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『Combee』ハリエット・タブマンが黒人奴隷を解放した軍事作戦に新たな光を当てたピューリッツァー賞歴史部門 受賞作

2025年ピューリッツァー賞歴史部門を受賞したエッダ・L・フィールズ=ブラックによる『Combee: Harriet Tubman, the Combahee River Raid, and Black Freedom During the Civil War』(コンビー:ハリエット・タブマン、コンバヒー川襲撃、そして南北戦争時代の黒人解放)は、アメリカの奴隷解放運動の象徴的人物であるハリエット・タブマンが南北戦争中に実行した「コンバヒー川襲撃」という軍事作戦に新たな光を当てた歴史書である。

1863年6月2日、サウスカロライナ州沿岸部のコンバヒー川において、ジェームズ・モンゴメリー大佐率いるサウスカロライナ第二志願兵連隊の黒人兵士たちと、ハリエット・タブマンおよび彼女の諜報員、斥候、水先案内人たちの支援を受けたユニオン軍(日本では一般的に北軍と呼ばれる)は、大胆かつ危険な襲撃を実行した。その目的は、南軍の食料庫として機能していたコンバヒー川沿いの主要プランテーションを攻撃し、重要な浮橋を破壊することであった。夜陰に乗じて3隻の砲艦(うち1隻は座礁)は川を遡上し、数時間のうちに7つの稲作プランテーションを炎上させ、756人の奴隷化された人々を解放した。著者は、この襲撃が「米国史上最大かつ最も成功した奴隷反乱」であったと主張し、新大陸の歴史全体で見ても、ハイチ革命に次ぐ2番目の規模であったと位置づけている。

本書は、地下鉄道の象徴「モーゼ」として広く知られるハリエット・タブマンの、南北戦争における極めて重要な役割を詳細に描いている。ユニオン軍に雇われたタブマンは、奴隷制の中心地であるサウスカロライナ州ビューフォートに入り、そこで暮らし、働き、コンバヒー川襲撃のための情報収集を行った。彼女は諜報員、斥候、水先案内人のネットワークを指揮し、敵陣後方での軍事行動に参加した。特に、コンバヒー川に敷設された魚雷の発見と除去において、タブマンのネットワークが重要な役割を果たした可能性を新たな資料に基づいて論じている。襲撃作戦は、解放を求めて逃れてきた人々からタブマンが得た情報に基づいて計画されたものであり、彼女の諜報活動が作戦の成功に不可欠であったことが強調されている。

本書の最も画期的な点は、コンバヒー川襲撃で自由を得た756人の奴隷化された人々に焦点を当て、彼らの声と人生を再構築したことである。著者は、ハリエット・タブマンの南北戦争恩給ファイル、売買証書、遺言書、結婚契約書、プランテーション所有者の財産文書といった、従来の歴史学ではあまり活用されてこなかった多岐にわたる資料に加え、南北戦争後の恩給申請ファイルや銀行口座、国勢調査などを入念に調査した。特に恩給申請ファイルは、退役軍人やその寡婦、隣人たちの証言を通じて、奴隷化された人々のコミュニティ内部の人間関係、結婚、出産、教会活動、さらにはゴシップに至るまで、彼らの日常や感情、思考をかつてないほど詳細に明らかにする宝庫であることを示している。

襲撃で解放された男性の多くは第2サウスカロライナ志願兵連隊に入隊し、サウスカロライナだけでなく、ジョージアやフロリダで奴隷化された他の人々のためにも戦い続けた。戦後、彼らの多くは解放された同じプランテーションに戻り、土地を購入し、結婚し、そして故郷で埋葬された。彼らの物語は、自由が単なる状態ではなく、継続的な闘争と犠牲によって勝ち取られるものであることを示している。

本書の特徴の一つは、著者が現在のコンバヒー川周辺で行ったプランテーション跡地の現場調査と体験を重視している点である。著者は、科学者や環境写真家と協力し、襲撃ルートの川を夜間に航行したり、かつて奴隷労働者が働いていた稲作地を裸足で歩き、泥に足を取られ、藻で滑り、ワニやヘビといった危険にさらされる状況を文字通り肌で感じた。これらの生々しい体験は、歴史的記述にリアリティを与え、自由を求めた人々がどれほどの物理的困難を乗り越えなければならなかったかを、読者に強く印象づけている。

著者はまた、襲撃対象となったプランテーションの現在の所有者たちと交流し、彼らの土地への立ち入りを許可されたことで、広大な風景と、かつてその土地で暮らした奴隷化された人々の生活空間との関係性を深く理解することができた。本書には襲撃現場や川、プランテーション跡地の写真が多数掲載されており、読者は視覚的にも歴史的空間を体感することができる。

著者エッダ・L・フィールズ=ブラックは、カーネギーメロン大学歴史学部の教授であり、同大学人文科学センターの所長を務めている。彼女自身も、サウスカロライナ州コレトン郡の稲作プランテーションで奴隷として働かされていたアフリカ系の子孫であり、彼女の高祖父もコンバヒー川襲撃に参加していたという。主な研究対象として、西アフリカの稲作農家、植民地以前のギニア湾岸の小作農、そして南北戦争以前のサウスカロライナ州およびジョージア州ローカントリーの稲作プランテーションにおける奴隷労働者の歴史を扱っている。

『Combee』は、単にハリエット・タブマンの功績に光を当てるだけでなく、コンバヒー川襲撃という歴史的出来事の重要性を再評価し、そこに隠されていた多数の奴隷化された人々の物語を掘り起こした一冊である。本書は綿密な学術研究でありながら、著者との個人的な物語も含まれており、その記述は読者を引き込む力を持っている。奴隷制という巨大な抑圧の中で希望を手放さなかった人々の姿は、現代に生きる私たちに「自由」の価値を問いかけている。

  • シンシア・エリボ

参考資料:

www.youtube.com

Historian Illuminates Crucial Chapter of Harriet Tubman's Legacy - Dietrich College of Humanities and Social Sciences - Carnegie Mellon University

Edda L. Fields-Black - Department of History - Dietrich College of Humanities and Social Sciences - Carnegie Mellon University




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