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『Kolkhoze』エマニュエル・カレールが亡くなった母への追悼とスケールの大きな家族史を綴った一冊

2025年8月に刊行されたエマニュエル・カレール作『Kolkhoze』は、560ページに及ぶ大作であり、2025年のゴンクール賞など数々の文学賞の第一次選考にも名を連ね、フランス文学界で大きな注目を集めている。

本書は、2023年8月に94歳で亡くなった著者の母エレーヌ・カレール・ダンコースの死と、現在進行中のウクライナ戦争という一見無関係に見える二つの出来事を交錯させながら、一世紀以上にわたるロシアとフランスの家族史を四世代にわたり描く感動的な家族の叙事詩である。
物語の中心には、ロシア研究の第一人者であり、アカデミー・フランセーズ初の女性常任書記を務めた歴史家エレーヌ・カレール・ダンコースの姿がある。ロシアとグルジアからの移民を祖に持つ彼女は、誇り高く威圧的で複雑な人物として描かれる。著者は母の驚くべき楽観主義や際限のない強情さ、そしてプーチンによるウクライナ侵攻を予見できなかった点など、光と影の両面を隠さず綴っている。

同時に、母の死の数か月後に亡くなった父ルイ=エドゥアール・カレール・ダンコースへの追悼も本書の大きな柱である。控えめで目立たぬ存在だった父は、妻の家系を調べる系譜学に情熱を注ぎ、その研究が本書の執筆の火付け役となった。著者にとって父は、この作品によって初めて鮮明に姿を現した存在とされている。

タイトルの「Kolkhoze」は家族の儀式に由来する。父が不在の夜、母は三人の子どもを自室に呼び寄せ「コルホーズしよう」と言って共に寝たという。この習慣は母の最期の夜にも繰り返された。ソビエト連邦の集団農場を意味する「コルホーズ」という言葉を、反共産主義者である母親が用いることは、歴史の皮肉とこの家族の複雑さを象徴している。

カレールは母親の人生を振り返るにあたり、深い敬愛の念を抱きつつも、彼女の影の部分を隠すことはしなかった。貴族の家柄、結婚生活以外での恋愛、ソファで寝る習慣など、彼女の個性を作り上げたディテールが描かれる。また、母親が自身の父親(著者の祖父)の過去について恐れていたことにも正面から向き合っている。第二次大戦中に父親はドイツ軍の通訳として働き、ナチスからの解放期に消息を絶ったことは、彼がナチスの協力者であった可能性を示している。この出来事をカレールは2007年に発表した『Un roman russe(ロシア小説)』で公にし、そのことがきっかけで母親とは一時的に確執が生まれた。しかし最終的には母親はそれを乗り越え、彼に感謝の言葉を伝えたという。この作品は、その確執を経て、息子と母親が和解に至る物語でもある。

エマニュエル・カレールは1957年生まれのフランスの作家、脚本家、映画監督である。カレールは事実とフィクションの境界を曖昧にする「オートフィクション」の巨匠として知られ、現実の事件や人物に深く踏み込んだ作品を多く手がけている。本作の中心人物である母エレーヌ(旧姓ズラビシュヴィリ)は、グルジア系移民の娘であり、ジョージアサロメ・ズラビシュヴィリ前大統領のいとこにあたる。日本語に訳されている作品は映画化もされた『口ひげを剃る男』(映画タイトルは『髭を剃る男』)、ロシアの作家で政治活動家エドワルド・リモノフの伝記小説『リモノフ』などがある。ちなみに『リモノフ』は2025年9月5日より小説を原作とした映画が日本公開されている。

『Kolkhoze』は家族の記憶と長年の秘密、地政学的考察を織り交ぜた「小説的自伝」と評される。カレールは自身の家族の歴史が、いかにフランスとロシア、そしてヨーロッパの歴史と不可分に結びついているかを示している。本作は一見取るに足りないように思える個人の歴史の集合体が、大きな歴史のうねりの中で重要な意義を持っていることを示す一冊である。

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Kolkhoze - Emmanuel Carrère

参考資料:

www.youtube.com

https://www.elle.fr/Loisirs/Livres/News/Dans-Kolkhoze-Emmanuel-Carrere-dresse-un-portrait-renversant-de-sa-mere-4375834

Kolkhoze : Entre autofiction et généalogie - En attendant Nadeau

https://www.lapresse.ca/arts/chroniques/2025-09-13/kolkhoze-d-emmanuel-carrere/entre-tolstoi-et-dostoievski.php

エレーヌ・カレール・ダンコース - Wikipedia

 

 

 




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