
「戦争は心の中でのみ行うべきものだ」
原題は「Conclave」 (鍵をかけた、という意)
原作はロバート・ハリスが2016年に発表した同名小説
監督はドイツ出身のエドワード・バーガー
「西部戦線異状なし」(2022) も素晴らしかったですが
アカデミー賞では両作品とも監督賞にノミネートされないという理不尽さ(笑)
「2人のローマ教皇」(2019)でも描かれていましたが
「面白さ」ではこちらのほうが上
脚色が「裏切りのサーカス」(2011)のピーター・ストローハン
といえばわかりやすい(笑)

さらにローマ・カトリック教会の
フランシスコ教皇(88)が死去したニュースを受け
平日にもかかわらず劇場は満席に近い状態でした
聖職者であるがための責務、あるべき姿とはなにか
スピーチがいかに人間の心を掴むのに大切であるか
心を揺さぶる「言霊」がビシバシと伝わってきます
【観覧注意:ここからネタバレが含まれています】

映画は教皇が心臓発作で亡くなったという知らせで始まります
そこから教皇のご遺体を運ぶまでの一連の儀式から
いっきに「コンクラーベ」前日に向かいます
ナイジェリア出身で初のアフリカ系教皇になるかも知れないアデイエミ枢機卿
イタリア人で何より伝統主義を重んじるテデスコ枢機卿の4人

「コンクラーベ」で投票を行う枢機卿たちは、新しい教皇が決まるまでの間
そうなる前に煙草を大量に吹かしたり、スマホをいじったりしているのが
枢機卿とはいえただのオッサン(笑)

ローレンスに打ち明けます
ローレンスがトレンブレイにそのことを確認すると
トレンブレイはウォズニアックの酒癖の悪さのせいだと疑惑を否定します

ベリーニは教皇になりたくもないし器でもないが
テデスコが教皇になるのだけは防ぎたい
支持者たちに自分のリベラルな考えを理解してもらうよう頼みます
テデスコは反リベラル派で、教皇にはイタリア人がなるべきという考えの持ち主
人種や(本来はラテン語を使うべきなのに)言語の自由にも寛容ではありません
黒人のアデイエミが教皇になるなどありえない

しかしテデスコの意に反してアデイエミは
アフリカ系の枢機卿から鉄板の支持を得ていました
そこに第5の候補者、アフガニスタンのカブールから来た
前教皇がペクトーレ(カトリック教会における秘密の行動や決定)で
枢機卿に任命していたヴィンセント・ベニテス大司教が到着します

しかし各国の戦地で布教活動を勤めてきたベニテスの経歴も
前教皇が発行した書類も確かなもの
いくら疑わしく思っても、歓迎し受け入れるしかありません

レイフ・ファインズの演技が逸品で(笑)
どこまでが本音か建前かが全くわからない
罠を仕掛けようとしているのではないか
それは新教皇候補メンバーだけではなく
見ている私たちまで惑わすのです

そしてなぜこの映画が「教皇選挙」という
特殊なテーマであるにもかかわらず共感を得てしまうのか
それは立場こそ違えど私たちの仕事や人間関係と変わりないから
学校なんかでのイジメもそうですね
なにがきっかけでいつハメられるか陥れられるかわからない
そんな中でも自分の信念を貫くことの難しさ
キリストでさえ最期は神を疑い嘆いたと
「Eli, Eli, Lema Sabachthani?」(神よ、なぜ私を見捨てたのですか?)

私はキリスト教がなかったら
世界はもっと平和だったのではないかという考えの持ち主ですが
聖書のなかに素晴らしい言葉が多いことは認めます

「コンクラーベ」初日、アデイエミが最多票を集めますが
2日目の昼食のとき、ナイジェリアから赴任したばかりの
シスターシャヌミがアデイエミと対立
疑問を抱いたローレンスはシスターシャヌミに会いに行くと
シャヌミはかってアデイエミと不法な関係を持っていたことを告白します

ローレンスはアデイエミに教皇候補から降りるよう促し
さらにシスターシャヌミを呼び寄せたのはトレンブレイだったことがわかり

残る候補はベリーニ、テデスコ、ベニテス
そこにローレンスに票が集まるようになり
票の伸びないベリーニとベニテスはローレンスに投票することを約束します
3日目、ついにローレンスとテデスコのどちらかで決まるかと思われたとき
それは神の啓示か、テロの爆破が会場を襲います

カトリック教会のあり方に悩み、教皇に辞職を申し出ていたものの
リベラルな傾向を持つため、ベリーニを支持していたものの
ベリーニや他の教皇候補者からは野心家と見抜かれている
アルド・ベリーニ枢機卿(スタンリー・トゥッチ)

アメリカ出身のリベラル派で、前教皇とは職域を超えた友人でもあった
新聞では次期教皇の最有力候補と報じられたものの
「コンクラーベ」では他の候補と大きく差を開けられてしまう

コテコテの保守派にして伝統主義者
前教皇の施策や改革の反対者と知られている
保守派からの支持は強く
約40年ぶりのイタリア人教皇になることに意欲を示している
アデイエミ枢機卿(ルシアン・ムサマティ)

ナイジェリア出身で史上初アフリカ系教皇の座を期待された人物
「コンクラーベ」で最も優位であったにも係わらず
30年前関係したシスター・シャヌミが突然給士として現われ
失脚を余儀なくされてしまう

カナダの穏健保守派、伝統主義者
前教皇の反対者であったが、真面目でスキャンダルとは無縁のため
保守派からの支持は高い
アデイエミを陥れるためシスターシャヌミをバチカン呼び寄せた張本人だと
(前教皇に頼まれたという言い訳を聞き入れてもらえず)
シスター・アグネスから「ユダ」と罵られ教皇への道を閉ざされてしまう

メキシコ出身の大司教
アフガニスタンをはじめとする各国の紛争や戦争のさ中
教会の勢力がない地域でも奉仕を行ってきた功績が評価され
教皇によって枢機卿に任命されたもののその存在は知られていなかった
「コンクラーベ」での醜い票争いに嫌気がさしている
- モンシニョール/レイモンド・オマリー(ブライアン・F・オバーン)
-
モンシニョールとはカトリック教会の司祭の敬称のひとつで高位聖職者
- ローレンスの助手で、教会統治や教会内外の(反対派の)調査に携る
- 前教皇がベニテスをジュネーブに飛ばすために支払った医療予約を
- キャンセルしていたことを発見する
シスター・アグネス (イザベラ・ロッセリーニ)

「コンクラーベ」でのシスター長で主任ケータリング兼家政婦
シスター(女性労働者)への尽力や感謝の言葉を忘れない
ローレンスのことを支持している
シスター・シャヌミ

19歳のとき当時30歳だったアデイエミと関係を持ち
子どもを儲けていた(子どもは養子に出される)
30年ぶりにアデイエミと再会しトラブルになる
ラスト、宮殿に現れた亀をローレンスが池に帰したことで
黒幕は亡くなった前教皇だったことがわかります
ローレンス管理者としての使命を受けたのも
ベリーニが前教皇が「チェスの名手で8手先まで駒を読むことができた」
と言っていた意味も
すべてベニデスを教皇にするためのシナリオだったのです

自ら(盲腸の手術でわかった)両性具有であることを打ち明けたベニテスに
ローレンスは教皇名を訪ね、ベニテスは「インノケンティウス」と答えます
(ラテン語のinnocentemで、英語のinnocenct/イノセント)
そしてバチカンには、新教皇が決定した知らせの煙が上がったのでした
【解説】映画.COMより
第95回アカデミー賞で国際長編映画賞ほか4部門を受賞した「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。
全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。票が割れる中、水面下でさまざまな陰謀、差別、スキャンダルがうごめいていく。選挙を執り仕切ることとなったローレンス枢機卿は、バチカンを震撼させるある秘密を知ることとなる。
ローレンス枢機卿を「シンドラーのリスト」「イングリッシュ・ペイシェント」の名優レイフ・ファインズが演じるほか、「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチ、「スキャンダル」のジョン・リスゴー、「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニらが脇を固める。第97回アカデミー賞で作品、主演男優、助演女優、脚色など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した。
2024年製作/120分/G/アメリカ・イギリス合作
原題または英題:Conclave
配給:キノフィルムズ
