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映画『九月と七月の姉妹』の原作、デイジー・ジョンソンによる小説『Sisters』

2020年8月に刊行されたデイジー・ジョンソン著『Sisters』(邦題:九月と七月の姉妹)は、姉妹という最も身近でありながら複雑な関係性と、家族におけるトラウマ体験の影響を描いたゴシック・ミステリーである。本作はマン・ブッカー賞(現在のブッカー賞)の最終候補となったデビュー作『Everything Under』に続く、ジョンソンの第二作である。

物語は、姉妹のジュライとセプテンバー、そして母親のシーラが北方へ車を走らせる場面から始まる。彼女たちは、オックスフォードで起きたある「言葉にできない事件」から逃れるため、海に近いノース・ヨーク・ムーアズの近くにある、長らく放置された一族の家「セトル・ハウス」へ移り住む。ここは、セプテンバーと既に故人となった姉妹の父ピーターが生まれた家でもある。

本作の中心は、ジュライとセプテンバーの関係である。二人はわずか十か月違いで生まれ、他人を必要とせず、「強い絆」という簡単な言葉では片付けられないほど、互いを必要とする存在として描かれている。それは時に不健康で、共依存的な関係といえる。その絆は、一卵性双生児以上に密接な関係である。妹のジュライは内気で従順、そしてナイーブな性格をしており、姉セプテンバーの「操り人形」として、時に自分を傷つけてまでも彼女の命令に従う。姉は支配的で破壊的な側面を持ち、妹を完全に掌握している。

母のシーラは、重度の鬱や精神的疾患に苦しむシングルマザーである。彼女はしばしば娘たちを放置し、自室に閉じこもることも多い。親としての役割を果たせておらず、その存在感は希薄である。

セトル・ハウスは、物語の背景としてだけでなく、重要な象徴的役割を果たす。この家は荒れ果て、暗く、息苦しく、閉塞感に満ちている。この閉鎖的な環境の中で、母娘の関係はますます緊張していく。ジュライはその様子を「歪み、くすみ、汚れ切った家」と表現し、セプテンバーからの支配から逃れたいという思いと、姉なしでは生きていけないという恐怖の間で揺れ動く。この家は一種の身体として描かれ、姉妹の両親であるシーラとピーターの歪んだ関係のメタファーとなっている。家の中には、じわじわと迫る不安感と気味の悪さが漂い、ジュライは「背後にすべての部屋を感じる」と語る。

物語は主にジュライの一人称で語られるが、母シーラの視点から短い章も挿入される。ジュライの語りは錯乱し、混乱し、ときに支離滅裂であるが、それは彼女の内面の不安定さを的確に反映している。この語りのスタイルが、作品全体に漂う重苦しさと絶望の空気を強調している。

本作における雰囲気は、終始不気味で、不穏で、不安を誘うものである。主題としては、過度に密接な姉妹関係の危険性、家族の秘密と隠された緊張、家庭内の支配と操作、そしてトラウマの心理的影響が挙げられる。ジュライとセプテンバーの境界は曖昧であり、どこまでが一人でどこからがもう一人なのか、読者に問いかける構造となっている。また、彼女たちの物理的な孤立と精神的な孤独も、主題の中心をなしている。

姉妹はセトル・ハウスでの新たな孤立生活の中で、その絆が揺らぎ始める。ジュライには理解できない形で、関係が変化していき、2人は家の外でも境界を越えるような行動を取るようになる。物語は徐々に緊張を高めながら、オックスフォードでの事件や、家族が抱える秘密の正体を読者にほのめかす。

著者のデイジー・ジョンソンは、1990年にイギリスで生まれ、小説家および短編作家として活動している。ランカスター大学とオックスフォード大学サマーヴィル・カレッジで文学とクリエイティブ・ライティングを学び、在学中からその才能は認められていた。彼女のキャリアを決定づけたのは、デビュー小説『Everything Under』(2018年)で、この作品は2018年のマン・ブッカー賞の候補となり、最年少候補者として大きな注目を集めた。この小説は、ギリシャ神話のオイディプス王の物語を現代英国に置き換えたもので、母娘の関係性や、登場人物が創り出す独自の言語、水辺の風景などが重要なテーマとなっている。

本作はフランスの俳優であり映画監督としても活動するアリアン・ラベドによって『September Says』(邦題:九月と七月の姉妹)として映画化され、2024年カンヌ映画祭「ある視点部門」でプレミア上映された。ラベドはヨルゴス・ランティモスと結婚していることでも知られ、その作風にランティモスの影響があるのかも含めて映画ファンから注目を集めている。この映画は日本では2025年9月に上映を控えている。

『Sisters』で表現されている、閉鎖的な空間で繰り広げられる家族内の緊張と、姉妹の歪んだ愛憎劇は、読者の好奇心を惹きつけて離さない。本書で描かれる「自己と他者の境界の曖昧さ」は、人が衝撃的な出来事を経験した際に現実への認知を大きく歪めてでも、自分を守ろうとする生き物であることを教えている。

参考資料:

youtu.be

Daisy Johnson (writer) - Wikipedia

Sisters by Daisy Johnson review – complex and chilling | Fiction | The Guardian

Review: 'Sisters,' By Daisy Johnson : NPR




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