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『Translations』過去から逃れオーストラリアの田舎で新たな人生を始めるムスリム女性を描いた小説

2024年8月に刊行されたジュマアナ・アブドゥのデビュー小説『Translations』は、ムスリムのシングルマザーであるアリーヤ・アスフォールの複雑な旅路を描いた作品である。物語は彼女が10歳の娘を連れて、父親の死や元夫との離婚などの災難の連続から逃れるために、シドニーから離れる場面から始まる。アリーヤはこの移動を「脱出(exodus)」と捉え、物理的な逃避だけではなく、感情的な解放も求めてオーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州にある田舎へと向かう。
 
彼女たちが目指すのは「シェパーズ・ミル」と呼ばれる荒れ果てた土地であり、3エーカーの森林に囲まれた不動産である。この土地はアリーヤが父親の家とビジネスを売却した資金と、元夫からの養育費によって手に入れたものである。そこには傾いた小屋、朽ちかけた納屋、骨組みのようなポーチに囲まれた二階建ての家があった。彼女には計画があり、園芸家だった亡き父と共に構想していた設計をもとに土地を再生し、新たな生活を築こうとしていた。当初の彼女は、神の存在以外は誰にも頼らない、娘と2人きりの自給自足の生活を思い描いていた。
 
だが、その願望はすぐに実現できないことが明らかになる。広大な土地の整備には人手が必要であり、アリーヤは農作業助手を雇うことを決意する。数名の候補者と面接した後、彼女が選んだのは地域のイマームで「シェプ」と呼ばれる内気なパレスチナ人男性だった。彼は2009年のガザ虐殺の後、ガザからオーストラリアに難民として移住してきた人物だった。物語の中では、パレスチナ人としての彼の背景や世界観も掘り下げられていく。
 
アリーヤは地元の病院で看護師としてパート勤務する中で、アボリジニの部族の一つであるカミラロイ族の助産師であるビリーと親しくなる。ビリーとその家族は、地域コミュニティや土地への深いつながりを体現する存在として描かれており、彼女はアリーヤの良き相談相手となる。彼女たちの会話では「未割譲の土地」に生きるというテーマや、先住民とパレスチナ人との連帯も浮かび上がる。
 
ある嵐の夜、アリーヤは川辺で幼なじみのハナと再会する。ハナは苦境にあり、兄ハシムとの関係がこじれたことから逃げてきた可能性も示唆される。プライバシーを重んじるアリーヤだったが、ハナを自宅に迎え入れる決断を下す。これにより彼女の新たな生活にはさらに複雑さが加わることになる。
 
その後の物語では、アリーヤ、シェプ、ハナの間に築かれる繊細でしばしば緊張を孕んだ関係性を中心に描かれる。アリーヤとハナの間では身体的な親密さを含む場面がある一方で(恋愛感情があるかは明示されない)、アリーヤとシェプの間では戒律に則って2人きりにならないよう努めている。シェプとの絆が深まる一方で、ハナへの思いとの間に葛藤が生まれ、三者間の複雑な感情の交錯が進展する。これらの関係は、言語的、文化的、感情的な隔たりをどう乗り越えるかという問題を象徴している。
 
タイトルの『Translations』は、登場人物たちの言語的・文化的・感情的なギャップをどう橋渡しするかを示すものであり、コミュニケーションの難しさを描いている。また、オーストラリア先住民とパレスチナ人が共有する、「植民地化と土地の喪失」というテーマも本書の中では重要な位置を占めている。
 
ジュマアナ・アブドゥは、オーストラリア生まれのパレスチナエジプト人女性である。作家として知られているが、日中は医師として働いている。本作は彼女のデビュー小説であり、医学部在学中の最終学年に執筆された。彼女の作品は様々な文芸誌やアンソロジーに掲載され、2025年度のステラ賞のショートリストに選出された。彼女はマイノリティの著者が具体的なトラウマや苦痛を語ることを求められがちな風潮に抵抗し、登場人物に「曖昧さ」を許し、彼らが傷ついたり血を流したりせずに感情移入できる要素を描く方法を模索したという。パレスチナ系、イスラム教徒、女性の身体的苦痛に焦点を当てるのではなく、普遍的な人間の経験を描こうとしたことに高い評価が集まっている。
 
『Translations』は、アイデンティティやトラウマといった複雑なテーマを、ムスリムパレスチナ系、カミラロイ族といった多様な背景を持つキャラクターを通して巧みに描き出している。本作は分断された世界における共感と理解の可能性について考えるよう読者に促している。

参考資料:

youtu.be

Roumina Parsa reviews “Translations” by Jumaana Abdu – Mascara Literary Review

REVIEW: Arab Australian debut cultivates hope, solidarity in rural New South Wales | Arab News

We love to dissect our ‘private lives’, but is forgoing privacy the only way to prove I am a human being? | Australian books | The Guardian




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