
2025年のゴールデンウィーク、鏡に映った自分の姿に目を疑いました。
フルリモートのソフトウェアエンジニア。家から一歩も出ない日は珍しくなく、1日の歩数が200歩なんて日もありました。仕事終わりには去年ハマったクラフトビールで一日を締めくくる。コロナ前は68〜70kgだった体重は、気がつけば76kg。最大瞬間風速で78kgを記録していました。
35歳を目前に、「もうこんなものだろう」と半ば諦めかけていたのが正直なところです。でも、翌春に控えた息子の幼稚園の入園式のことを考えた時、ふと思いました。「昔着ていたあのスーツで行きたい。入らないのはわかっている、でも入るようになりたい。」35歳の誕生日、2026年3月、までに、大学入学当初の62kgに戻す。根性論ではなく、エンジニアとして仕組みで解決する。そう決めて、約10ヶ月のプロジェクトが始まりました。

結果から言えば、執筆の2026年3月16日時点で62.2kg。目標の62kgにはわずか0.2kg届きませんでした。でも、その0.2kgにこだわる気持ちはもうありません。この10ヶ月で手に入れたものは、体重計の数字よりずっと大きかったからです。
TシャツのサイズはXLからMになりました。コンプレックスだったなで肩は筋トレで低減し、慢性的だった肩こりもほぼなくなりました。健康診断の経過観察項目はゼロに。そして何より、秋には元々持っていたスーツを着ることができるようになっていました。
この記事では、その過程で何を考え、何を試し、何がうまくいって何がうまくいかなかったのかを、できるだけ正直に書いていきます。
まず測る
ソフトウェアエンジニアとして最初にやるべきことは明確でした。現状を数値化し、改善のフィードバックループを回せる 状態をつくることです。導入したのは2つのツールです。
- あすけん: 写真撮影でメニューを認識し、バーコード読み取りで栄養情報を取得してくれます
- Eufy製スマート体重計: スマホと自動連携し、毎朝の計測データがiOSのヘルスケアアプリを経由して、あすけんに流れ、摂取カロリーとの相関も確認できます

ここで大事だったのは、 日々の体重の上下に一喜一憂しない ことです。体重は単調に減るものではありません。水分量や便通で簡単に1〜2kg変動します。これを「ノイズ」と捉え、7日間の移動平均でトレンドを見るようにしました。後にジムで筋トレを始めると、トレーニング翌日に体重が増えることがありましたが、これは筋肉への水分取り込みによる一時的な現象だと理解していたので、焦ることはありませんでした。
毎朝体重を測り、摂取した食べ物を記録する。このルーチンを淡々と繰り返すうちに、自分の行動が翌日や翌週の数値にどう反映されるか、肌感覚でわかるようになっていきます。 体脂肪率なども見ますが、あまり意識しませんでした。家庭用の体重計だとあまり精確にはならないというのは聞いていたので、落ちているな、ということがわかればよしとしていました。
計測の準備はできました。減量のために変えていくこと。食事と運動のパートがあります。
脂肪1kgを落とすのに7200kcalのマイナスカロリーが必要だと言われています。10ヶ月で14kgの減量とするとおおよそ1ヶ月1.5kgだとして、単純計算にして、 7200(kcal) * 1.5 / 30(日)= 360kcal のマイナスカロリーが必要です。
体重70kgの人が30分のランニングやそこそこの強度の筋トレをして、たかだか300kcalの消費カロリーとなるため。確実に痩せていくには、まずは食事でしっかりセーブしつつ、運動の習慣を作る、ということになります。
なので、まずは食事、その後運動 です。
食事
減量において、基本的には、摂取カロリーよりも消費カロリーが上回っていれば自然と痩せます。そのうえで、リバウンドしないような身体づくりとしてPFC(タンパク質、脂質、炭水化物)のバランスというのが良く示される指標です。 あすけんでも、目標体重などを入力すると摂取すべきカロリーとそれを構成するPFCの目安のグラム数が表示されます。ただ、最初から全てを完璧に管理しようとするのは破綻します。
そこで取ったアプローチは、変数を絞ることでした。まずは「1日の総カロリー」と「タンパク質の摂取量」の2つだけに集中することになります。
本来はその上で脂質を減らして、残りを炭水化物で補うということが必要なんですが、これが非常に難しいので、一個ずつやっていくことにしました。
記録を続けるうちに、脂質に対する感度が上がっていきます。豚バラ肉、バターの多いパン、ウインナーなどの加工肉などの高脂質の食材がいかにカロリーを圧迫しているか、数字で見えるようになると自然と選択が変わりました。脂質を抑えることで、相対的に炭水化物を食べられる枠が生まれます。ご飯や麺を我慢しなくていいというのは、精神的にかなり楽でした。
禁止しない、帳尻を合わせる
「これは食べちゃダメ」と禁止するのではなく、 食べたいものを食べた上で帳尻を合わせる 運用を大事にしていました。夏に冷やし担々麺が食べたくなった時は、脂質が高いとわかった上で食べて、その日の他の食事で調整する。この柔軟さがなければ10ヶ月は続かなかったと思います。
フルリモートなので、飲み会もさほど多くはないですが、参加した際はあまり気にせずに飲み食いしていました。ただ、その前後で調整をするということができていました。 たかだか1000kcalオーバーしても0.2kgも増えないですし、少し頑張れば-500kcalは1日で取り返すことのできる現実的な数字です。
おたすけ食材
10ヶ月も続けていると、いろんなお助け食材に出会いました。いくつかおすすめを紹介します。
言うまでもなく、鶏むね肉は頼りっぱなしの食材でした。高タンパク、低脂質で安い。 鶏ハムにしたり、カレー粉と焼いたり、挽き肉のキーマカレーを8食分作り置きするのも定番になりました。鶏むね肉は焼くだけでも十分ですが、同じ食べ方ばかりでは飽きます。味の素の「プロテイン唐揚げ」のような市販品も織り交ぜながら、レパートリーを少しずつ増やしていきました。
高タンパク低脂質低カロリー!ダイエット中に!『激痩せキーマカレー冷凍弁当』の作り方 - だれウマ
最初期から最後まで変わらなかったのは、あたりめです。高タンパク・低脂質で、何より噛み続けることで満腹中枢が刺激される。デスクワーク中の小腹対策としてこれに勝るものはありませんでした。
主食はそばに頼る日が多かったです。低脂質で腹持ちがよく、ローソンの「かけそば」は272kcalでタンパク質20.7g、脂質わずか1.7gという驚異的なバランス *1 で、何度リピートしたかわかりません。セブンイレブンの「たんぱく質が摂れるチキン&チリ」も常連でした。
甘いものが欲しい時は和菓子を選びました。脂質を抑えつつ甘味を楽しめるので、セブンイレブンの「草もち」にはずいぶん助けられています。夏場はクリーム系のアイスを控えてかき氷系のアイス(100〜150kcal程度)をジム後のご褒美にしていました。「アイスボックス」に至っては全部食べても15kcalなので、もはやカロリー計算に入れる必要すらありません。一方で、冬から春にかけてはコンビニのイチゴデザートとの戦いでした。各社が力を入れる季節なので、新商品が出るたびに棚の前で葛藤する日々が続きました。
ご褒美には寿司を食べていました。脂質が少なく、魚のタンパク質が取れるので、ダイエット中でも罪悪感なく食べられる食事になります。炭水化物は少し多めになりますが、それは前後の調整で十分まかなえます。

コーヒーはほぼ0kcalなので普段の淹れる頻度が格段に上がりました。ただ、利尿作用も強いため同時に水分を多めに取ることを意識していました。
腸内環境
減量中の食事で最も重要なのは腸内環境です。きれいに書いていますが、便通、ガスです。 タンパク質の取りすぎで消化しきれず腸で腐敗しガスが溜まって異様に臭くなってしまう。食物繊維の不足で便通が悪くなってしまう。といったことが減量期間を通しての課題でした。
6ヶ月目にはタンパク質を1日150g摂ることを目指した時期があり、粉のプロテインをよく飲んでいました。結果、消化しきれなかったのか腸の調子が明らかに悪化しました。 結局、タンパク質の摂取量を「体重 * 1.6g」程度まで落とし、できるだけ実際の食事から摂る方針に切り替えました。身体のフィードバックを無視して数字だけを追いかけると、別の問題が発生する。当たり前のことですが、実際に体験して初めて腹落ちしました。
摂取カロリーとPFCバランスをメインに気にしていれば基本的に体重は落ちますが、野菜はあまりPFCに影響しないので食物繊維が不足しがちです。野菜を意識して食べると、食物繊維も取れますし、満足感も得られて良いですが、実際はなかなか難しいなと感じていました。 どうしても便通が悪いときは、酸化マグネシウムが含まれた便通の薬を飲み、水をがぶ飲みして出すということをしていました。(便が出ると如実に体重が落ちるのでそれはそれで嬉しいですが、あまりおすすめされる方法ではないです。)
運動
次は運動です。 いきなりハードな運動を自分に課しても続かないことは、過去の経験から知っていました。ランニングを習慣化するということを試みてきましたが、少し腰を痛めたり、寒くなりすぎたり、体調を崩してから戻れなくなったりするので、ハードな運動の目標を立てるのは長期間にわたる減量を考えると悪手でしかありません。なので、「歩数」を最低限の運動目標としていきます。
最初の目標は「運動着に着替えて、玄関の外に1歩出る」というミニマムなものです。「今日はやりたくない」という日でも、一旦着替えて外に出てしまえば、不思議と歩き始めてしまうものです。 という書籍から得たこの考え方には、この減量で何度も助けられました。代替寝かしつけたあとの夜に散歩をしています。
そうすると、徐々に8,000歩が定着するようになりました。その後10,000歩にベースアップ。1ヶ月目の終わりには、1日9,000〜10,000歩が当たり前になっていました。その後10ヶ月間、1万歩を下回ったのは数えるほどしかありません。 この歩数はApple Watchでの計上になります。外を散歩しただけでなく、家事、例えば料理、皿洗い、掃除は意外と歩数を稼ぎます。また、出勤の際は1,2駅を余分に歩くことに寄って歩数を稼ぐなどをしていました。
トレーニング
歩くことが習慣になった頃、次のステップとしてジムを導入しました。ここでも段階的に負荷を上げていくアプローチを取っています。
- chocoZAP(開始〜2ヶ月目): 暑くなってくる中、涼しいジムでのトレッドミルと簡単なマシンがある環境で、まず「ジムに行く」という行為そのものの習慣化
- ファストジム(3ヶ月目〜): フリーウェイトが使える環境へ移行。スクワット、ベンチプレス、ラットプルダウンなどBIG3を中心に、週3回の全身トレーニングを開始
- PPL 3分割法(7ヶ月目〜): プッシュ・プル・レッグスの3分割に移行し、一回のトレーニング時間を短縮。最終的に週4回・40分程度のトレーニングに落ち着く
特に筋トレは後半になるとボディメイクの目的が強くなりますが、Notionで挙上重量と時間を記録して趣味感覚になっています。
ちなみに、トレッドミルの時間は「ながら時間」として最大限活用しました。傾斜9度・時速5.5kmで歩きながら、Netflixのドラマやアニメを1.5倍速で観たり、Kindleの読み上げ機能で本を聴いたり、Podcastを聴いたり。退屈になりがちな有酸素運動が、むしろ楽しみや継続的なインプットの時間に変わったのは大きかったです。
トラブルもありました。6ヶ月目に右太ももの外側に痛みが出て、スクワットを中止せざるを得なくなりました。焦る気持ちはありましたが、痛みを無視して続ければもっと長い離脱になると考えてしっかり回復を待ちました。怪我をしても「全部やめる」のではなく「できることを続ける」そして長く続けることが減量において最も必要だと考えていました。
YouTubeという「メンター」
自分のダイエットに対する元々持っていた考え方は短距離走でリバウンドの可能性も高くなりがちな考え方でした。今回の減量を通じて学習し、長い目で見てしっかり痩せる、リバウンドせず、少し太っても取り戻せるようになる、という考え方を身に着けました。 そういった学習や停滞期やモチベーションが揺らいだ時期に、何度も助けられたのがYouTubeでした。中でも2人のYouTuberからの影響は大きかったです。
片倉岳人さんの動画は、ダイエットのモチベーション維持についてわかりやすく言語化してくれていて、何度も見返しました。特に「○○は心のプロテイン」という考え方には救われました。カロリーや脂質が高いものを食べてしまっても、心の栄養として必要だったと捉える。完璧を目指すのではなく、2〜3日のカロリー収支で帳尻を合わせればいい。この柔軟さが、10ヶ月間「やめなかった」最大の理由かもしれません。
バズーカ岡田さんからは、トレーニングと減量に対する科学的で現実的な考え方を学びました。「休むこともトレーニングのうち」という姿勢や、生涯を通じた健康維持の考え方は、短期的に体重を落とすことだけに目が向きがちだった自分の視野を広げてくれました。ダイエット支援プロジェクトの動画では、プロの指導のもとで体が変わっていく過程をリアルに見ることができて、「自分もやれるはず」というモチベーションにつながりました。
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数値と、数値では測れないこと

数値としてのBefore / Afterはこのようになります。
体脂肪率も順調に正常値まで減ってきているので、健康的に痩せられたということになるかと思います。
一方で、トレーニングを途中からそこそこやっているのにもかかわらず、筋肉量もかなり落ちています。
減量をするとどうしてもある程度の筋肉量は落ちてしまう、ということはのようです。
76kgから62kg。14kgという数字だけでも大きな変化ですが、体感としてはもっと劇的な変化がありました。
- Tシャツ、パーカーなどトップスのサイズが XL → M へ2サイズダウン
- ベルトは2穴分詰まり、結婚指輪まで緩くなった
- 腕やお腹に血管が浮き出るようになった
- 慢性的だった肩こりが消えた
- 健康診断の経過観察項目がゼロになった
減量5ヶ月目に当たる9月の会社の全社総会では、同僚に「見た目が変わりすぎて一瞬誰かわからなかった」と言われました。
そして、ずっとコンプレックスだったなで肩がなくなりました。肩周りの筋トレを続けるうちに肩のラインが変わり、Tシャツを着たときのシルエットが明らかに違う。減量は「余分なものを落とす」作業ですが、筋トレは「なりたい形をつくる」作業です。体重を落とすだけでは得られなかったボディメイクの効果が、長年のコンプレックスを一つ消してくれました。
モチベーションの変遷
最も大きな変化は数値でもなく見た目でもなく、自分の内面にありました。
ダイエットを始めた当初のモチベーションは「見た目を良くしたい」というシンプルなものでした。3ヶ月目あたりで顔周りがシャープになり、妻から「痩せたね」と言われるようになると、次は「目標体重を何がなんでも達成したい」という数値の達成感が動機になりました。

それが7ヶ月目頃から、「健康寿命をいかに長く保つか」「子供と一緒に楽しく長く過ごしたい」。30代半ばの父親として、自分の体をメンテナンスし続けることの意味を考えるようになりました。
エンジニアリングマネージャーとしての仕事にも影響がありました。マネジメント業務はフィードバックループが長く、自分の働きかけが成果として見えるまでに時間がかかります。一方、ダイエットは週単位で数字が動く。自分でコントロールできる変数がある。チームの状況やなにがしの数字はコントロールしきれなくても、自分の摂取カロリーだけは100%制御できる。この「自分で自分をマネジメントできている」という感覚が、仕事における自己効力感にもつながっているように感じます。
維持と、これから
62.2kg。目標まであと0.2kg。でも不思議と「惜しかった」という気持ちはありません。ダイエットは「終わった」のではなく、新しいフェーズに入ったと感じています。

0.2kgは誤差の範囲とも言えますし、数日あれば届く数字です。でもそれ以上に、10ヶ月前の自分と今の自分はもう別人だという確信の方がずっと大きい。体重計の数字がゴールだった時期はとっくに過ぎていました。
次の目標は、夏までに58kgまで絞ること。体脂肪率12〜15%のあたりを目指しています。ただ、体重を減らすことよりも、この10ヶ月で手に入れた習慣、毎日1万歩歩くこと、週4回ジムに行くこと、食事を記録すること、を「当たり前」として維持していくことの方が、よほど大事だと思っています。
振り返ってみれば、やったことは地味なことの積み重ねでしかありません。毎日体重を測る。あすけんに食事を記録する。運動着に着替えて外に出る。カロリーとタンパク質だけ気にする。特別なことは何もなくて、ただ「やめなかった」だけです。
もし今、同じように「もう歳だから」「フルリモートで運動なんて無理」と思っている方がいたら、まずは明日の朝、体重を測ること、運動着に着替えて一歩外に出ること、から始めてみてください。それが、10ヶ月後の-14kgにつながる最初の1歩になるかもしれません。
この記事は、約10ヶ月間にわたって毎月書いてきた振り返り記事をベースにしています。月ごとの詳細な記録に興味がある方は、以下もあわせてご覧ください。
- 1ヶ月目|76kg → 73.5kg
- 2ヶ月目|73.5kg → 72kg
- 3ヶ月目|72kg → 71kg
- 4ヶ月目|71kg → 69kg
- 5ヶ月目|69kg → 67kg
- 6ヶ月目|67kg → 66kg
- 7ヶ月目|66kg → 65kg
- 8ヶ月目|65kg → 63.5kg
*1:現在はかけそば単体はなくわかめそばをお試しください!