2024年9月24日に発売されたサリー・ルーニーの『Intermezzo』は、アン・ポスト・アイルランド図書賞やバーンズ・アンド・ノーブルの年間ベスト本候補にもノミネートされた小説である。
主人公ピーターと弟イワンは、父親の死という喪失を経験し、それぞれ異なる方法で悲嘆に向き合う。ピーターは薬物やアルコールに溺れ、無意味な性的関係を繰り返すことで喪失感から逃れようとする。一方、イワンは年上の女性マーガレットとの関係に癒しを求め、彼女との愛を通じて喪失の痛みを乗り越えようとする。
本作では、さまざまな愛の形と人間関係が描かれている。ピーターは元恋人シルビアと肉体関係を伴わない友情を保ちながら、大学生ナオミとも肉体関係を結ぶという複雑な恋愛模様に巻き込まれる。イワンはマーガレットとの愛を通じて人間関係の温かさを実感し、精神的に成長していく。兄弟間の関係にも、愛憎が入り混じった複雑な感情が描かれている。
登場人物たちは喪失と愛という個人的な経験を通じて、自己と社会との関係について深く考えることになる。ピーターは弁護士として成功しながらも、社会における自分の立場や周囲の人々との関係に疑問を抱き葛藤する。イワンはチェスの世界から離れ、社会との関わりの中で自分自身を見つめ直す。
ピーターの章では、ジョイス風の意識の流れが取り入れられており、著者のこれまでの作品には見られなかった実験的な試みとして高く評価されている。この手法は、明確な主語や動詞を省略し、思考の断片をそのまま並べることでピーターの心理状態を鮮明に描き出している。読者はこの手法を通じて、彼の内面に深く入り込むことができる。また、著者はこの意識の流れの手法に加え、登場人物ごとの視点を切り替えながら物語を進め、それぞれの心情を丁寧に描写している。
著者サリー・ルーニーは1991年生まれのアイルランド出身で、作家および脚本家として活躍している。本作を含め、これまでに4作の長編小説を発表している。彼女はトリニティ・カレッジ・ダブリンで英文学を学び、アメリカ文学の修士号を取得している。ルーニーの作品は、人間関係の複雑さや社会問題を繊細に描く作風で知られている。自らをフェミニスト・マルクス主義者と称し、両親も社会主義者であったことから、幼い頃から社会主義的な価値観の中で育った。彼女の作品にはマルクス主義的な視点が反映されており、登場人物たちは高学歴でありながら経済的に不安定な状況で生活していることが多い。
ミレニアル世代の代弁者とも評されるサリー・ルーニーの最新作『Intermezzo』は、過去の巨匠たちから学びつつも独自のスタイルを確立しようとする試みである。主人公の兄弟を通じて、アイルランド社会に漂う疎外感や、社会構造、個人のアイデンティティといった複雑な問題に考えを巡らせる読書体験となるだろう。
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