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『What We Can Know』荒廃した22世紀の世界で文学的謎解きに挑む研究者を描いたイアン・マキューアン最新作

2025年9月に刊行されたイアン・マキューアンによる最新作『What We Can Know』(我々が知りうること)は、文学的な謎解きとディストピア的な未来予想を織り交ぜた作品である。
 
物語の主要な舞台は2119年、世界的な大災厄から一世紀後の未来である。21世紀には二、三度の核戦争、地球規模の移民の大移動、パンデミックを経て人口が半減するといった危機が続き、この時期は「錯乱期(Derangement)」と呼ばれている。ロシアのミサイル事故や海面上昇により西欧世界は水没し、イギリスは小さな群島国家となった。人々はドングリのコーヒーやタンパク質ケーキで質素に暮らし、ナイジェリアが世界の超大国となっている。
 
この変容した世界の中で語り手を務めるのは、サウスダウンズ大学の文学研究者トーマス・メトカーフ(通称トム)である。1990年から2030年の文学、つまり「物語の生き絶える直前」の時代を専門とする彼は、現代の私たちにとっては当たり前の存在である「文化表現の多様性」「ロックコンサート」「ゲイプライドマーチ」といったものに対して強い羨望を抱いている。
 
彼の研究の核心は、2014年に詩人フランシス・ブランディが妻ヴィヴィアンの誕生日に捧げた失われた詩「A Corona for Vivien」(ヴィヴィアンのためのコロナ)を探し求めることである。この詩は一度きり朗読された後、唯一の羊皮紙の清書としてヴィヴィアンに贈られたが、その後出版されることはなく、その所在は謎に包まれている。トムは膨大なデジタル記録をたどり、当時の人々の生活や文化を羨望しながら、詩とその晩餐会の真相を追う。
 
物語の中盤で、この作品は転換点を迎える。そこでは視点が一転し、現代的な語り手――実はヴィヴィアン本人による手記――へと移る。ここでは彼女の複雑な恋愛、アルツハイマー病を患う最初の夫の介護、そして残酷な犯罪と長く秘められた真実が明かされ、トムの推論は覆される。これにより、トムがデジタル記録から緻密に構築した、「他者を知り尽くしている」という前提が、いかに限定的であったかが明らかになる。テキストの信頼性や記憶のあやうさが鋭く問われる展開である。
 
本作は、過去や未来、愛する人の内面をどこまで知り得るかという認識の限界を中心テーマに据える。さらに、縮小した世界での人類の生存や文学・思索・愛の未来を描きつつ、人間が「何とか生き延びる術を持つ」という緩やかな楽観を示す。小説こそが他者の心を知るための精緻な装置であるという作家の信念もにじむ。気候変動は物語の背景として淡く存在し、警告ではなく既成の事実として描かれている。
 
イアン・マキューアンは1948年生まれのイギリスの小説家、脚本家である。イングランドハンプシャー州で生まれ、スコットランド出身の父が軍人であったため、幼少期をシンガポールなどの東アジア、ドイツ、リビアなどの北アフリカで過ごした。1975年に短編集『最初の恋、最後の儀式』で作家デビューし、同作でサマセット・モーム賞を受賞している。彼の受賞した文学賞は枚挙にいとまがないが、1998年の『アムステルダム』はブッカー賞を受賞、2001年の『贖罪』は後に『つぐない』として映画化され、著名な映画賞の多くの部門にノミネート・受賞を果たしている。名実ともに文学的にも商業的にも世界的に成功した作家の一人である。
 
What We Can Know』は、単なるディストピア小説ではなく、人類の知と記憶、そして文学の役割を深く考察させる、マキューアンならではの知的かつ挑戦的な長編である。我々が何を知り、何を信じ、何を未来に残すのかを静かに問いかける、道徳的複雑さをはらんだ作品と言えるだろう。

▼Rakuten

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参考資料:

youtu.be

What We Can Know - Wikipedia

Ian McEwan’s “What We Can Know” Balances Big Ideas with Bold Storytelling | BookTrib.

Ian McEwan's 'What We Can Know' Is 'Sophisticated Gossip' (Exclusive)

Realism Scrapes Through | Los Angeles Review of Books

 

 




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