『教皇選挙』を見た。最高。ものすごく感動したし、それ以上に圧倒された。よくぞこの重厚なテーマに正面から向き合い、社会性と普遍性のある現実と地続きの物語として完成させたものだと思う。
名シーンしかない映画だけど、個人的には、割れた窓から鳥のさえずりが聞こえてきて、それを合図にしたかのように、枢機卿たちが一斉に投票用紙に記入を始めるシーンが白眉。彼らは聖霊の声を聞いたのだ(鳥は聖霊の象徴とされることが多い)。
最高のタイミングで突っ込まれるサプライズが、内輪の派閥争いに陥りかけた枢機卿たちに「現実」を突きつけるのもよかった。あれもまた聖霊の働きという解釈ができるだろうか。現代のキリスト教における聖霊とはなにかを考えるうえでも非常に良い映画だった。
もう一つ。昔のスキャンダルを暴かれて、それでもまだ野心を捨てきれない男に対して「あなたは善人だ」と断言する場面もかなりいい。罪と赦しの宗教が、明らかに善人とは言い切れない人物に対して、彼の善性を信じることで回心を促す名場面だと思う。
この映画のテーマの一つは、ローレンス枢機卿の最初の説教にあった確信の罪を恐れるということだろう。キリストでさえ「神よ、神よ、なぜ私を見捨てるのか」と、神の行いに対して最後まで確信を持たなかった。しかし登場人物たちは、われこそが次の教皇にふさわしいという確信を得て脱落していく。最後まで確信を持てずに迷い続けられた者の前に神の使いのような人物が現れる。
最後に明かされる彼の特徴は、多分に社会的な視点から挿入された要素だと思うけれども、もしかするとこれによって、彼を天使のような人物として描こうとしたのかもしれない。名前を英語にするとイノセントだし。
音がまたすごく良くて、弦楽器の重低音がとても印象的。映画予告編によくあるドーンが好きな人にとってはたまらない映画だと思う。このためにも映画館で見るべき。
みんなもコンクラーベでコン泣きしよう