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映画『ニュルンベルク』原作、ヒトラーの右腕ゲーリングと対峙したアメリカ人精神科医を描く『The Nazi and the Psychiatrist』

2013年に刊行されたジャック・エル=ハイによる『The Nazi and the Psychiatrist: Hermann Göring, Dr. Douglas M. Kelley, and a Fatal Meeting of Minds at the End of WWII』(邦題:ナチス精神分析官)は、戦争の終わりに収容されたナチス幹部と、彼らを診断したアメリカ人精神科医との関係を描いたノンフィクションである。本書は、ニュルンベルク国際軍事法廷を控えたナチ指導者たちを研究対象としたケリー博士の試み、そしてその経験が彼自身の人生に及ぼした影響を明らかにしている。

物語の中心に据えられるのは、アメリカ陸軍の精神科医であったダグラス・M・ケリー博士と、ヒトラーの片腕であり空軍総司令官を務めた国家元帥ヘルマン・ゲーリングである。ケリーには、主要な被告人たちが裁判を受けるに足る精神状態にあるかを調査し、健康を維持するという役割が課されていた。形式的には難しくない任務であったが、彼はこれを研究の機会と捉え、自身の野心を重ねていく。

ケリーは、彼らの心理的特性を探り、極端な行為が精神疾患や性格上の歪みによって説明できるかを確かめようとした。もし共通点を見いだせれば、将来の大規模犯罪を防ぐ手がかりになると考えたのである。一方ゲーリングは、外部との接触や刺激を求め、二人の関係は互いに影響を及ぼし合う複雑なものへと発展していった。

捕虜となったナチス幹部のなかで、ケリーが特に心を奪われたのはゲーリングであった。彼は降伏時に大量の私物――スーツケース、薬物、勲章や宝石類――を携えて収容所に現れた。自分が戦犯として裁かれるのではなく、敗戦国の代表者として遇され、再び国家指導者として返り咲けると錯覚していたのである。

ゲーリングは知性と残虐さを併せ持つ人物であった。IQ138の高さ、巧みな話術やユーモア、家族や動物への愛情といった一面を示す一方、自己中心的で傲慢かつ冷酷な側面もあった。ホロコーストを否定し、条約違反や軍事行動について後悔を表すこともなかった。ケリーは、このように表面的には魅力的で知的でありながら、同時に極端な残忍さを抱える人物をどう理解すべきか葛藤した。

診断や心理検査の結果、ケリーは驚くべき結論に至る。ロベルト・ライを除き、被告の大半は深刻な精神病に該当せず、軽度の不安定さや偏りはあっても重大な障害とはいえない「普通の人間」であると判断したのである。つまり、彼らの行為は異常者だから起きたのではなく、人間ならどこでも起こり得る現象だという警告でもあった。この結論は、同時期に彼らを「怪物」とみなした心理学者ギルバートの見解と大きく対照的であった。

裁判後、ケリーは「精神医学で悪を説明できない」という現実に打ちのめされる。カリフォルニア大学バークレー校で法医学を専門とする一方、次第に酒と怒りに支配された不安定な生活に陥っていく。ゲーリングとの出会いは、まさに彼の人生に破滅的な影を落とすものとなった。

著者ジャック・エル=ハイは、医学史や科学史を題材に執筆してきたアメリカのジャーナリストであり、『ロボトミスト 3400回ロボトミー手術を行った医師の栄光と失墜』や『Turbulent Air: A History of Northwest Airlines』(ノンストップ:ノースウエスト航空の激動の歴史)といった著作で知られる。本書は、その調査の中で見つけたケリー博士の存在に強く惹かれたことが執筆のきっかけとなった。ちなみに著者の最新作となる医療ノンフィクション『Face in the Mirror』は本ブログにて取り上げているので、過去記事を参照していただきたい。

また、本作は2025年に歴史映画『ニュルンベルク』として映像化された。映画では、戦後の裁判に臨む22名のナチス高官を描き、ラッセル・クロウゲーリングを、ラミ・マレックがケリー博士を演じている。この映画はニュルンベルク裁判80周年を迎える2025年11月に全米公開される予定である。

『The Nazi and the Psychiatrist』は、史上最悪の犯罪を主導した人々が「怪物」ではなく「人間」として存在していたことを伝える書物である。その視点は、過去の出来事を振り返るにとどまらず、現在も進行する大量虐殺や暴力について考える上で、その責任を負うべき権力者たちを「異常者」と片付けることの危うさを警告している。

▼Rakuten


 

参考資料:

youtu.be

youtu.be

Book reviews roundup: & Sons, The Nazi and the Psychiatrist and Barracuda | Books | The Guardian

Review of Jack El-Hai's "The Nazi and the Psychiatrist" — History News Network

The Nazi and the Psychiatrist | Scientific American

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