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『Tomorrow Is Yesterday』中東和平交渉の根本的な失敗をイスラエル/パレスチナの双方から自己批判した一冊

2025年9月に刊行された『Tomorrow Is Yesterday: Life, Death, and the Pursuit of Peace in Israel/Palestine』(明日は昨日である――イスラエル/パレスチナにおける生と死、そして平和の追求)は、米国主導で繰り返されてきた中東和平交渉が、なぜ根本的に失敗せざるを得なかったのかを、内部関係者の視点から自己批判的に検証する一冊である。米国側交渉官として和平プロセスに深く関与したロバート・マレーと、パレスチナ側交渉官として現場に立ち会ってきたフセイン・アガは、これまでの和平プロセスそのものが、実は紛争の核心を避け続ける「見せかけの芝居」にすぎなかったと論じる。

書名に掲げられた「Tomorrow Is Yesterday(明日は昨日である)」という逆説的な表現は、本書の中心命題を端的に示している。2023年10月7日の攻撃やその後のガザ戦争は、突発的な異常事態ではなく、1948年に解決されないまま放置された問題が、形を変えて再演されたにすぎないというのが著者たちの見方である。未来へ進んでいるかのように見えた和平の努力は、実際には過去へと引き戻され、未解決の「昨日」に回帰しているのだという認識が、全体を貫いている。

本書が強く批判するのは、米国や国際社会が採用してきた「技術的」外交の発想である。和平交渉は、地図上に線を引き、土地をどう分けるかという算術の問題として扱われてきた。しかし著者たちは、そこにはパレスチナ側が重視するナクバ(1948年の破局的体験)と、イスラエル側が抱く歴史的正統性と絶対的安全保障という、相容れない物語の衝突が存在すると指摘する。1967年の国境線に焦点を当てる交渉の枠組み自体が、パレスチナ側にとっては本質を外れたものであり、真の争点は1948年にあるという主張が展開される。

とりわけ厳しいのが、調停者としての米国への評価である。米国は中立的仲介者というより、イスラエル寄りの立場を取りながら、パレスチナ側には核心的要求を棚上げにしたまま不完全な「準国家」を受け入れるよう迫ってきたと描かれる。また和平は、それ自体が最優先課題とされることは少なく、イラクやイランをめぐる地域戦略など、他の外交目的に従属してきた。さらに、入植者や宗教的シオニスト、パレスチナ難民といった「扱いにくい主体」を交渉の外に追いやった結果、彼らが最終的に合意を破壊する力を持ち続けることになった点も指摘する。

10月7日の攻撃についても、著者たちはこれを予測不能な衝撃としてではなく、過去の再演として位置づける。実態を伴わない二国家解決論が唱え続けられる一方で、現地の状況は悪化し、その矛盾がついに爆発したというのである。この出来事は、既存のパレスチナ指導部がもはや代表しえなくなった抵抗への欲求を露わにしたものであり、「きわめてパレスチナ的な行為」であったと分析している。

本書の最も挑発的な提言は、二国家解決という枠組みそのものから距離を取るべきだという点にある。著者たちはこれを、政治家が不作為を覆い隠すための危険な「ギミック」と呼び、現実には成立条件が失われていると断じる。その代わりに、ヨルダン=パレスチナ連合やイスラエル=パレスチナの共同体制といった連合的構想、国境を柔軟にし双方の住民が川から海まで自由に居住できるモデル、さらには領土よりも権利を重視し、すべての住民に平等な政治的・市民的権利を保障するアプローチなど、従来のスローガンを超えた共存の可能性を模索している。

本書は二人の専門家による共著という形で出版された。ロバート・マレーは、クリントン、オバマ、バイデンの3政権で中東政策の要職を歴任した外交官である。国際危機グループの会長兼CEOを務めたほか、イラン核合意の主任交渉官や、バイデン政権のイラン担当特使を歴任した。

フセイン・アガはセント・アントニーズ・カレッジ(オックスフォード大学)のシニアアソシエイトで、パレスチナ人として30年以上にわたりPLOの顧問や交渉官を務めてきた。彼はオックスフォード大学で学び、アラファトやアッバスの側近として、公式・非公式を問わず数多くの交渉に深く関わってきた経歴を持つ。彼はパレスチナ側の物語をインサイダーとして本書に提供している。

『Tomorrow Is Yesterday』は、慰めや簡単な解決策を提示する書ではない。むしろ、長年信じられてきた和平の物語を根底から解体し、読者に不快な現実と向き合わせる。だが、その徹底した自己批判と現実直視こそが、この紛争を理解し直すための真の出発点となりうる。本書が示すのは、過去を清算せずに未来を語ることの欺瞞であり、同時に、従来の枠組みを超えた対話なくして持続可能な共存はありえないという厳しい認識である。和平への道が閉ざされたように見える今だからこそ、本書が提起する根本的な問い直しは重要な意味を持っている。

参考資料:

youtu.be

'Tomorrow is Yesterday' explores why Israeli-Palestinian peace efforts have fallen short | PBS News

'Tomorrow is Yesterday' is a book on why the Israeli–Palestinian peace process failed : NPR

“Tomorrow is Yesterday:” Robert Malley on his New Book with Hussein Agha, The Israeli-Palestinian Peace Process, and October 7 - DAWN




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