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スタートアップは「時間」を読む

NotebookLM によるスライド

スタートアップが独特なのは、通常の会社とは異なる「時間」との向き合い方だと感じています。

スタートアップはVC等のリスクマネーを調達することによって、キャッシュフローや利益といった、経営上重要な短期の指標の制約を一時的に外すことができます。

これはある意味で、資金調達によって時間選択の自由度を得るということであり、この結果、普通の企業とは異なる時間軸の勝負を選ぶことができるようになる、ということです。

 

陸上競技を例にとって言えば、多くの企業が短距離走や中距離走を選ぶところを、スタートアップは得た資金を使うことで、あえて超短距離走や超長距離走を選んで勝つ、とも言えます。

こうした時間との向き合い方はあまり注目されていない印象ナノと、「時間軸の異なる勝負」には複数のパターンがあると感じているので、私が見ている限りの時間軸的アプローチをいくつか紹介しておきます。

 

(1) 超短距離走:短い時間で勝ちきる

(2) 超長距離走:長い時間をかけて勝つ

(3) 探索走:時間制約とゴールが分からない中で走り始める

(4) タイミング走:特定のタイミングで特定の位置を取る

(5) 番外編:流れのボトルネックを陣取る

 

アプローチ(レース)

概要

(1) 超短距離走:短い時間で勝ちきる

ネットワーク効果やロックインが強い市場で、短期間に顧客を取り切って決着をつける

プラットフォーム変化後のメッセージング(LINE)/オークション(メルカリ)/個人間決済の勝負(PayPayの物量戦)

(2) 超長距離走:長い時間をかけて勝つ

リターンが大きいなら、VC等のリスクマネーで長期の時間軸の勝負ができる

2015年からAGIに取り組んでいたOpenAI

(3) 探索走:時間的な不確実性に挑む

ゴールもタイミングも分からないが、勝てば大きいかもしれない探索的ゲームに挑む

需要リスクの大きなB2Cアプリなど

(4) タイミング走:特定のタイミングで特定の位置を取る

業界動向を予想し、未来で重要なポジションを取る。皆が短期(ホライゾン1)を見る中で中期(ホライゾン2)を先に仕込む

OpenAIが3年後に買いたがるような企業は何か?を考える

(5) 流れのボトルネックを陣取る

ワークフロー等の“流れ”の中で最大の摩擦(フリクション)=ボトルネックを押さえ、そこを解決して大きな価値を取る

Nvidia(GPU供給がボトルネック)/「次の次のボトルネック」

 

※なお、資金があるからといって、指標から無制限に自由になるというわけではなく、一時的に短期指標の枷から外れるだけで、中長期では帳尻を合わせる必要があります。その分、投資家には大きなリターンが求められますし、株式の希薄化等で相応のコストを払います。

 

(1)  超短距離走:短い時間で勝ちきる

最も分かりやすいアプローチはこれでしょう。

ネットワーク効果が聞きやすいビジネスやロックインが強いビジネスなどでは、「2年後までに顧客の大勢を取りきったほうが勝つ」といったことが起こります。たとえばプラットフォームが変わったあとのメッセージング(LINE)やオークション(メルカリ)などのサービスが該当します。

こうした状況はスピードが重要となり、身軽なスタートアップはこの戦いを比較的得意とします。さらに外部資金を得て資本を集中的に投下することで、短期間でゲームに決着をつける、というタイプです。

さらに大企業が気づく前にやりきる、という点も重要になります。たとえば個人間決済サービスの勝負で、PayPayの物量戦に勝てる日本のスタートアップは(国内のスタートアップへの資金供給が限定的という観点で)おそらくいなかったでしょう。

 

(2) 超長距離走:長い時間をかけて勝つ

スタートアップの良いところの1つは、リターンさえ大きければ、長期の時間軸で見ることができる、いうところです。VCという比較的長めの時間を待ってくれるリスクマネーを使うことでそうした中長期の勝負ができます。

多くの人は短い時間軸でしか勝負をしません。時間軸の長い勝負ができるだけで、他の人が挑めない勝負をすることができます。それが機会となります。

ただ、長い時間をかける分、投資家のリターンはかなり大きくなるように設計しておかなければなりません。その枠にはまる事業はほんの一部でしかない点には注意が必要です。

なお、VCもそこまで長く待てるわけではないので、場合によっては大企業の本体出資や財団などの資金を補給源として見方につけることで、より長期の勝負ができる可能性があります。2015年からAGIに取り組んでいたOpenAIはその一種だったように見えます。

 

(3) 探索・学習走:不確実性に挑む

ゴールもタイミングも分からない、けれどこのゲームに勝つと大きな報酬が入るかもしれない、という探索的なゲームに挑めるのがスタートアップの1つの特徴です。通常の企業はこうした勝負ができないため、競争が少ないという利点があります。

また不確実性が高いレースでは、どういったゲームのルール化が分かっていないので、そうしたときには学習を早くできた企業が勝つ傾向にあり、そうした学習が必要な場合も、資金調達をして時間を買って学習している、と言えるでしょう。

ただし、こうしたゲームの場合は、ゲームに勝利したとしても大きな報酬があるかどうかも分からないことがあります。たとえばその領域が成長するかどうかは自分たちの努力以外のところが大きいことが多いため、ある意味で運です。とはいえその運に賭けることができない人や企業が多いが故に勝ち目がある、とも考えると、そのリスクは甘んじて受けるべきなのだろうと思います。

なお、不確実性だけが高くリターンがそう大きくないことがある程度最初から分かっている領域もあるので、そうした領域は選ばないようにするのは大事です。 

 

(4) タイミング走:特定のタイミングで特定の位置を取る

業界の動向を予想して、その未来で重要なポジション取りをしておくことも、しばしば使われている時間的なアプローチの1つです。

似たような概念でホライゾン1, 2, 3 などの言葉がありますが、皆がホライゾン1(短期)しか見ていないところを、あえて今からホライゾン2(中期)を見て準備しておく、ということです。

より具体的には、今からゼロから始めるのであれば、「次の次」を考えることなどがあります。

これは他社の動きを見ながら、「他社はおそらくこう来るから、そこで重要なパーツや機能はこれ」といった予測をしたうえで、先んじて作り始めておくことです。たとえば、2025年末にNvidiaに実質的に買収された(厳密には買収ではないのですが)Groqへの投資メモなどでは、「GPUの次」の可能性に賭けたという内容になっています。

たとえば今なら「OpenAIが3年後に買いたがるような企業は何か?」を考えて、それを作っておくことなどです。より長期であれば、たとえば「2040年にEVのバッテリーが沢山出てくるだろうから、そこに向けて準備しておく」なども例としてあるでしょう。

このように考えておけば、数年後に良いポジションを取っておくことができます。

 

(5) 流れのボトルネックを陣取る

最後は少し色が違いますが、時間軸の中でも、ワークフローなどの「流れ」を意識する必要があるという観点です。

世の中には、面倒さや遅さなどの様々な摩擦(フリクション)があり、それを解決するために製品が提供されます。特にお金が集まるのは、社会や業界全体のフローの中で、最も摩擦が起こっているところ、つまりボトルネックです。それを解決できるのが1社しかなければ、そこには大きな利益が生まれます。たとえばNvidiaが良い例です。GPUの供給がボトルネックになっているからこそ、高いお金を払う人が大勢いて、会社は儲かります。

そのボトルネックを解決するために必要な技術を開発することが技術的に難しい(開発、量産など)、というのがこのアプローチの難しいところです。逆に技術が開発できたとしても、それがボトルネックやフリクションを生んでいない点にしか有効でなければ、その技術にはあまり高い市場価値はつきません。

さらにこれに「次の次」を考えることと組み合わせて、「次の次のボトルネック」を考えて、そこに予めアプローチしておくといったこともできるでしょう。たとえば数年前なら、AI➡推論が必要、と考えるだけではなく、AI➡エネルギーが必要、と考えて、エネルギーのスタートアップを用意しておくなどでしょう。

場合によっては本当のボトルネックがそこに移ることで生み出す価値の大きさの主従が逆転し、もともと勢いのあった事業者を買収するような動きを取り得るかもしれません。

 

まとめ

NotebookLM によるまとめ

この記事では時間の活かし方、という観点で整理しました。

どういうレースに挑んでいるのかや、資金を使ってどういう時間を買っているのか、というのを意識することで、自分たちの事業の一面が見えやすくなるのでは、 と思い、整理しました。

時間を読む、というのはある意味で「未来を想像する」ということです。抽象的な未来やビジョンといったものではなく、その未来がいつどういった形でやってくるのかをある程度読んでおき、そこに向けて作り始めておく、というのが、すべてではないにせよスタートアップの一つの戦法なのだろうと思います。






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