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『I Am on the Hit List』2017年にインドで発生した女性ジャーナリスト殺害事件の全容に迫る一冊

2024年8月に刊行されたロロ・ロミング著『I Am on the Hit List: A Journalist's Murder and the Rise of Autocracy in India』(私は殺害リストに載っている──あるジャーナリストの殺害とインドにおける専制主義の台頭)は、2017年にインドのバンガロールで発生したジャーナリスト、ガウリ・ランケシュの殺害事件を掘り下げ、現代インドの複雑な政治的・社会的状況を描写した一冊である。本書は2025年ピューリッツァー賞一般ノンフィクション部門のファイナリストに選ばれた作品である。

ガウリ・ランケシュは、カルナータカ州の主要言語であるカンナダ語の週刊新聞『Lankesh Patrike』の編集者であり、ジャーナリスト及び活動家として知られていた。彼女はヒンドゥー至上主義団体への強い批判と、世俗主義と社会正義を擁護する立場を貫き、自身を「活動家ジャーナリスト」と称していた。父親が遺した新聞を引き継いだことで、その焦点はより地域に密着した問題へと移っていった。新聞編集を引き継ぎ、現地に深く関わっていく中で、彼女の最大の関心事となったのは、宗教間の調和であった。特に、バンガロール近くの共有の聖地におけるヒンドゥー右翼の排他的な動きに対し、他の活動家と共に進歩的な抵抗を展開したことは、彼女が活動家へと傾倒する大きな転換点となったのである。

ガウリ・ランケシュは、2017年9月5日、バンガロールの自宅前で、バイクに乗った犯人に銃撃され死亡した。午後8時過ぎ、車から降りて家の門を開けようとした際に、腹部と背中を撃たれ玄関先で倒れた。彼女の殺害は、親しいライターや活動家のコミュニティだけでなく、全国に衝撃を与え、大規模な抗議活動を引き起こした。

本書は、ガウリの殺害事件に対する特別捜査チームによる捜査の詳細を記している。この事件は、それ以前に発生した3人の進歩的な作家や活動家の殺害とパターンが似ており、同一犯による可能性が指摘されていた。捜査情報は慎重に扱われたが、やがて連続して逮捕者が出始めた。18人が共謀罪で起訴され、17人が逮捕され、1人は逃走中とされている。

逮捕された男たちの所持品や自白、押収された日記などから、彼らがヒンドゥー右派組織「サナタン・サンスタ」と関連があることが明らかになった。容疑者の所持品から発見された、この組織の創設者ジャヤント・アサヴァレによる『クシャトラダルマ・サーダナ』という書籍は、「霊的実践における殺人マニュアル」とも呼ばれている。この本には「悪人への暴力は非暴力である」「悪人を殺さぬことは罪である」と明記されており、宗教的文脈のもとでの殺人を正当化している。

サナタン・サンスタはカルト的な側面を持つとされ、創設者が催眠術師であること、信者に家族との断絶や財産譲渡を命じることもあるという。さらにその政治的立場や目的は、モディ首相が率いるインドの与党・BJPと一致していると指摘されている。首相が右派に属しているため、過激派はますます大胆な行動に出るようになっているようだ。。それに加えて組織構造はコードネームと情報の分業制によって捜査を困難にしていた。

本書は、単なる捜査報告にとどまらず、ガウリ・ランケシュの物語を通して、現代インドにおけるヒンドゥー至上主義の台頭、表現の自由への抑圧、民主制度の揺らぎといった広範な問題を描き出している。バンガロールという都市そのものも、テック都市としての急速な近代化と、小都市的な性格、政治的・文化的葛藤を併せ持つ存在として描かれている。

ガウリ・ランケシュの生涯と死は、インドの現状と、自由な表現を守るために闘う人々の勇気と脆さを象徴している。彼女は、自分自身が「ヒットリストに載っている」ことを認識しており、それをユーモアを交えて話すこともあったという。彼女のレガシーは、不寛容な声に対し、言葉で議論することを求める姿勢、そして沈黙しないことの重要性にあると著者は示唆している。

著者ロロ・ロミングはデトロイト生まれのジャーナリスト、エッセイスト、評論家である。彼は2013年から南インドを中心に取材しており、『The New York Times Magazine』に頻繁に寄稿している。本書は、2025年のピューリッツァー賞ノンフィクション部門の最終候補に選出されている。

興味深いことに、2025年国際ブッカー賞を受賞したバヌ・ムシュタクは、ガウリ・ランケシュの父が始めた「Lankesh Patrike」でリポーターを務めていた経験がある。彼女たちに接点があったのかは不明だが、カルナータカ州で社会正義のために闘っていた2人の女性に突如として注目が集まったことは、支持者やその仲間たちにとって意義深い出来事であったに違いない。

『I Am on the Hit List』は、ガウリ・ランケシュの悲劇的な死を起点としつつ、それを遥かに超えた多層的な物語を展開している。本書は「誰が殺したのか」という謎解きだけでなく、「なぜ殺されたのか」、そしてその殺害が現代インドにおいて持つ意味を深く掘り下げているのである。

参考資料:

youtu.be

I Am on the Hit List - Wikipedia

An Indian Journalist on the Hit List: Investigating the Shocking Assassination of Gauri Lankesh ‹ Literary Hub

The Assassinations That Targeted India’s Journalists ‹ CrimeReads

 




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