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映画『コネマラ』の原作、ゴンクール賞作家ニコラ・マチューが中年男女を描いた同名小説

2022年にフランスで刊行されたニコラ・マチューの小説『Connemara』(コネマラ)は、ゴンクール賞受賞作『Leurs enfants après eux』(英題 Their Children After Them、彼らに続く子どもたち)に続く待望の作品である。

本作のタイトルは、ミッシェル・サルドゥーによる1981年のヒット曲「Les Lacs du Connemara(コネマラの湖)」に由来している。著者によれば、この曲はフランスで広く知られ、結婚式や大衆的な祝いの席でよく流されるが、演奏される社会的文脈によって異なる意味合いを持つという。例えば、ビジネススクールの同窓会でかかるのと、庶民的な場所で聞くのとでは印象が異なるそうだ。この曲が持つ二重性は、著者が関心を寄せる社会的な分断や境界線を表現するためにこのタイトルが選ばれた理由である。

物語の舞台は、2010年代後半、特に2017年のフランス大統領選挙の時期のフランス東部、ナンシーとその郊外である。主要な登場人物は二人の40代、エレーヌとクリストフだ。

エレーヌは、ヴォージュ地方の小さな町で生まれ、より良い人生を求めて故郷を離れ、高等教育を受けたのちにキャリアを築き、パリでコンサルティング会社に勤務する。結婚し二人の娘に恵まれ、雑誌に出てくるような理想の人生を送っていた。彼女は青春時代に描いていた「成功」を手に入れたはずだったが、パリでの燃え尽き症候群を経てナンシーに戻る。現在、彼女を襲うのは空虚感と落胆、そして無駄にしてしまった時間への思いである。彼女は自身の経歴や女性であることから、コンサルティング業界で完全に認められていないと感じている。

一方のクリストフは、エレーヌと同じ故郷の町で育ったが、そこから一歩も出ずにとどまった男だ。かつてはアイスホッケーチームのスター選手で、女の子たちの憧れの的だったが、今はドッグフードのセールスマンをしている。かつての栄光にしがみつき、友人たちとの付き合いやパーティーを優先し、大きな決断を先延ばしにしてきた彼は、別れたパートナーとの間にできた息子と父親と共に暮らし、のんびりとした、しかしどこか決断力に欠ける人生を送っている。外見はかつての美しさを失い、一見すると人生に失敗したように見えるが、彼は再びアイスホッケーをする夢を抱いている。

疎遠になっていた二人は故郷の町で再会し、やがて「愛に似た何か」が芽生える。物語は、彼らの現在と、90年代の青春時代を交互に描くことで進行する。青春時代の彼らは、それぞれが輝かしい未来を予感させる存在だった。クリストフは有望なアイスホッケー選手、エレーヌは故郷からの脱出を目指す野心的な少女であった。しかし、時を経て再会した彼らは、期待とはかけ離れた現在を生きており、そこで「過去との清算」や「人生の途上での揺れ」が描かれる。

この小説の重要なテーマの一つは、現代フランス社会における階層間の断絶、特に都市と地方、エリート層とそれ以外の層との間の溝である。「コンネマラ」という楽曲がその溝を表現している。広く知られた歌として皆が共有していながら、そこに社会的な境界線が明確に存在している。これは、エレーヌとクリストフの関係性にも通じる。同じ故郷の同じ階級から出発しながら、異なる道を歩んだ二人の間にある断絶、そして彼らが共有する「故郷」という共通項が、彼らを結びつける一方で、また彼らを隔てもいる。

この物語は、現代の「仕事」にも焦点を当てている。特にエレーヌが働くコンサルティング業界が詳細に描かれ、パワーポイントとオープンオフィス制度という現代の労働環境が象徴的に示される。著者は、コンサルティング業界のマネジメント哲学や専門用語に対して批判的な視線を向け、それが現実を覆い隠し、労働者の思考を制限する権力の形態であると指摘する。そして、「見せかけ」や「安心感の提供」を重視している働き方を諷刺的に描いている。

著者はディテールを重視し、できる限り正確に現実を再現しようとすることで、読者に登場人物の体を通して世界を感じさせようとする。五感に訴えかける具体的な描写は、物語世界への没入感を高める。彼は自身を「社会学者作家」と呼ばれることを好まないが、その作品は現代社会のリアリティを深くえぐり出している。

ニコラ・マチューは1978年生まれのフランス人作家である。大学卒業後、彼は様々な職業を経験した。オンライン情報サイトのジャーナリスト、そして特に企業委員会の会議の議事録作成者としての経験は、彼の作家人生において非常に重要だったという。この仕事を通じて、彼は様々な業界や企業の内部に入り込み、経営側と労働者側の衝突を観察し、異なる社会階層の人間たちの言葉や心理に触れる機会を得たという。

転機となったのは、35歳で出版された初の長編小説『Aux animaux la guerre』(動物たちに戦争を)である。この作品は出版社の編集者の目に留まり、批評家から高い評価を得た。そして、2018年に刊行された『Leurs enfants après eux』(彼らに続く子どもたち)で、フランスで最も権威ある文学賞の一つであるゴンクール賞を受賞し、一躍脚光を浴びることになった。

『Connemara』は俳優であり映画監督としても活動しているアレックス・ルッツにより、小説と同じタイトルで映画化され、2025年のカンヌ映画祭でプレミア上映された。エレーヌ役をメラニー・ティエリー、クリストフ役をバスティアン・ブイヨンが演じ、Vogue Franceの記事によると「小説にかなり忠実な物語」との前評判が紹介されている

本作は、現代フランス社会の深部に潜む断絶と、中年期を迎えた男女の普遍的な苦悩を描いた作品である。エレーヌとクリストフという対照的な人生を送る二人の軌跡を通して、地方の退屈さや、見過ごされがちな人々の人生に光を当てた作品といえるだろう。

参考資料:

youtu.be

youtu.be

"Connemara" : l'adaptation du roman de Nicolas Mathieu par Alex Lutz sera présentée à Cannes | Vogue France

Connemara A Novel | Excerpt

Nicolas Mathieu (écrivain) — Wikipédia

CONNEMARA - Festival de Cannes




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