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『The Oligarch's Daughter』ロシア新興財閥の娘と恋愛関係になった男の生き残りをかけた逃亡劇

2025年1月に出版されたジョセフ・フィンダーの『The Oligarch's Daughter』は、偶然にもロシアのオリガルヒと接点を持ってしまった主人公による、生き残りをかけた逃亡を描いたサスペンス・スリラーである。

まず書名にも含まれている「オリガルヒ」という言葉について触れておきたい。この言葉は、ロシアやウクライナなど旧ソ連諸国が資本主義化する中で形成された新興財閥を指しており、「新興寡占資本家」と訳されることもある。汚職や政治家との癒着など、ネガティブなイメージが伴うことが少なくない。

物語は、ポール・ブライトマンという男が、過去を隠してニューハンプシャーの小さな町でグラント・アンダーソンという名前でボートの修理工として静かに暮らすところから始まる。かつてヘッジファンド・マネージャーだった彼は、ある事件をきっかけに、FBI、CIA、そしてロシア人オリガルヒから追われる身となる。

かつてポールはニューヨークでヘッジファンドを経営し成功していた。彼は写真家のタチアナと出会い、恋に落ちる。タチアナの父は、クレムリンとのつながりを持つオリガルヒ、アラディ・グルカンだった。ポールはタチアナとの関係を通してアラディのビジネスに関わるようになるが、FBIとCIAから圧力をかけられ、アラディの情報をリークするように強要される。その結果、FBIの要求を拒否すれば彼自身が窮地に陥り、協力すればオリガルヒであるタチアナの父に命を狙われるというジレンマに陥る。

ポールはグラント・アンダーソンと名前を変え、ニューハンプシャーの田舎町で過去を隠して生活していたのだが、運命は彼を放っておいてくれない。彼の居場所は突き止められ、5年間の静かな生活は終わりを迎える。

ポールはニューイングランドの荒野に逃げ込み、追手からの逃走を図る。彼は父親から教わったサバイバル術を頼りに逃げるが、準備不足や自然物を活用して生き延びるための環境を作る経験が不足しており彼の足を引っ張る。このように物語は、ポールが逃亡を続ける現在と、彼がタチアナと出会いオリガルヒの家族と関わる過去という、二つの時間軸で展開する。

フィンダーは、ロシアのオリガルヒの世界をリアルに描き出している。また、ポールが使用するサバイバル技術や、FBI、CIAの捜査手法なども詳細に描写されており、物語に説得力を与えている。ポールが追手を逃れようとして取る行動の中には、現金のみで生活することで政府機関に追跡されないようにすることや、連絡用と秘密保持用のiPhoneを使い分けたり、いざとなればiPhoneを岩で叩き壊すなど、現代のテクノロジーに頼りながらも最終的には原始的な手段に頼らざるを得ないことが描かれている。

本作は、単なるスリラー小説としてだけでなく、現代社会に対する批評としても読むことができる。フィンダーは、テクノロジーが進化し、監視が強化される現代において、個人の自由がいかに脅かされているかを鋭く描き出している。そこに実在するオリガルヒの存在が絡み合い、国際政治に翻弄される主人公を通して今の時代の複雑さを読者は追体験できる。

ジョセフ・フィンダーは、ベストセラー作家であり、数々の受賞歴を持つ。彼の作品は、緻密なプロットとリアリティ溢れる描写で知られている。幼少期をアフガニスタンやフィリピンで過ごし、ハーバード大学ではソ連政治を研究していたため、CIAにリクルートされた経験も持つ。1998年の作品『High Crimes』(邦題 バーニング・ツリー)や、2004年作品『Paranoia』(邦題 侵入社員)はそれぞれ映画化されており、特に後者はリアム・ヘムズワース主演、その脇をハリソン・フォードゲイリー・オールドマンが固めるという豪華な作りになっている。

フィンダーがオリガルヒの存在に注目した理由の一つには、ウクライナ戦争の影響があるという。それまでオリガルヒは億万長者、スポーツチームのオーナー、アメリカにおける芸術のパトロンであり、資本主義のプリンスのような存在だった。しかし戦争を境に、一夜にして「好ましからざる人物」(外交用語でペルソナ・ノン・グラータ)に転落してしまったという事実が、著者の興味をひいたそうだ。

『The Oligarch's Daughter』は、手に汗握るサスペンス、リアリティ溢れる逃亡劇、オリガルヒについての詳しい描写が凝縮された作品である。本書はエンターテイメント小説だが、物語を通じてロシアにおける「裕福」と「オリガルヒ的裕福」の違いを理解することができるだろう。かのスティーヴン・キングは本書について「ジョセフ・フィンダーの新作小説はどれも読む喜びを与えてくれるものだが、この作品は間違いなく彼の最高傑作だ。」とコメントを寄せているだけに、日本での出版が1日も早く期待される。




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