で演奏家として再起を図るドキュメンタリーの中で、ルイサダさんがブーニン夫妻宅を訪れるシーンがありました。ブーニンさんとルイサダさんの二人の交流!!
ルイサダさんは、1985年のショパンコンクールを切っ掛けにクラシック音楽に初めて触れた私の忘れられないピアニストの一人です。
5月に、何となく、録画したNHKの角野隼斗さんのピアノでしたが、懐かしい1985年のショパンコンクールの思い出に繋がるピアニストだったとは、とても嬉しい繋がりです。ところで、今年は2025年。5年ごとのショパンコンクール開催の年なんですね。日本人ピアニストの活躍も期待したいところです。