
学生の方から「やりたいことがない」「行動を起こせるほど興味があるものがない」という質問のような相談が出てくることがあります。
そうしたとき、最近は「やりたいことよりも、むしろやるべきことを考えてみてはどうでしょう」「何かできるところから始めてみてはどうでしょうか」「自分の内面の中から探すのではなく、外に目を向けてみては」と伝えるときがあります。
その背景を少しだけ説明します。
答えはだいたい外にある
スタートアップ向けの訓示の一つに、Get out of the building という言葉があります。建物の中でうんうんと考えていないで、ビルの外に出て顧客に会いに行け、という意味です。
頭だけで考えたビジネス仮説の多くは机上の空論であり、たいてい間違っています。だからビルの外に出て、顧客と話して検証したり、現場からより良い洞察が得ることが大事、というわけです。
同様に、自分のやりたいことを考えるときにも、Get out of the building をしたほうが良いのでは、と思います。
「やりたいことはなんだろう」と考えるのは、自分の内面や過去の中から探すことです。ただ、自分の中や過去にあるものは限られています。候補や在庫が十分にない中で探しものをしても見つからないのは当然です。
若ければ若いほど未体験のことのほうがずっと多いと考えると、いろいろな経験をするために行動をする、いわばビルの外に出るほうが見つかりやすいように思います(それをできる余裕がある人であればですが)。
もちろん、幸せの青い鳥が外にあるとは限りませんし、仮説もなく探し続けても見つかりづらいでしょう。探索もいつかはやめて、何かを選ばなければなりません。それでも20代ぐらいであれば、自分の内側ではなく、外を探すことのほうを優先したほうが良いのではとも思います。
「やりたいこと」を重視しすぎない
個人的には、自分のやることを決めようとするときに、「自分の興味関心」や「やりたいこと」が重視されすぎているのではないかとも感じています。
興味関心や「やりたいこと」を選択や行動の根拠にすると、自分の中や過去にあるものから選ぶことになります。でもそれは限られた選択肢の中から選ぶことでもあります。
それに、これらを重視するような風潮は、「自分には興味関心ややりたいことがないから何も始められない」と迷う人を出してしまいます。自分の中に理由を探しても、なかなか見つからない場合もあるのに、です。
そうであれば、興味関心が多少ある程度で構わないので、今の自分ができることや、少し頑張ればできることをやってみること、あるいは「自分が誰かに貢献できること」や「誰かがやるべきことの中で、自分でできるかもしれないこと」を考えたほうがいろいろなヒントが得られるのではないでしょうか。
つまり、自分自身の理由を探すためにも Get out of the building してみる、言い換えれば Get out of myself してみる、ということです。
そうした外の機会に目を向けてみれば、自分では思いもしなかった可能性を見つけられるかもしれません。むしろそうしなければ、可能性や選択肢は自分の想像力の範囲内だけに留まってしまいます。
個人的な体験としても、多くの面白い仕事は、そうした外からの引力に乗っからせてもらった結果出会った、想定外のものから生まれているように思います。たとえば学生の頃には政策などには全く興味がなかったのに、今では色々と調べるようになっています。
「やりたいこと」よりも「やるべきこと」
答えを自分の内面に探すのではなく、外に注意を向けてみること、つまり「答えはだいたい外にあるのではないか」と考えてみることは、一部の人の助けになるのではないかと思います。
もちろん全員が「やりたいこと」よりも「貢献できること」や「やるべきこと」を重視するべきだとは思いませんし、それで納得できる人も少ないかもしれませんが、そうした話を聞いて動き出せる人は一定数いるはずです。
振り返ってみれば、私の周りの起業家の方も、「自分のやりたいこと」よりも「やるべきこと」を重視してアイデアを選んだり、領域を決めている人が最近増えているような印象もあります。たとえば気候変動や交通などの社会課題に取り組む人たちなどです。
そういう人たちは、個人としてやりたいという動機も要素として含まれているのでしょうが、むしろ「これはやるべきだ」という理由のほうが大きいように思います。
そうした流れを見ていても、「やりたいこと」をそこまで重視せずに、外部をより重視して「やるべきことをやる」というやり方も是非一つの選択肢として考えてほしいなと思います。