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『One Day, Everyone Will Have Always Been Against This』ガザでのジェノサイドに加担する西洋社会を鋭く批判したオマル・エル=アッカドによるノンフィクション

2025年2月に刊行されたオマル・エル=アッカドによる初めてのノンフィクション作品『One Day, Everyone Will Have Always Been Against This』は、西洋社会の偽善と道徳的失敗を鋭く批判した書である。特にガザで進行するジェノサイドを背景に、人々がいかに「後になってから」しか虐殺を非難しないかを問うている。

本書のタイトルは2023年10月、イスラエルによるガザへの激しい爆撃が始まって3週間後に著者が投稿したツイートに由来する。そこには「いつの日か、安全で個人的な不利益がなく、誰も責任を問われない時になれば、誰もが最初からこれに反対していたと主張するだろう」と記されていた。この言葉が本書の核心であり、社会がいかに都合のよい後付けの正義を掲げるかをあぶり出す。なお、執筆当初の仮題は「The Glass Coffin」で、包囲された人々が「ガラスの棺」に閉じ込められるイメージを意図していたという。

エル=アッカドは、西洋の「善意のリベラル中間層」が暴力を覆い隠すために使う婉曲的言語を批判する。民間人の死を「付随的被害」と呼び、囚人を「被拘束者」と言い換えるように、言葉は加害の責任を曖昧にする装置である。このような言葉の歪曲は、リベラルで善意ある中道層が、「これは悲劇的だが、代替案は野蛮だから必要だ」と納得するために提供される言説だと彼は分析している。

さらに政治・学術・文化・報道など西洋の制度的失敗を厳しく追及する。自らも『グローブ・アンド・メール』の元記者として「自己消去的中立」に陥ったメディアを批判し、命を懸けて報道を続けるパレスチナ人記者との対比を描く。自身の税金がガザ爆撃に使われている事実を認め、長らく「中道リベラル」に安住してきた自らの責任も問う。キャリアや賞賛が空虚に見えるほどの惨状に直面した著者は、自身の加担を直視している。

著者はエジプト生まれ、カタール育ちで、カナダを経て米国市民となった移民である。かつては西洋を自由と正義の象徴として理想化していたが、アフガニスタングアンタナモ湾の軍事裁判、アラブの春、ブラック・ライヴズ・マター運動などを取材した10年間のジャーナリスト経験を通じ、その信頼は崩れていった。ガザでの大量虐殺が「生配信」される現実は決定的な断絶となり、西洋リベラリズムが実際には何も体現していないという痛烈な気づきをもたらした。本書は、著者自身が「西洋への失恋の手紙」と呼ぶほどの個人的告白でもある。
 
それでも本書には希望の光がある。制度的な失望とは対照的に個人やコミュニティの連帯には「計り知れないインスピレーション」を感じているという。デモで逮捕される危険を犯して学生が未来を賭けて抗議し、港湾労働者が武器積載を拒否し、命をかけて情報を伝えるパレスチナ人ジャーナリストの行動は、大きな勇気を与えるものとなっている。個人レベルのアクションが、たとえ「ジェノサイドの歯車に砂を投げ入れる」程度のものであっても、たとえそれが一握りの砂であっても、抵抗には価値があると主張している。それに加えて、本書が2025年の全米図書賞ノンフィクション部門のロングリストに含められたことは、アメリカの知識人の中にも「もはや沈黙はしない」と心に決めた人たちがいることを示しているのではないだろうか。この事実も、希望を持てる理由の一つと言えるはずだ。

オマル・エル=アッカドは、1982年にエジプトのカイロで生まれ、カタールのドーハで育ったエジプト系カナダ人の小説家・ジャーナリストである。16歳の時にカナダに移住し、前述の通り大学卒業後はグローブ・アンド・メール紙の記者としてアフガニスタン戦争、グアンタナモ湾の軍事裁判、エジプトでのアラブの春を取材した。デビュー小説『アメリカン・ウォー』(2017年)は批評家から高い評価を受け、BBCが選ぶ「世界を変えた100の小説」の一つにも挙げられた。第二作『What Strange Paradise』(2021年)はカナダで最も権威ある文学賞の一つであるギラー賞を受賞している。

『One Day, Everyone Will Have Always Been Against This』はエッセイを連ねた構成で、回想、取材、批評を融合しており、ガザで進行しているジェノサイドという現実を前に、西洋の道徳的権威が崩壊したことを、個人的な苦悩を交えながら鋭い視点で描いている。本書は道徳的無関心という現代の病理を暴き出すとともに、既存の制度に絶望しながらも個人の抵抗に最後の希望を見出そうとする著者の苦闘を率直に記録した作品である。沈黙と共謀の罪深さを訴えながら、同時に人間性の回復を求めるその声は、現在を生きる我々一人ひとりに根本的な問いかけを投げかけている。

参考資料:

youtu.be

Omar El Akkad - Wikipedia

One Day, Everyone Will Always Have Been Against This by Omar El Akkad review – Gaza and the sound of silence | Politics books | The Guardian

Q&A: Omar El Akkad on the War in Gaza and the Failure of Journalistic Institutions - Columbia Journalism Review

One Day, Everyone Will Have Always Been Against This by Omar El Akkad review - Big Issue

 




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