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『Hombrecito』コロンビアからアメリカに移民したクィアの少年の成長を描いた小説

2024年6月に刊行されたサンティアゴ・ホセ・サンチェスのデビュー小説『Hombrecito』は、コロンビアからアメリカへ移住した若いクィアの主人公サンティアゴが、異文化とアイデンティティの狭間で葛藤しながらも、少年期から青年期へと成長していく物語である。

物語はコロンビアのイバゲで始まる。主人公の少年(物語当初は名前が明かされない)は、放課後に母を待つが、彼女はまたしても現れない。「母であることを忘れていた」のだ。結局、異父兄が彼を迎えに来て独りで帰る寂しさから主人公を救い出す。少年は、手の届かない状況に秩序を与えようとする内省的な性格を持っている。父は不在で、メキシコのティエラ・カリエンテで長期間働いているとされている。少年と兄マヌエルは、母の帰還までの間、互いに支え合って生活する。やがて、母は父の帰還を諦めて戻ってくる。

その後、少年(名前はサンティアゴと明かされる)は、母と異父兄と共にアメリカ合衆国へ移住し、最初はフロリダ州マイアミに定住する。コロンビアでの生活は、母の決断によって一変する。新たな生活には、新しい言語や習慣への適応が求められる。母はかつて医師だったが、マイアミでは給仕として働く。次第に母は多忙となり、家から姿を消すようになる。サンティアゴは孤独と闘いながら、良き息子であろうとしつつ、自身の性的アイデンティティを模索していく。

成長とともに、サンティアゴは自身のクィアとしての在り方と、新天地アメリカでの生活を積極的に受け入れるが、その裏には喪失感がある。母との関係は次第に緊張し、強烈な愛情がしばしば痛みを伴うようになる。この母との関係が彼の選択全ての軸となる。母はかつて彼を忘れ、姿を消したにもかかわらず、彼は母を見捨てることはしない。

青年期に入ったサンティアゴはニューヨークへ移る。彼は複数の男性と関係を持ちながら、自分を満たしてくれる「何か」あるいは「誰か」を求める。このような性や欲望の探求は、自己の輪郭を確認するための手段であり、自己発見や自己承認への渇望の表れである。彼はそうして自分の人生をひとつの物語として形作っていく。

この小説は、サンティアゴの幼少期から青年期に至るまでの姿を描き、痛みや喪失の可能性に常に脅かされながらも、愛し愛されたいと願う一人の若者の心を鮮やかに、そしてユーモアと哀しみを込めて描く。移民、見捨てられた経験、そしてゲイとしてのアイデンティティがもたらす葛藤を描き出し、トラウマや分離が家族に与える影響を問う。

やがて、母から「一緒にコロンビアの家族に会いに行こう」と誘われ、サンティアゴは青年として祖国に帰る。この旅は、過去と現在を鮮烈に交差させる。彼は父と和解しようとし、母国や自分自身と向き合う。ここで初めて、母の秘密や彼女の複雑な感情、そして強烈な愛情が明かされる。著者はこの小説を執筆する過程で、困難な人生にもかかわらず明るさと愛を失わなかった母の強さを理解し、感謝の念を抱くようになった。サンティアゴもまた、母への理解を深めることで、自分自身への理解を深めていく。

この小説は、文化の狭間、自己認識の狭間にある若者の姿を描く。移民やクィアであることの「ここにも属さず、あそこにも属さない」存在感を掘り下げる。サンティアゴは、自分が完全に男でも女でもなく、こちらにもあちらにも属していないと感じる。この「中間性」の探究が本作の核をなしている。彼は過去と現在、コロンビアとアメリカ、スペイン語と英語、義務と欲望の間で引き裂かれている。

著者は、この小説はオートフィクション作品であり、自身の人生の出来事や人物を基にしながらも、あくまで「最も強烈な瞬間の感覚」を捉えることを目指したと述べている。主人公に自身の名前「サンティアゴ」を使ったのは、自分を具現化するための一つの方法であり、「自分自身であり、そうでない、その中間にあるもの」として探求するためだったと語っている。章は時間的な順序ではなく、著者が長期間にわたって書き溜めた短編や断片から構成されており、互いに呼応し合う形で繋ぎ合わされている。

「Hombrecito」(オンブレシート)という小説のタイトルには、いくつかの重要な意味が込められている。この言葉はスペイン語で「little man」(小さな男の子)を意味する。このタイトルには、単に主人公の幼少期を指すだけでなく、彼の置かれた状況、特に移民としての経験、クィアとしてのアイデンティティ、そして母親との複雑な関係性の中で模索し、内面に抱える役割や、文化や性別の間での中間的な状態を象徴している。

著者サンティアゴ・ホセ・サンチェスは、they/themという代名詞を使用するクィアのコロンビア系アメリカ人作家である。コロンビアのイバゲで生まれ、イェール大学を卒業している。『Hombrecito』はサンチェスにとってデビュー小説となる。現在、アイオワ、マイアミ、ニューヨーク、オハイオなど複数の場所に拠点を置いている。

『Hombrecito』は移動、喪失、欲望、セクシュアリティ、そして家族という普遍的なテーマを、移民やクィアとしての特異な経験を通じて深く掘り下げた作品である。断片化された構造や感覚的な文体は、主人公の意識や記憶の働きを巧みに反映しており、読む者に強い印象を与える作品となっている。

参考資料:

'Hombrecito': A Q&A with writer Santiago Jose Sanchez - Arkansas Times

BOMB Magazine | Santiago Jose Sanchez by Greg Mania




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