VPoE 兼 インボイス管理サービス「Bill One」のプロダクト開発責任者の大西です。Bill Oneには長らくプロダクト開発責任者として関わってきましたが、しばらく別のことをやっていました。今回2年ぶりにBill Oneを担当することになったため、「今、Bill Oneで働く魅力」をお伝えしたいです。
1. 市場を変えるプロダクト
従来の請求書SaaSは、主に「請求書を発行する」サービスが中心でした。しかし、Bill Oneは「請求書を受領する」SaaSの先駆けとして誕生し、市場そのものを創る挑戦でした。 請求書には「送られたものを受け取る」という特性があります。発行側が紙の請求書を送り続ける限り、受領側の企業がデジタル化を進めたくてもなかなか進められないという課題があり、市場全体のデジタル化が進みにくい状況でした。 Bill Oneはこの課題を解決するために、発行企業の手間を変えずにデジタル化できる仕組みを構築しました。
- 発行企業は請求書の送付先をBill One用の宛先に変更するだけ
- 郵送された紙の請求書はBill Oneが代理受領・スキャン・データ化
- メールやWebで送付された請求書もクラウド上で一元管理
2020年5月のローンチ当時、Bill Oneのコンセプトは「あらゆる請求書をオンラインで受け取る」でした。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下、リモートワークの普及で紙の請求書の取り扱いが困難になる中、Bill Oneは「どんな請求書もオンラインで受け取れる」強みを活かし、企業の業務継続を支えました。 Bill Oneは、ローンチ4年半となった現在の年間売上を93億円超に拡大し、市場における圧倒的なポジションを確立しました。これは単なる数字の成長ではなく、「企業の請求書管理のあり方を変える」というミッションが市場に受け入れられている証明でもあります。 Bill Oneの理想はすべての請求書のやり取りがデジタル化される世界ですが、そこに至るにはアナログ業務のスケールの壁を乗り越える必要があります。
- 現在Bill Oneの契約社数は3,000社超であり、月初に大量の請求書が届く。(段ボール箱3桁は超える)
- 「月次決算の加速」がコンセプトであるため、すべて当日中に代理受領を完遂させるオペレーション構築が必須である。
このようなアナログとデジタルの融合こそが名刺管理で培ってきたSansanの強みです。僕自身、Sansanで10年間働き続けている理由もここにあります。本気でデジタル化を進めるなら、本気でアナログに向き合う必要があると考えており、その挑戦が尽きないからです。
2. サービスの拡大と進化
現在、Bill Oneは請求書受領、請求書発行、経費精算の3つのサービスを展開しています。
- 請求書受領(10→100フェーズ)
- 月次決算のさらなる加速を実現する機能開発に注力する。
- エンタープライズに価値ある機能開発を増やす。
- 請求書発行(0→1フェーズ)
- 請求書発行後の取引先からの入金確認の煩わしさを解決するため、バーチャル口座による入金確認の効率化を実装する。
- 経費精算(1→10フェーズ)
- 法人カードを活用し、立替経費をなくすことで市場を攻める。
請求書発行と経費精算共に、Bill One契約企業3,000件超の顧客基盤を活かし、圧倒的なスピードで事業成長させていきます。各サービスの成長に伴い、経営視点を持ち、データ分析や戦略立案を通じて企業成長を支える攻めの経理を実現できる事業へと進化していきます。それぞれのフェーズは異なりますが、Bill Oneは単なる業務効率化を超え、企業のお金の流れそのものを変革し、市場のスタンダードを再定義し続けています。
3. グローバルへの挑戦
Bill Oneは、シンガポールやタイをはじめとする海外市場へ展開を進めています。しかし、現在のグローバル売上比率はまだ低く、ここからの成長が期待されています。3年以内にグローバル売上比率を大幅に拡大し、日本発のSaaSが世界で戦えることを証明したいです。 その鍵を握るのが、フィリピンはセブの海外開発拠点Sansan Global Development Centerのメンバーを中心としたグローバル開発チーム。約40名のエンジニアが、国境を超えた課題解決に挑戦し、Bill Oneを世界基準のプロダクトへと進化させています。 Sansanはこれまで、日本のSaaS業界を牽引してきました。しかし、ここで止まるつもりはありません。日本のSaaSがグローバルで真に価値ある存在となるために、Bill Oneは前進し続けます。世界に通用するプロダクトを創り、エンジニアリングの力で市場を切り拓きたいです。
4. 技術的な挑戦と成長環境
4.1 負荷対応とスケーラビリティの進化
Bill Oneの成長に伴い、データベースの負荷増加は避けられない課題です。特に月初には請求書の集中的な処理が発生し、大量のリクエストを捌く必要があります。現状の対応策としては、Cloud SQL Enterprise Plusへの移行を実施しましたが、長期的なスケール対応のため、より抜本的な改善を行っていきます。
- 負荷分散のためのサービス分割
- 肥大化したマイクロサービスを分割し、トラフィックを分散する。
- 一部の機能を非同期処理へ移行し、ピーク負荷を平準化する。
- データベースのパフォーマンス最適化
- クエリの最適化、インデックス設計の見直し、キャッシュの適用による負荷を軽減する。
- リードレプリカの追加、シャーディングによる分散処理の実現をする。
- CQRSパターンの本格導入に向けた技術を検証する。
- 負荷試験の実施
- 大規模負荷試験を実施し、ボトルネックの特定と対策をする。
- 負荷試験のボトルネック特定のためにOpenTelemetryを使う。
4.2 マイクロサービスアーキテクチャの進化
Bill Oneはローンチ当初3つのマイクロサービスでスタートしましたが、現在では14を超えるマイクロサービスが稼働しています。サービスの成長とともに、開発効率や運用負荷を考慮したアーキテクチャの進化が必要となっています。
- モジュール化による開発効率向上
- 請求書受領・発行・経費精算の3つのサービス間で共通の機能をモジュール化し、再利用性を向上する。
- 既存サービスへの適用時には、品質を保ちながら移行する技術力が求められる。
- さらなるイベントドリブンアーキテクチャの活用
- Cloud TasksからCloud Pub/Subへ移行する。
- システム全体の可観測性向上
- マイクロサービスが増加したことで、システムの可視化と障害対応の迅速化が重要になる。
- トレース・ログ・メトリクスを統合して可観測性を高める。
4.3 マイクロフロントエンドの導入
現在、バックエンドは14のマイクロサービスで構成されている一方で、フロントエンドは1つの大規模な単一アプリケーション(モノリシックフロントエンド)として動作しています。この構成では、開発チームのスケールや独立したデプロイが難しくなってきており、フロントエンドにもマイクロフロントエンドのアプローチを導入することを検討しています。この取り組みにより、フロントエンドのスケールしやすさと、開発スピードの向上を実現していきます。
- サービスごとの独立性向上
- 「請求書受領」「請求書発行」「経費精算」などの機能ごとに独立したフロントエンドモジュールを構築する。
- 各チームが独立して開発・デプロイできる環境を整備する。
- 技術スタックの柔軟性向上
- サービスごとに適したフレームワークや技術を採用できる柔軟性を確保する。
- 既存のReactベースのアーキテクチャを活かしつつ、将来的な技術選択の幅を広げる。
- パフォーマンス最適化
- 必要な機能のみを読み込む形にすることで、初回ロードのパフォーマンスを向上させる。
- チーム単位での改善サイクルを回しやすくし、UXの最適化を推進する。
4.4 生産性向上
Bill Oneは急速に成長しており、開発組織としても高い生産性を維持しながら、新機能の開発や品質向上を進める必要があります。開発生産性の向上は、単なるスピードアップだけではなく、開発の質を保ちながら、より少ない労力でより大きな成果を生み出すことが重要です。 そのために、設計の質を高める取り組み、開発の効率化、自動化、そして最新技術の活用を積極的に推進しています。以下に、Bill Oneでの具体的な施策を紹介します。
- 設計の質向上
- イベントストーミングの活用により設計品質の向上を実現する。
- スキーマ駆動開発の導入により、フロントエンド・バックエンドの開発を並行して進めることで、リードタイムを短縮させる。
- AIを活用した開発支援
- GitHub Copilot・Cody・Devin・Qodo Mergeを導入済みであり、今後もAIツールの活用を促進し、エンジニアがより価値の高い業務に集中できる環境を構築する。
- NotionAIを活用したドキュメントの品質向上及び陳腐化防止を実施する。
- フィードバックループの短縮
- データを基にした改善サイクルを高速化し、より効果的なプロダクト開発を実現する。
このように、Bill Oneでは負荷対策・アーキテクチャ改善・生産性向上といった幅広い技術的な挑戦が求められます。 急成長するプロダクトの中で、スピード感を持ちながら技術的な意思決定を行う環境で働くことができます。今後も技術的な挑戦が尽きないBill Oneとなります。 なお、具体的な技術への取り組みは技術バックログで公開しています。また、Findyさん主催のアーキテクチャConference2024でも「4年で17倍に成長したエンジニア組織を支えるアーキテクチャの過去と未来」を発表させていただきましたので、合わせて確認してください。
5. チームの文化と働き方
Bill Oneのプロダクト開発チームは、プロサッカーチームのような文化を持っています。事業の成功を最優先に考えながらも、個々のメンバーが最大限の力を発揮できる環境を追求しています。Bill Oneのチーム文化の核となるのは、HRT(謙虚・尊敬・信頼)の精神です。これは単なるスローガンではなく、日々の意思決定やコミュニケーションに根付いています。
- 謙虚:経験や役職に関わらず、最善の方法を模索し続ける。
- 尊敬:異なる視点を持つメンバーの意見を尊重し、チームとしての最適解を導き出す。
- 信頼:それぞれの専門性を信じ、適切な権限委譲とフィードバックを行う。
これらの文化に向けて、より成果に繋がる考え方を6つ紹介します。
- 相談しながら大胆に判断し、Disagree and Commitで組織を前進させる
- 意見の対立を恐れず議論を重ねたうえで、最適な意思決定を行う。最終的な決定には全員がコミットし、組織の前進を優先する。
- エッセンシャル思考を大切にし、やるべきことをやりきる
- 本当に重要なことを見極め、余計なことに時間を費やさない。シンプルで本質的なアプローチを重視し、やるべきことを確実に遂行する。
- 常に学習し、困難なことに挑み続ける
- 個々の成長がチームの成長に繋がる。私たちは新しい技術やアプローチを積極的に学び、困難な課題にも挑戦し続ける。
- 全員がリーダーシップを発揮する
- 役職や立場に関係なく、全員がリーダーシップを発揮することを求められる。自ら考え、行動し、チームやプロダクトの成長に貢献する。
- 安定したインフラで素早く動く
- スピードと安定性を両立するために、堅牢な技術基盤を整えつつ、プロダクト品質が高い状態を維持しつつ素早く実行することを重視している。
- 一緒に働く皆と笑い合って楽しむ
- 仕事を楽しむことを大切にしている。チームメンバーと協力しながら、前向きな雰囲気を作り、共に笑いながら働く。
Bill Oneは、急成長を遂げる中でチームのあり方を柔軟に変えてきました。
- 初期フェーズでは「個の力」を最大限に活かすため、裁量の大きい働き方を推奨していた。
- 現在はチームでのスケールを重視し、再現性のある仕組みやナレッジ共有を強化している。それでも、「スピード感を持って意思決定し、挑戦し続ける姿勢」は変わらず維持している。
これらの考え方を軸に、Bill Oneではエンジニア一人ひとりが成長しながら、事業とともに進化し続けることを大切にしています。
6. Bill Oneの今後の展望
Bill Oneはまだまだ乗り越えるべき壁が多いプロダクトです。今後も急成長を続けていくため、様々な課題にぶち当たり、乗り越えていくでしょう。また、より多くの企業に利用されるための機能拡充や、AIを活用したさらなる業務自動化など、新たなチャレンジが待っています。 急成長しているBill Oneで開発に関わることで、プロダクトの進化を牽引する経験を積むことができます。また、異なるフェーズのサービスを同一組織で開発が行われているため、それぞれの利点や経験を交えたプロダクト戦略が経験できる状態となっており、例えるなら3倍速で成長できる環境があります。 大きな裁量を持ち、エンジニアとして圧倒的なスピードで成長し、市場を変えるプロダクトを一緒に創り上げませんか?一緒に創りましょう! エンジニア採用についての詳細は、ぜひ以下のページをご覧ください。
カジュアル面談・採用情報について
Sansan技術本部では、中途・新卒の方向けにカジュアル面談を実施しています。興味を持たれた方は、ぜひご検討ください。
待遇面や働く環境を知りたい方は、こちらの採用情報をご覧ください。