今回は2025年に発売される書籍から、各種メディアで言及されている注目作を取り上げます。数あるノンフィクション本の中でも、テクノロジー・自伝・評伝など個人的に興味のあるテーマに絞りました。発売日以降は著者の動向も含めて情報を追いかけていきたいと思います。
2025年1月28日に発売される『Superagency: What Could Possibly Go Right with Our AI Future』*1(リード・ホフマンとグレッグ・ベアーによる共著)は、AIを包括的かつ適応的に活用することで、どのように私たちの生活を向上させ、ポジティブな変化を社会にもたらすのか考察しています。AIに仕事を奪われるのでは?という懸念や、偽情報の氾濫など重大な課題を孕みつつも、社会全体にとってより良い結果を生み出すAIの可能性に注目しています。
本書はAIがもたらす可能性について、教育・医療・個人の目標といった多岐にわたる分野で具体的な例を挙げて解説しているようです。例えば、子ども一人ひとりの学習状況に合わせて個別指導を行うAI家庭教師、アルツハイマー病やがんなどの難病の治療法を迅速に発見するAI支援システム、複雑な構造を理解して個人の目標達成を支援するAIアドバイザーなどが取り上げられています。このように負の側面というよりは、AIが人間の能力を拡張し、より良い未来を創造する可能性を強調しています。
共著者の1人、リード・ホフマンはLinkedinの共同設立者であり、PayPalにも関わっていたことで知られています。名だたる企業の取締役や数多くの非営利団体の役員を務めています。人気ポッドキャストのホストも務めているそうで。そちらも気になるところです。
2025年4月15日に発売される『Matriarch』はティナ・ノウルズによる回顧録です。“ノウルズ”というファミリーネームでお察しの良い方はお気づきの通り、現在のブラックミュージック界に君臨するビヨンセ&ソランジュ姉妹の実の母親です。1954年にテキサス州ガルベストンで七人兄弟の末っ子として生まれた彼女は、美しいビーチのある街でモータウンの音楽が常に流れる賑やかな大家族で育ちました。しかし人種差別や女性であるがゆえに直面する限界を実感し、より壮大な世界を夢見るようになります。本書ではガルベストン出身の少女が、著名なヘアサロン経営者として、ディスティニーズ・チャイルドを商業的成功に導いた指導者として、慈善活動家としての現在の立場を確立するまでの、波乱万丈の人生を振り返るものとなっています。
書名となっている“Matriarch”という言葉は、英語で女家長を意味する単語だそうです。6人の孫の祖母であり、実の娘たち以外にもビヨンセの盟友ケリー・ローランドからも母と慕われている彼女にとって、まさにふさわしいタイトルと言えるでしょう。そして表紙のデザインも美しいですね。
最後に取り上げるのは2025年4月22日発売のスザンナ・キャラハン著『The Acid Queen: The Psychedelic Life of Rosemary Woodruff Leary』*2です。本書はローズマリー・ウッドラフ・リアリーの評伝です。と言っても誰それ?という感じですが、彼女はかつてティモシー・リアリーと結婚しており(彼にとっては4回目の結婚)、彼のサイケデリック研究の“ミューズ的存在”として知られてきたようです。しかし著者は数多くのインタビュー、日記、アーカイブ、未発表の資料などを駆使し、長年夫の陰に隠れてきたローズマリー・ウッドラフの人物像を新たに描き出しています。彼女は夫の単なる添え物ではなく、ビートニクとして、サイケデリック探究者として、自らの精神の限界と当時の女性の期待に挑戦し続けた、まさに「アシッド・クイーン」だったのです。
本書はローズマリーがカウンターカルチャーの最前線でどのように人生を過ごしたかを明らかにしています。彼女は夫の著書や講演の執筆、衣服の裁縫、そしてLSDに関してメディアでどのように語られるかに良くも悪くも大きな影響を及ぼしたようです。最終的に彼女は仲間と夫を政府から守るためにあらゆる犠牲を払うことになります。
著者のスザンナ・キャラハンは自身の難病の体験を綴った『脳に棲む魔物』(原書は2012年、邦訳は2014年出版)は『彼女が目覚めるその日まで』で2016年に映画化されており、2作目である精神医療の実態を調査した『なりすまし——正気と狂気を揺るがす、精神病院潜入実験』(原書は2019年、邦訳は2021年出版)はかなり骨太の医療ノンフィクションとなっています。プロフィールを見て驚いたのですが、彼女は1985年生まれの今年40歳とのこと。私とほぼ同世代ではないか…
以上、今回は2025年に発売される注目の3冊を取り上げました。皆さんの読書計画のお役に立つことを願っています。