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『Butler』トランプ暗殺未遂事件の舞台裏と民主党政権の敗北を描いたノンフィクション

2025年7月に刊行されたサレナ・ジトー著『Butler: The Untold Story of the Near Assassination of Donald Trump and the Fight for America’s Heartland』(バトラー――ドナルド・トランプ暗殺未遂とアメリカ中西部をめぐる闘いの知られざる物語)は、2024年7月13日にペンシルベニア州バトラーで行われた選挙集会中に発生した、ドナルド・トランプに対する暗殺未遂事件を中心に描いた作品である。

ジャーナリストのジトーは事件発生時、フォトジャーナリストである娘シャノンと義理の息子マイケルとともに、ステージからわずか1.2メートルの位置、いわゆる「バッファゾーン」にいた。トランプが弾丸により耳を押さえ、顔に血が流れる様子を目撃し、自身は大統領報道部の責任者ミシェル・ペイカードに地面に押し倒されたという緊迫の場面を記録している。

翌日、トランプからジトーに複数回の電話がかかってきたという。最初の通話では、「おはよう、サレナ。ドナルド・トランプだ。君とシャノン、それにマイケルが無事か確認したかった。あと、インタビューができなかったことを謝りたくて」と話した。ジトーが「大統領、お言葉ですがふざけてるんですか? 撃たれたのはあなたで、私は近くにいただけですよ」と咄嗟に返すと、トランプは笑ったという。

事件当日の「Fight! Fight! Fight!(闘え、闘え、闘え)」というトランプの叫びや、「我々の不屈さ、卓越性、強さを示そうとした」という姿勢が、会場にいた人々のパニックを防いだとジトーは評価する。「誰も叫んだり、取り乱したりしていなかった」と彼女は記している。

ジトーは、もう一つの歴史的未遂事件にも注目する。1753年、同じくバトラーで起きたジョージ・ワシントン暗殺未遂である。当時21歳だったワシントンは、フランス軍にイギリス領からの撤退を命じる外交任務中に、暗殺者の銃弾が耳元をかすめるという危機に瀕した。ジートは、もしこの時ワシントンが死んでいれば、フレンチ・インディアン戦争も、その後のアメリカ独立戦争も起こらず、現在のアメリカという国は存在しなかったかもしれないと示唆する。この歴史的偶然とトランプの事件を重ね合わせることで、歴史の転換点における「あと一インチ」の重要性を強調している

民主党敗退の要因を探る中で、ジトーが注目するのは中西部3州の動向だ。ミシガン、ペンシルベニアウィスコンシン――これらの州が過去3回の大統領選で2度トランプを選んだ事実は重い。「オバマ時代の階層横断的連携は崩壊し、民主党は労働者階級とのつながりを失った」と指摘する。カトリックユダヤ人、ラテン系住民への支持拡大も見逃せない現象である。
 
とりわけペンシルベニアの存在感は特別だ。ジトーはこの州を「キーストーン州」として位置づけ、「国全体の可能性を体現する多様性を有する」と評価している。アメリカ中西部(ハートランド)の縮図がここにあるといえるだろう。

本書はまた、ジトーの独自のジャーナリズム手法を示している。ワシントンDCやニューヨークのメディア界を離れ、コンビニチェーンのシーツやワワ、マクドナルドといった庶民の集まる場所、そしてペンシルベニア各地のトランプ集会に赴き、人々の声を「聞く」ことに重きを置いてきた。地元ジャーナリズムの衰退が「土地への理解と根ざす感覚」を失わせたと彼女は批判している。

さらに本書では、アメリカ社会の「根付いた人々」(placed)と「根がない人々」(placeless)という対立が、政治に与える影響についても掘り下げている。前者は地域に根ざした人々であり、後者は本質的に遊牧民的な人々を指す。ジトーによれば、トランプを支持するのは「根付いた人々」であることが多いという。この分析は、デヴィッド・グッドハートが著書『The Road to Somewhere
』で提唱した「anywheres(どこにでもいける人々)」と「somewheres(どこかにいる人々)」という類型論とも関連しており、学歴や専門スキルを持たない「どこかにいる人々」が、現代社会において居場所のなさを感じている状況を浮き彫りにしている。

さらに、バイデン政権による液化天然ガス輸出禁止などの政策が、労働者や農家にどのような打撃を与えたかを指摘し、「土地に根差す人々(the placed)と根がない人々(the placeless)」の二項対立を政治的対立の背景に位置づける。彼女は「根ざす者たちは彼(トランプ)とともにある」と明言する。

本書には、トランプ本人やJ.D.ヴァンス、選挙キャンペーン幹部、さらにはイーロン・マスクとの言論の自由に関するやりとりも含まれる。表紙には、事件当時の様子を撮影した著者の娘による写真が使用されている。

著者サレナ・ジトーは、アメリカのジャーナリストであり作家である。ペンシルベニア州出身で、長年にわたり新聞記者を務めており、ピッツバーグ・トリビューン・レビューやニューヨーク・ポストのコラムニストであった経歴を持つ。現在はワシントン・エグザミナーの記者であり、ワシントン・ポストにも寄稿している。彼女はアメリカ政治におけるポピュリズムに関する報道で知られている。

『Butler』は、一瞬の出来事がいかに歴史の針路を揺るがし、社会の根深い分断を浮き彫りにするかのを描いた作品である。サレナ・ジトーはトランプと個人的に距離が近く、保守系メディアで活動する彼女の著作をどのように受け止めるべきかは、読者の判断に委ねられるだろう。とはいえ分断が深まる世界において、もう一方の側から見た「トランプ暗殺未遂事件」を振り返ることは損にはならないだろう。

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参考資料:

After Trump Was Shot, He Called Me - by Salena Zito

Butler by Salena Zito review – how Trump won America’s heartland | Books | The Guardian

Salena Zito - Wikipedia




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