2025年9月に刊行されるアンジェラ・フルーノイの長編小説『The Wilderness』は、中年にさしかかる5人の黒人女性たちの絆と、現代社会を生き抜く彼女たちの姿を描いた物語である。本作はデビュー作『The Turner House』から10年を経ての待望の第二作であり、2025年の全米図書賞フィクション部門のロングリストに選出されたことでも注目を集めている。
本作はミレニアル世代の黒人女性たちが、2000年代後半から2020年代後半にかけて若い大人から中年期へと歩む20年間を描き出す。物語は5人の黒人女性の友情を軸に展開する。デジレーは2008年、22歳で祖父を亡くし、疎遠な姉ダニエルと共に育てられた過去を背負いながら新たな生活を求めてマンハッタンへ移る。彼女は姉ダニエルとの間に深い溝を抱えている女性として描かれる。ナキアは裕福な家庭で育ち、レストラン経営者として活躍しているが、コロナ禍には従業員を支援しつつ自らの充足感に疑問を抱く。ジャニュアリーは二人の息子の母であり、パートナーに親権放棄を求めるべきか葛藤しながらも新たな人生を模索する。モニークは大学図書館司書であり、勤務先大学の奴隷貿易への関与の歴史を隠蔽しようとしていることをブログに綴ったことで思わぬ形でインフルエンサーとして転身する。
構成は非線形で、時と視点を自在に行き来しながら五人それぞれを多面的に描写する。前半は連作短編のような趣を帯びつつ、後半で二つの重要な出来事が彼女たちを再び結びつける。彼女たちは恋愛や別れ、仕事、介護、金銭的苦境、さらにはCOVID-19やジョージ・フロイド事件など「大人の荒野」とも呼ぶべき現実を経験する。
血縁が希薄または断絶しているときにこそ「選び取った家族」としての深い友情が、人生の困難を乗り越えるために重要となることが強調される。政治的不安、経済的・環境的変動、現代生活の不確実さを背景に、政策や環境問題が人々の暮らしに不可避に影響を及ぼすという現実主義的視点が作品全体を貫いている。
表紙のデザインは、先駆的なビジュアルアーティストのミカリーン・トーマスが手がけている。フルーノイはトーマスを「黒人女性の美しさの擁護者であり、独自の芸術的道を歩む人物」と評している。彼女はこのアートワークが「私が書いた物語にとって、これ以上ないほどぴったりの組み合わせだ」と述べ、作品の世界観を的確に表現していることが読み取れる。
著者のアンジェラ・フルーノイは1985年生まれのアメリカの作家である。デビュー作『The Turner House』は2015年に発表され、全米図書賞のショートリストに選出され、その他多くの文学賞にもノミネートされた。Publishers Weeklyのインタビュー記事によると、第二作『The Wilderness』の執筆は2016年に開始したが、一度他のプロジェクトに取り組むために中断した。その後、2019年に再びこの作品に戻ったが、妊娠と世界的なパンデミックによって執筆へのアプローチを変えることとなった。最終的に子供の就寝後、授乳の合間など、時間を見つけられるあらゆる場所で執筆を続けることで完成させたという。
『The Wilderness』は現代社会の不確実性と困難の中で、大人になってから育んだ友情がいかに家族のように機能し、人生を乗り越える上で支えとなるかを描いている。21世紀アメリカ社会特有の課題に、コミュニティとケアの力がどのように対抗しうるのかを読者に問いかけている作品である。
▼Rakuten
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参考資料:
The Wilderness Celebrates Adult Friendships and Chosen Family — See the Cover! (Exclusive)
Age of Uncertainty: PW Talks with Angela Flournoy