2024年10月にSaqi Booksから刊行された『Daybreak in Gaza: Stories of Palestinian Lives and Culture(ガザの夜明け――パレスチナの暮らしと文化の物語)』は、マフムード・ムナとマシュー・テラーが、ジュリエット・トウマとジャヤブ・アブサフィアと共に編集した書籍であり、ガザ地区の人々の声、文化、そして生活を伝えることを目的とした、極めて切迫した状況で作られたアンソロジーである。
ガザ戦争から1年を迎える時期に出版された本書は、文化保存を試みるものであり、現地の声を記録し、外へと伝えることを目的としている。イスラエルによる殺戮の速度に追いつくように書き、人間性を奪う報道の単純化に抵抗し、ガザを統計ではなく「語る共同体」として提示するという倫理的使命に基づいている。ムナは「光を当てれば人間性を取り戻せる」と述べ、「ガザは自ら語る」と強調する。テラーも「声なき者に声を与えるのではない。人々には声があり、叫び続けているのに耳を傾ける者が少ないのだ」と訴えている。
本書は、教師、芸術家、商店主、農民、医師、学生など、様々な背景を持つガザの人々による数十の証言を収録している。それらは散文、詩、日記の断片といった形式で書かれており、悲しみ、反抗、ユーモアの間を揺れ動いている。モハメッド・アガーアルクルディ医師は、飢餓と危険にもかかわらず、子供たちがパレスチナ国旗の色をした凧を揚げる様子を記述し、これを抵抗行為だと捉える。サバ・ティムラズの「My Heart is Broken」では、大学での学業を中断され、空爆から逃れるためにエジプトへ避難した21歳の学生の「燃えるような怒り」を伝えている。ヒバ・アブー・ナダーのような著名な作家も登場するが、彼女自身も2023年10月の空爆で命を落とした一人である。
また、この本は現在の戦争の証言にとどまらない。モハメッド・オメルによる2003年の日記は、ガザに対するイスラエルの攻撃が周期的なものであることを示し、5000年前の古い歴史から、織物や刺繍といった地域の伝統に至るまで、ガザの様々な歴史に光を当てている。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のアーカイブからの写真や、20世紀にガザに定住し人々の生活を記録したアルメニア人写真家たちのポートレートも掲載されている。ハラント・ナカシアン、レヴォン・ヨトナプパリアン、ケラム・ジャリアンの三家族は、ガザにおける写真術の先駆者として紹介されており、その歴史はガザのアルメニア系少数民族の社会的多様性に新たな光を当てている。
本書には、シリア、レバノン、ヨルダンのパレスチナ難民のコミュニケーション・ディレクターであるジュリエット・トウマなど、ガザを「生命の場所」として認識している人々の視点が含まれている。彼女はガザを「本屋、笑い、芸術、素晴らしい食べ物に満ちた活気ある共同体」と記憶しており、ガザの人々が「生命への愛、そして生き続けようとする決意」を持っていることを示している。
本書の制作過程は困難を極めたという。2024年3月から5月にかけて進められた編集作業は、途切れがちな通信環境のもと、寄稿者が生き延びて出版を見届けられるか分からない状況の中で行われた。ムナは「インタビューの最中に人を失った」「本が出る頃にはすでに生きていない人もいた」と述懐する。命を賭して言葉を届ける人々の声を記録することは、まさに時間との闘いといえるだろう。
この本を手がけた人々についても触れておきたい。マフムード・ムナはエルサレム出身のパレスチナ人作家、出版業者、書店主である。彼はエルサレムで有名な「Educational Bookshop」と「American Colony Hotel」内の書店を経営しており、これらは市の文学シーンの中心地となっている。ムナは、サセックス大学とキングス・カレッジ・ロンドンでメディアとコミュニケーションの学位を取得し、パレスチナ全土で多くの文化活動に携わっている。『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』や『エルサレム・クォータリー』に文化や政治に関する記事を定期的に寄稿しており、『グランタ』誌初のアラビア語版を出版した。2025年2月には、自身の書店がイスラエル警察に家宅捜索され、自身と甥が「公序良俗妨害」の容疑で逮捕・拘束されている。
マシュー・テラーは英国を拠点とする作家、ジャーナリスト、ドキュメンタリー制作者である。彼はBBC、CNN、The Times、Financial Times、Independent、The Guardianなどに寄稿し、BBC Radio 4やBBC World Serviceでドキュメンタリーを制作・発表している。パレスチナとより広い中東地域に焦点を当てており、2021年に刊行された『Nine Quarters of Jerusalem: A New Biography of the Old City(エルサレムの9つの地区:旧市街の新しい伝記)』も高く評価されている。
ジュリエット・トウマは国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のコミュニケーション・ディレクターであり、パレスチナ、シリア、レバノン、ヨルダンを担当している。UNRWAのアンマン本部からガザへ頻繁に渡航している。
ジャヤブ・アブサフィアはロンドンを拠点とするジャーナリストで、ガザのジャバリア難民キャンプ出身である。以前はスカイニュース・アラビアのロンドン支局シニア・レポーターを務め、アルガドTVのシニア・ニュースキャスターを務めた経験を持つ。
『Daybreak in Gaza』は、流血の中でもパレスチナ人の名と物語と生を残すために編纂された書籍であり、読者に停戦を支える共感と理解を喚起することを目指している。本書は希望、怒り、苦悩についての本であると同時に、人間性や未来への希望を抱き続けるパレスチナの人々の揺るぎない精神を記録している。
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