
七年に一度出現する遠州七不思議の「幻の池」
太平洋に面した遠州の桜ヶ池に棲む龍が、七年に一度、南アルプスを越えて180km離れた諏訪湖に赴くのだという。いくら龍神とはいえアルプス越えは厳しかったのか、諏訪湖に向かってまっすぐ北上する大河が穿った谷沿いのコースを愛用していたようだ。
方違(かたたがえ)の意味もあってか、スタートから65km地点、とある山の上にある窪地で龍は休憩をとっていたそうだ。その数日の間だけそこは池となり、龍が旅だつや池は消えたという。この難所を越えれば、あとは平坦な伊那谷で諏訪湖へ達する。
その山は標高848mの亀ノ甲山、大河の名は天竜川。
- 七年に一度出現する遠州七不思議の「幻の池」
- 太鼓判! これぞ正統本格派の「幻の池」
- 地形から「池の平・幻の池」の謎に迫る(NEW!)
- キター! 2020年、9年ぶりに「幻の池」が出現!?
- 2020年は二度、出現していた?!
- 「幻の池」は存在自体が「悪魔の証明」
- 幻の池の二つの伝説
- 幻の池出現の前触れ? 奇怪な音が麓まで届く
- 幻の池へのアクセス
- やっと会えた「幻の池」
- 「幻の池」は全国にどのぐらいある?【編集中】
- 「池の平」は裏切らない
- マップ
太鼓判! これぞ正統本格派の「幻の池」
正直、全国には「幻の池」なるものがけっこうあったりする。しかしそのほとんどは、池というよりはしょぼすぎて水たまりでしかなかったり、単に大雨の後にできる「雨後出現湖(シーズナルレイク)」だったり(雨が降ったらおおよそできる池なら「幻」ではない!)、幻といいつつ常在する池だったり、なんかなあ、という感じ。
「幻の池」の条件については後述するが、まず、伝説の裏付けの有無・・天竜川と諏訪湖にまつわる龍伝説ファミリーに属するここ池の平「幻の池」は申し分ない。
池といえるほどの深さと大きさ、アクセスのそこそこの難しさ(誰でも行ける公園の中とかだったら「幻」のありがたみがないし、逆にアクセスが難しすぎても誰も見ることができないので存在自体が不明となる)、さらには出現の前兆や出現による恩寵(逆に災厄も)などがあれば最高の幻の池となる。
七年に一度の周期で標高880mの亀ノ甲山の山頂近くに出現し、数日で消えてしまうという「幻の池」は、なるほど、池で龍が休憩する間だけ出現するという伝説と符号する。
「池の平(いけのたいら)」という地名もカンペキすぎる。
池は湖沼学の分類にもあてはまらない特異な形態で、そのメカニズムはまだ解明されておらず、学問的にも幻の池といえそうだ。
しかし、まずはこの目で見てみないことには・・。




地形から「池の平・幻の池」の謎に迫る(NEW!)
林道「池の平矢岳線」
航空写真で見ると、池の平を南北からはさむように新しい林道が工事で伸びてきている。この林道、稜線を走るスカイライン林道。まさか池の平もぶち抜くつもり?
南側は池の平の手前1kmまで、北側に至っては尾根二つ分、800mまで道路が迫っている!
長年、微妙な水収支バランスで7年に1度の出現となっているらしき幻の池だけに、林道を通すだけでも影響は小さくないだろう。
「池の平」の名を冠した林道だけに、どこまで計画されているのか不安になりながら現地へ。狭い山道の峠近くに林道入口があった。

入口はゲート閉鎖
徒歩や自転車でなら物理的にゲートを越えられるが、看板の文字が薄くなっていて、車両以外なら通っていいのか、いまひとつ分からない。

北側からの全体地形(空撮 / 2025年10月)
まずはヒントなしで。
池の平の場所が分かれば、かなりの池マスター。ちなみに右側の水面は天竜川の佐久間ダム湖。

地理院地図との照合
池の平はここ。Googleアースで標高を調べて見ると、池の平でいちばん低いところは680m前後となっている。


地理院地図にある深さ25mのスリバチ
上の地理院地図でわざわざ「・654」と記されているくぼみ。池の平のフラット面はだいたい標高680〜700mほどなので、このくぼみは25mほどの深さということになる。だとすれば理論上は、満水時に水深20m越えの「湖」スペック的なドン深の池が出現するということになるではないか!! 幻の池、やばすぎる。
しかし、そんな深いくぼみ、ほんとうにあるのだろうか。
ぐっと池の平に近づいた写真を見てみよう。むむむ・・。


さらにズーム

こ、これはスリバチ地形・・?
木の大きさから見て、やはり落差10m以上はありそうなスリバチ状のくぼみ。まるで火口跡のような、みごとなスリバチに見える。
地理院地図の標高「・654」地点とも一致しそう。

谷筋から水の流れを考える
写真からは「・654」地点に向かって流入する谷筋と流出の谷筋らしきものも確認され、くぼ地を浸水させるような水の流れが過去にあってもおかしくないと思った。

でも幻の池はこんなスリバチ地形ではないし
写真でも実際見た感じでも、幻の池はスリバチの底っぽさはなく、フラットな林間に薄く水がたまっている印象。ではスリバチ状の「・654」地点は何だろう?


そもそも幻の池の位置は?
あらためて池の平の全体を俯瞰し、幻の池の出現位置を特定したかったが、手持ちの情報では特定に至らず。現場の池の写真からも特定の決め手が見つからない。ただ、高さ10m以上の壁に囲まれたスリバチ地形ではなさそうに思う。



スリバチは元池か?
幻の池には21世紀に目撃されている「新池」と、時代不詳の古い「元池」の二つがあるという。位置的にも、スリバチ状のくぼ地は、消失したと思われる元池なのではないかと思いついた。
しかしながら、なぜこのような池に適した地形に水がたまらなくなり、入れ替わるように、近くの別の場所に水がたまるようになったかの理由は、まったく分からない。
2025年の調査でちょっとというか、すごく気になることがひとつ・・下の空撮写真でも分かるように、林道の開発が池の平の目前まで迫っている・・。今後、池の平を突貫して向こう側と開通させる計画なのだろうか。
クルマで行けるようになったら、幻の池と呼べるのだろうか。
いやいや、これを逆手にとればヤマビルやクマに怯えることなく、池の出現時には毎日の連続観察が可能になる?
いずれにしても、まずは満水状態の新池の正確な湛水範囲を特定をしたい。(2025年12月)


キター! 2020年、9年ぶりに「幻の池」が出現!?
(ここから過去記事です)
前回の出現から七年目となった2018年の夏場は本命と意気込んだ。毎日天気の状況を見てはチャンスをうかがった。大雨の直後を狙ったが、翌2019年もアタックはかなわなかった。
毎年、年の暮れになると今年も幻の池に会えなかったなあと思い返し、年明けに今年こそは決意を新たに。
そして2020年7月31日、ついにその日が来た。一週間ほど前に豪雨があったが、時間雨量110ミリの猛烈な雨で逆にアプローチ路が災害通行止めに。おまけに7月も終わろうとしているのに長梅雨が明けない。豪雨からすでに1週間がたっていた。

2020年は二度、出現していた?!
記録的な長梅雨と、消失タイミングの浜松豪雨
じつは幻の池に会った日の三日前(2020年7月28日)に、朝日新聞静岡版から池の出現が報じられていた。記事の中では出現時期が7月15日から21日の一週間とされていた。つまり一度は消えていたというのだ。もしこの記事を事前に読んでいたら、もちろん出発しなかっただろう。
浜松では7月22日に時間雨量110mmの豪雨が発生。幻の池へのメインアプローチ路となる国道152号が災害通行止めになるほどの豪雨だった。その後も雨は降りつづき長梅雨による作物の影響などが懸念されはじめた7月30日、やっと浜松地方で雨が上がる予報が出た。
行こう。
そのまま夜に出発すれば、睡眠時間はほとんどとれないが、翌早朝からアタックできる。ただ、アプローチ路の国道152号はいまだ通行規制が続いていた。家を出る直前に迂回ルートを確認し、眠りに落ちた町をすべりだした。
7年に1度出現する幻の池 「本当に幻想的」(朝日新聞静岡版)
遠州七不思議の一つとも言われる幻の池が、浜松市天竜区水窪町で2011年以来、9年ぶりに出現した。池ができるのは数日間で、7年に1度とも伝えられる。今年は15日から21日ごろまで現れたとみられる。
幻の池は亀の甲山の池の平に出現する。水窪観光協会によると、標高880メートルの亀の甲山の登山口から約2時間歩いたスギ・ヒノキ林の中という。普段は水がないのに、7年に1度、周囲約200メートルの大きさで水が湧き出し、日が当たると、水面にスギやヒノキが映り、幻想的な姿を見せる。御前崎市にある「桜ケ池」の竜神が長野県の諏訪湖に行く途中に休息するなどといった伝説がある。
今回、写真を撮影した張り子を扱う浜松天狗屋の坂田吉章さんは「ずっとみたいと思っていたのでうれしい。アニメに出てくるような風景で本当に幻想的だった」と興奮気味に話した。 同観光協会は「降り続く大雨が影響したのでは」としている。(和田翔太)
(朝日新聞静岡版2020年7月28日)

「幻の池」は存在自体が「悪魔の証明」
出現期間が長かった可能性
朝日新聞の記事と私の目撃を合わせると、2020年は少なくとも8月までに二度の出現があったことになる。しかし実際はそうではないだろう。言い伝えで数日から一週間ほどで消えるとされているので、「今年は15日から21日ごろまで現れたとみられる」という記事になったのではないか。というのも出現という事象は、たまたまでもその場に居合わせれば報じることはできるが、いつ消えたか、を確認するためには、出現した池を毎日観察するしか方法がない。
手軽に行ける人気の池ならば誰かしらそのタイミングを捉えることができるだろうが、ここ池の平は山歩きで往復3時間半。しかも、とんでもない伏兵が待ち構えている。
2020年は池が消失するタイミングの21日の翌日が記録的豪雨となったことから、完全に消えることなく、出現期間が二週間以上になった可能性もあるのではと考えている。

高知の山奥にある「幻の池」のケース
高知見室戸の幻の池である「池山池」に2019年1月に赴いた際も、雨の少ない真冬だというのに池が出現していて驚いたものだ。
池は里から歩いて片道三時間もかかるため、地元の人への聞き込みでも、輪番制の清掃登山以外はよほど物好きでなければ入山する人もなく、せっかく池が出現していても、それが目撃され報告される機会がほとんどない状態だった。
実際には池は予想されているよりはるかに頻繁に長期間、出現していると考えられるが、「見る」人の少なさが「幻の池」を生む構造になっていたことに気付かされた。
消えゆくのは「幻の池」の運命か
ここ数年くり返される線状豪雨とメガ台風の状況を考えると、ここ浜松の幻の池も従来の「七年に一度、一週間程度の出現」という周期は崩れはじめているのかもしれない。
出現のなかったはずの2019年も、じつは出現していたようだという地元の人の話も人伝てに聞いている。
今後は、毎年、何度も出現するようになるかもしれない。そうなれば「幻の池」なるものは消えてしまうのも、幻なるものの皮肉なところではあるが。


幻の池の二つの伝説
この池は遠州七不思議のひとつである御前崎の桜ヶ池に棲む龍神が、七年に一度、諏訪湖に遠征する途中に立ち寄る池という伝説があり、この池もまた遠州七不思議のひとつに数えられている。
ほか、高根城を追われた、おわか御前がこの山奥でついに追い詰められて討たれ、その涙が池となるという伝説もある。

幻の池出現の前触れ? 奇怪な音が麓まで届く
池が出現する前触れとして、水窪の集落にドーンという音が響き渡るという古い言い伝えもあるが、現在、この音を実際に聞いたという人は見つけることができなかった。
この音については、ブスーン、ブスーンや、ガーン、ガーンと聞こえる人もいたそうだ。
過去に幻の池の場所が変化した事実もあわせて考えると、この轟音は地下水脈の変化と関係がありそうに思う。山体の表層崩壊を伴った変化かもしれないし、そんなものがあるのか分からないが、地中で水脈を維持してきた岩盤の崩壊があれば、ブスーンといったこもった音もあるのかな、と。
なお確認できる池の出現は昭和29年以降の10回で、最後は2020年7月。2011年以来、九年ぶりの出現であった。
池の周囲は200mほどとけっこう大きく、時期は7月から10月までと出現年によって幅がある。

幻の池へのアクセス
2025年、駐車スペースができていた!
2020年の訪問時、登山口は狭い舗装林道の一角に小さな看板が立っているだけ。よって駐車スペースと呼べるようなものはなく、少し下ったところの路肩が少し広くなっている程度だった。
しかし2025年10月の再訪時には登山口のすぐ前に二、三台分の未舗装駐車スペースが整備されていた。
池までは徒歩で往路2時間30分、復路1時間30分ほど。熊、ヤマビル注意。
獲得標高630m。




1、拠点、情報収集に「塩の道 国盗り」
水窪駅近くに「塩の道 国盗り」という道の駅を小さくしたような施設があるので、初めて訪れる際は、ここを情報収集、土地勘を得るための拠点として目的地設置するといいだろう。
近くに小さなスーパーがあるがコンビニはない。登山口近くに水場はあるが、飲料に適するかは不明。
国道沿いの水窪駅近くの町中にあり、夜でもアプローチしやすい。水窪川が目の前を流れ、釣りをしたくなる場所だ。
登山案内看板に幻の池も「池の平」として出ている。



2、国道から舗装林道へ
国道152の水窪橋交差点(信号あり)から後河内川沿いの舗装林道に入る。道は狭いが400mほど進むと川を渡る小さな橋がある。この橋を渡るとすぐの左側に登山口の看板がある。

3、舗装林道から登山口へ
登山口は目印となる看板がある。看板には幻の池の写真と説明も出ている。
登山口の少し先には水場もあった。ただ飲料に適しているかは不明。
ヤマビル対策の塩のビンと、登山届ボックスもある。



4、急登から瀬踏みへ
最初は直登に近くいっきに高度を上げるので息が切れるが、道はよく整備されていて歩きやすい。
小さな沢を瀬踏みすると、斜面を斜めにゆったり登る道に。
この時、悲劇はすでに見えざる緞帳を開き、静かに足もとに忍び寄っていた。しかしそのことに気づくのは二時間後。




5、「火気厳禁」分岐に注意
右に行ったら崩落場所に出て、少し無理して岩にとっついて進もうとしたら谷に落ちそうになった。今回のアタックもここまでか、と泣く泣く泣く泣く引き返すと、分岐のところで妻が「こっちじゃないの?」
スイッチバックのように進行方向後ろに折れる道だったので気付かなかった。なぜ気付かなかったのかは、のちほど明らかになる。

6、ピンクリボンも目印に
「池の平↑」と記された標柱もところどころにあり、道を間違えていないことが確認できて心強かった。木に巻いてあるピンクリボンも目印として助かった。




7、最高点「池の平峠」を越える
ここが最高点。ここから下り道に。
幻の池は、まだもうちょっと先。

8、山肩のくぼみへ、ひたすら下り
池ができるということは、山肩のくぼんだ地形の底に降りていかねばならないということ。
そうは分かっていても、峠を越えるとすぐに池が出てきそうな雰囲気になるだけに今か今かと焦るが、足もとに「池の平 10分」の手作り標識。
まだ下るのか。


9、池に到着。看板が目印。
もう道を間違えたんじゃないかと思うぐらい下ったときに、林立する幹のあいまからチラと水面が光った。
うそうそうそうそ、と後退り。妻を待って、「出てるかも」
池は奥まっていて、特に出ていないときは分かりにくいが、登山路に幻の池の説明が記された看板と、私有地につき立入禁止の看板がある。

登山ログ(ハンディGPSより)
登山口から幻の池まで5.24km。(分岐を間違えた分と、旧池を探して歩いた分が200mほど含まれている)
獲得標高494m。
後ろに見えるのは虫除けスプレー。一本使ってしまった。


やっと会えた「幻の池」
血まみれでも、うれしい!
クツを脱ぐ、靴下を脱ぐ、ズボンも脱いで、足のあちこちに吸い付いたヤマビルを秘密警察のような執拗さで探し、ライターの火で炙り、剥がす。
妻は池を見るどころではなかったようだ。せっかく会えた幻の池なのに、池に背を向けたままスマホをかざそうともしない。
私はひたすら撮影タイミングを狙って歩きまわる。不思議なことに、この池のまわりだけには、ヤマビルがいない。九年ぶりとはいえ、ここが水没する危険な場所だと知っているかのようだった。あるいは彼らには、今この池に横たわっている龍神の姿が見えているのか。

ひたすら陽光が樹間を抜けるタイミングを待つ。
陽が差し込まなければ、写真としては池なのか森なのか分からない。写真とはそんなものだ。
やっと陽が水面に舞い降りた! と、カメラを構えると、刹那に光は輝きを失い、もとの陰鬱な林に戻る。
そんなことを馬鹿みたいに繰り返していると、ときおり無人の山中に、うわーという妻の叫び声が響く。また体のどこかに張りついたヤマビルを発見したのだろう。
くり返される気ままな木漏れ日との隠れんぼ。
しまいにはあきらめてスマホ撮影に徹することにした。一眼レフだと、どうしても、ダイヤルかズームなんかをいじりたくなる。この池は、その時間を許してくれない。今は、ただ、指一本で木漏れ日が水面に泳ぐ瞬間を捕まえることに集中する。
現地の軽トラおじさんからの貴重な情報
今回の出現はこの地方を襲った2020年7月豪雨による影響が考えられるが、じつに九年ぶりだったそうだ。
池から下山した直後に通りかかった軽トラのおじさんに「出た?」と訊かれ、「出てました!」と叫んでしまった。
おじさんの話では、満水になると池の奥側から越流があるとのことだが、池に会えた感激のあまり確認しそびれた・・。もっとも池の奥は立入禁止なので地主に許可をとる必要があるが。
もうひとつの幻の池「元池」
現在の幻の池は「新池」と呼ばれ、昔は少し離れた場所で出現していたようである。
この元池のあった場所を探してみたが、地形的に特定には至らなかった。なぜ出現場所が変わったのかも含め、興味深い。
道はこの先、すぐに廃道となる。



それは幻の池を守る門兵なのか、避けて通れぬ洗礼か
ヤマビルに気をつけよ、というのはあちこちの山に掲げられていたが、実際に見たことはなかった。
初洗礼となったのが、ここ。せっかくなので詳細な観察レポートを。
ヤマビルは木の枝など、上から獲物めがけて落ちてくるという噂を聞いていたが、この日、確認できたのはすべて地面からの移動攻撃だった。少し湿った地面であれば、土はもちろん砂利のような場所にもいた。

動くものの気配を感じると、立ち止まって首をもたげて頭をアンテナのようにフリフリし獲物の方角をスキャンする。そして確実に人のいる方にピコピコと尺取虫式歩行で移動。数メートル範囲ならば正確にこちらのいる方向を特定される。しかもけっこう早い。20秒も立ち止まっていたら、確実に取り付かれる。
被害に懲りた帰路は、ずっと自分のクツを見ながら歩き、ヒルのいない場所でときどき立ち止まってズボンや靴下の方もチェック。
それでも、いつのまにか数匹はくっついている。靴下に大きな血のにじみが数ヶ所。ひええ。
下山後、靴下を脱いでみるとナメクジのように太ったやつが、足に取り付いていた。
ライターで炙って、はがした。塩でもいいらしいと後で知った。そういうえば登山口に妙なビンがいくつか置いてあったが、果たして塩だった。
虫除けスプレーで動きを鈍らせることはできたが、あくまで早期発見のためのもので、少しでも油断すると吸い付かれている。
吸われたあとは、数時間は血がだらだら流れている。クツが血まみれ。翌日になっても靴下に血がにじんでいた。
くるぶしまわりを中心に計五ヶ所、吸われた。吸われた痕は、もぐりこまれた程度に応じて2〜5mmほどの黒い傷跡になり、消えるまで半月ほどかかったが、かゆみなどはまったくなかった。
被害のあった妻ともどもヤマビルは二度と御免、というか、なかばトラウマ。2025年からはヤマビルに加えて凶暴化した熊も新たな脅威に。とりあえずヤマビルに関しては対策として厚手の靴下とハイトのある登山靴にたっぷりと忌避剤をスプレーし、さらにゲーターを着用しようと思う。
「幻の池」は全国にどのぐらいある?【編集中】
幻の池はインフレ傾向
「幻の池」と呼ばれるもので把握しているのは全国で10湖ほど。
観光的に名付けられ、少々「幻」インフレになっている感がある。かの「モネ池」が各地に増殖しているのと同じように、中には人工の溜め池や公園内に出現したものまで「幻の池」と呼ぶものもある。
絶景インフレはしかたなしとしても、天空の池と幻の池は安易な増加を放置すれば、そのうち全国が幻の池だらけになって、検索してもどこの池なのか分からなくなりそう。新たに名付けるときは、せめて地名を付けて識別性のあるネーミングをお願いしたい。
未知の「幻の池」は、じつはけっこうある?
真の幻の池は、みずから幻とは主張してくれない。
数年に一度、登山路もない深い山の中に出現するそんな幻の池は、日本全土にけっこうな数がありそうである。というのも、山を歩いていると、雨後に池になりそうな窪地をしばしば見かける。池になった痕跡らしきものが見られることもある。言ってみれば、大きな水たまり。
しかし池の姿を捉えることは至難である。大雨の日にわざわざ、あるかないか分からない池を求めて入山する人はいないからだ。
地形からある程度のアタリをつけて航空写真でつぶさに調べることはできるが、夏場は樹木に隠されていて見えず、冬場は降雨が少なくて出現が期待薄と、ジレンマ。
それでも、まだ誰にも知られていない魅惑の幻の池は、きっとどこかにあるし、いつか誰かが発見するだろう。ロマン。
「幻の池」の条件とは
そこに幻想性がなければ、「幻の池」とはいえない。そもそも「幻」という言葉がそういう意味なのだから仕方ない。
まず、人が簡単には行けないこと。これは第一条件だろう。
雨後に現れるだけだったら、町にある調整池だって幻の池ということになる。
次に、歴史と伝説の裏打ちがあること。文化的幻想性といおうか。
現れたり消えたりが長期間にわたって持続していることの証でもある。一時的に現れただけなら、水たまりと変わるところはない。
できればそこに景観的幻想性と、出現メカニズムの謎が加われば言うことなし。
以上のシンプルな条件に照らしただけでも、富士五湖ならぬ「富士六湖」とも称され、この40年に5回しか現れていない赤池も、幻の池としてはギリギリ・・。
交通量の多い国道の橋の上から眺めることができるし、赤池がキャンプ場や釣り堀、レストハウスの名前にもなっていて、もはや幻想性という点で厳しい。
「池の平」は裏切らない
「池の平」という地名は全国で見られる。
この地名を見ると、池のあるなしにかかわらず、脳内が煮えたぎるように燃えてくる。
池と同じぐらい、あるいはそれ以上に愛する「池の平」・・この地名を持つ場所は全国各地に点在しているが、池がある場所もあればない所もある。山の上に立地し、ふつうなら池がありえないような場所に、エアーポケットのような水辺空間・・そんな予感を「池の平」という地名は期待させる。
ここ浜松の池の平以外に、同じ静岡県内の西伊豆と、富士山横の愛鷹山にも「池の平」があることを最近知った。西伊豆の池の平はGoogleアースで見た範囲では、地形は山の西側の肩にできた窪地という点で、浜松の池の平に類似している。ここに幻の池があるのかは今後、調査したい。
ほか「池の平」の地名は、新潟県妙高や同県小千谷、奈良県下北山、長野県東御、山梨県韮崎、富山県立山、山形県鶴岡にも見られる。いずれも私のハートを掻き乱す個性的な素晴らしい山池をたくわえている。
そう。「池の平」は裏切らない。
bunbun.hatenablog.com
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マップ
池の平「幻の池」池さんぽマップ
登山道が廃道になってしまった天竜川サイド(西側)から見た池の平。神々の踊り場とでも呼びたくなる奇跡のような地形。
2025年12月、ver. 2.0に更新。


ニッポン湖沼図鑑用マップ

Google マップ
マークした場所が、池の平への登山口。
