高嶋雄哉-青い砂漠のエチカを読む。AR、VR、XR を使った小説。それぞれ単体をモチーフとして使う小説はあるのかもだが三つを重ね合わせるというのは結構面白かった。祖母の遺言を辿ってアバターと拡張現実(現実に仮想空間を重ね合わせる)を旅する章が良くて、アバター側のエチカはVRを介してARにアクセスしていて主人公はそもそもエチカを直接会ったことが一度しかないという状況もその構造だけで物語になっている。ただ、それ以上のなにかというところまでは行けていない気もしてもっとぶっ飛んだ話に辿り着ければ傑作になったかも知れない気配があった。主人公二人だけにアクセスが許された改良版のアバターとか色々使えそうなギミックはあったのだが。
とある動画で二重スリットの話をやっていてチラッと見たら結構適当な解説をしていて、自分も混乱してきたので昔買った量子もつれの専門書を読み返す。重ね合わせ状態にある量子を観測するかどうか、というところは思考実験の罠というか、実際は見る瞬間にも量子への干渉があるわけで位置の確定が起こるのだから、観測前、後で状態が変わるのはまあそうだろうと今の思考だと納得できる(これもまた覆るのかもしれないが)
その動画では他にも特定の漫画とか作家を紹介するものもあったりして流し見していたのだが、よくある伏線回収が素晴らしいみたいな話に帰着してるものが多くて、なんだかなと思った。長期漫画において最初の方の段階で物語の根幹に関わるような演出、暗喩、セリフが提示されてそれが後々に回収される、それを他の解説者が大ごとのように絶賛するという構図は結構痛々しくて(これは作者が悪いわけではないけど)それを見て、その作品が素晴らしいと結論つけられてしまう風潮はちょっと現実主義的すぎないかと思う。
世界が既に閉じていて、物語も作者の中ですべてコントロールされている状態にあって、あとはそのなかでいかに演出していくかという考え方だと思う。
それとは違い、例えば浦沢直樹とかを読むとほとんど思いつきみたいなシーンを先に提示してそこに至るために他の物語を繋いだり、村上春樹のように先を決めずに紡いだプロットを全て描き切った時点で章を入れ替えたりする手法の方が自分としては開いていると感じる。
二重スリット問題において、ある粒子が波であるか粒であるかどちらか決定されていない状態が作品の物語とすると、観測側に作者が立つのか、それとも重ね合わせ状態が決定した後の状態を複数持ってそれをどう並べるか(編集するか)という位置に作者が立つのかという違い。
読者は観測者なわけだから、後者の場合読者の背後に作者がいるのだからある意味作者が神様のように見えてしまうのはわからなくはない。でもそれだと神ではない作者の閉じた世界をただ娯楽として享受しているだけだ。(別にそれでもいいのだけれど)
前者の場合、読者と作者は同じ世界に立っていて同じように物語を観測するのだから、"現実"の世界の根幹を変えるような何かになる"可能性がある"という意味において開いているのだと思う。
久々にツァイミンリャンの楽日を観る。傑作。映画館が上映される時間の後ろで進行する何も起こらない話。それでもこんなに楽しく見れてしまうのは自分がそういう裏側の話が好きというのもあるけど(成瀬巳喜男の流れるとか)、画面というか映画館の構造の面白さ、映画を見る側(観客)、見せる側(映画館のスタッフ側)が映画から見かえされるような物語の素晴らしさ。そして画面いっぱいに投影される映画の像のよこからいきなり扉が開いて受付嬢(現実)が現れるあのシーン。楽日自体も映画ではあるのだが、映画の中で映画が進行し、その裏としてある映画(楽日)と映画内映画があんなにも完璧にワンシーンに落とし込まれることに感動する。そしてあのシーンはどちらも目線は同じ方向を向いており映画と映画は見つめあっていない。(受付嬢は映画の画面としては鑑賞者の対面に現れ、映画内映画も対面にある。)
自分はなぜこんなに映画館がモチーフの映画が好きなのだろうか。タランティーノのイングロリアスバスターズとか最高でラストの映画館のシーンだけを何回も見ている。ヒッチコックで映画館のシーンがあるのは知りすぎていた男だっけ?
機材の話。
king krule的な揺らぎを出したくてここ数週間色々とビブラートを探っていた。lofi-junkyの音が一番近いのだがあれはコンプレッサーの機能も自動で入るのとlofi的な音にするためにホワイトノイズが出るらしいので今のdynaコンプを入れたボードだとノイズが大変なことになりそうで諦める。それで、そもそもコーラスとリバーブはそれぞれ良いエフェクターを持ってるのでそれと合わせて使うビブラートで良いのではという結論に達して、一番安いアニマルペダルのコーラスを購入。これはコーラスという名前だけど完全にビブラートでドンピシャの音になる。届いたエフェクターの個体がちょっとスイッチのメカ部が壊れていて一回返品したのだけど音としては良いので戻ったらこの設定で行きたいと思う。それとアニマルペダルは前々から気になっていて小さくて安いので音はそんな良くないのかなと思ってたけど、今回実際使ってかなり良かったのでついでにスプリングリバーブも購入した。なんかボードが可愛い感じになってきてしまった。