
原題は「Kung-Fu Master!」ですが
「ベスト・キッド」のように、カンフー師匠に少年が弟子入りして
修業に励むというものではなく(笑)
(日本では「スパルタンX」という名称の)アクションゲームで
物語は40歳になるシングルマザーが
14歳になる「カンフー・マスター」に夢中な長女の同級生と
恋に落ちてしまうというもの

36歳の主婦が13歳の少年と性的関係を持った(実話に基づく)
アメリカ映画の「メイ・ディセンバー ゆれる真実」(2023)は
かなり後味は悪いものでしたが
こちらは、年の差という恋愛のハンデより
ただ恋に落ちて、一緒にいたいという気持ちが強くなっていくという
純粋な気持ちを描いていて、切ないけどカラッとしている
そこにエイズの予防キャンペーンのような話が絡まってきます

AIDS(フランス語ではSIDA)といえば
1981年にアメリカのロサンゼルスで男性同性愛者5名が発症
その後も男性同性愛者の発生が多く報告され
AIDSはゲイ(または麻薬静注者や輸血の受血者)の病気だと
思われていました
そしてこの頃、監督のアニエス・ヴァルダは
夫のジャック・ドゥミとヨリを戻し、献身的に介護していたんですね

つまり、世間から認められない相手との愛を貫くということは
代償や不自由性がつきまとうということ
その覚悟はありますか?と
アニエスは訴えたかったんじゃないかな

シングルマザーのメアリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は
娘のルーシー(シャルロット・ゲンズブール)の15歳の誕生パーティで
飲み過ぎてしまったジュリアン(マチュー・ドゥミ)が苦しんでいる姿を見て
(日本でいえば中三が、フランスではこんなに自由に酒を飲み煙草を吸えるのか)
トイレで彼の口に指を入れて吐かせてあげます
気分が回復したジュリアンは
メアリー・ジェーンがルーシーの幼い妹ルーを寝かしつけているのを見て
メアリー・ジェーンに(母性を感じて?)熱い眼差しを送ります
メアリー・ジェーンも思いがけずジュリアンにときめいてしまい
もういちど会いたいと思うようになります
ルーシーのお迎えを装い、下校時の学校の前を車でウロウロする(笑)
偶然にもメアリー・ジェーンの車の前にジュリアンが突然現れ
ジュリアンを轢きそうになったメアリー・ジェーンは
ジュリアンが無事かどうか確かめることを口実にカフェに連れて行くと
そこでジュリアンは「カンフー・マスター」というゲームがお気に入りだと遊び
なかなかクリアできないことをメアリー・ジェーンに説明します
それからというもの、ジュリアンに会いたいメアリー・ジェーンは
「カンフー・マスター」の置いてある店に行っては、ジュリアンを探していると
なんとジュリアンのほうからメアリー・ジェーンの家に来てくれます
両親は仕事でアフリカに滞在しているというジュリアンは
メアリー・ジェーンの家事や買い物を手伝ってくれたうえ
メアリー・ジェーンの手にキスをします
学校では、ジュリアンとルーシーが同じ課題に取り組むことになり
ジュリアンの熱心さに(彼は頭も成績もいいようだ)
自分に気があるのではないかと思い込んでしまうルーシー

ある日、ルーシーからジュリアンが体調を崩し
学校を休んでいる話を聞いたメアリー・ジェーンは
宿題を渡すという言い訳を作り、ジュリアンが世話になっている家を訪れます
その後ジュリアンは叔父が経営しているというホテルにメアリー・ジェーン誘い
キスをすると逃げ出しまうメアリー・ジェーン
(好きな男の子の前では、中年女子も乙女になっちゃうのね)

ルーシーが休暇中に祖父母のいるイギリスに行くこと知ったジュリアンは
自分も一緒に行きたいと告げ、ルーシーは歓迎します
イースターの日、メリー・ジェーンが卵を隠しているときジュリアンは彼女を驚し
ふたりがキスをしているところを目撃したルーシーはショックを受けてしまいます
メアリー・ジェーンが母親にルーシーのことを相談すると
母親はジュリアンと末娘のルーだけを連れて(家族の所有する)離島に行き
ジュリアンとの関係を見つめなおしてはどうかと勧めます
ふたりは島で永遠の愛を告白しますが、それ以上(性的な関係)は求めあわない
(エイズキャンペーンのチラシをボトルに入れて海に流すジュリアン)

島から戻った後、メアリー・ジェーンはジュリアンの母親から告訴すると脅されたうえ
ジュリアンは転校させられ会うことが出来なくなってしまいます
さらにルーシーの親権も父親に奪われてしまいます
(でもルーシーが母親と和解できたことはよかった)
ジュリアンは「カンフーマスター」でついに恋人を救出
そのことをメアリー・ジェーンに伝えるため
ゲームセンターの従業員に電話で伝言を頼みますが
しかし電話に出たのがルーだったため、従業員は電話を切ってしまいます

メアリー・ジェーンとの連絡が途絶えたジュリアンは
新しい学校で男友達に「彼女がいたことがあるか」尋ねられると
「退屈な主婦と寝ただけ」と言い、虚勢を張ってみせたのでした
【解説】映画.COMより
ヌーベルバーグ左岸派の巨匠アニエス・バルダが、プライベートでも親交のあったジェーン・バーキンとその家族をキャストに迎えて手がけたラブストーリー。
40歳のマリー・ジェーンは娘ルシーが自宅の庭で開いたパーティで、泥酔した娘の同級生ジュリアンを介抱し、まだ15歳の彼に恋愛感情を抱いてしまう。ジュリアンもまたマリー・ジェーンに心ひかれ、2人は微妙な力関係のなかで密会を重ねる。ある日、2人がキスしているところをルシーに見られてしまい……。
バーキンの発案にバルダ監督が応じる形で実現した企画で、バーキンのパリの自宅とロンドンの実家で撮影。バーキンの次女シャルロット・ゲンズブールがルシー役を務めたほか、三女ルー・ドワイヨン、兄アンドリュー・バーキン、実の両親など家族が総出演し、ジュリアン役にはバルダ監督と夫ジャック・ドゥミの息子マチュー・ドゥミを起用。本作の制作の延長上で「アニエス V.によるジェーン B.」が撮影された。タイトルの「カンフーマスター!」は、劇中でジュリアンが夢中になっているゲームの名称。2024年8月、バーキンさんの没後1年の追悼上映企画「ジェーン B.とアニエス V. 二人の時間、二人の映画。」にて、デジタルレストア・新訳日本語字幕版でリバイバル上映。
1988年製作/88分/PG12/フランス
原題または英題:Kung-Fu Master!
配給:リアリーライクフィルムズ