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目指す規模で異なるスタートアップの作り方

起業を考えるとき、その起業の結果として目指す「時価総額」と「期間」次第で作り方はずいぶんと違います。

数字だけを見ると、時価総額1億円から1000億円は連続的につながっており、事業も連続的に成長できるように見えます。たとえば売上が10億円に到達したら、100億円もこの調子で達成できると思える、というようにです。

しかし、選んだ領域によっては事業の伸びが「頭打ち」することも多いため、実際には目指している事業規模の桁ごとに、起業の際に考えるべきことは異なるように感じています。

 

例: D2C、Vertical SaaS、受託開発のよくある頭打ち

D2C の事業は、単一ブランドで年商数億円は比較的達成しやすい傾向にあり、事業の立ち上がりは早く見えます(もちろん、それでもかなりの苦労がありますが)。

ただ一方で、数十億円や数百億円に至るブランドを作ることはかなり難しく、売上の頭打ちも早くなる傾向にあります。D2Cは利益率も比較的低いため、1ブランドの展開だけで時価総額が100億円を超えることはかなり難しく、さらにその上の1000億円を達成することは物凄く難しい、という計算となります。

なので、この場合、もし企業の規模を大きくしていきたいと願うなら、複数ブランドを前提とした事業の作り方を最初から考えておく必要があり、初期からその準備をしておく必要があります。

 

国内市場向けの Vertical SaaS なども同様で、対象となる市場と取れるシェア(B2Bだと高くて恐らく20-30%程度)を考えると、売上の限界が見えてきて、届きうる時価総額の上限も見えてきます。より上の規模を目指すには、複数事業・製品を作ることやプラットフォーム化を初期から考える必要があります。

そのため、そもそも最初に参入する事業が今の事業で良いのか(最初の製品が次の事業・製品につながるのかなど)を考えたり、第2弾の製品を成功させるために1~2年の実験期間が必要と考え、早期からその仕込みを行っておくなど、初期から考えるべきことや取り組むことが違ってきます。

 

ソフトウェア開発受託も立ち上がりが早いビジネスです。しかし、ソフトウェア開発受託の企業の時価総額は売上の1~2倍程度であり、100億円を超える時価総額の企業を作ることはかなり難しく、さらに受託での学びを活かしてプロダクトにできたとしても、単一プロダクトだけだと上述の Vertical SaaS のように頭打ちが来てしまいます。

そうなると、受託から始めるにしても、大きくしたいなら『次のその次』を考えてからそのビジネスを始めるなど、初期から作り方や立ち上げ方を変える必要があります。

 

もちろん単一製品や単一事業で着実に伸ばしていく事業にも価値があります。ただ、東証グロース市場に上場して更なる成長をしていくような企業を目指すのであれば、会社の作り方は目指している時価総額の桁ごとに断続的に異なる、ということを考え、起業の方針なども変えていくほうがよいでしょう。

 

桁が違うと作り方も違う

日本の東証グロース市場においては、時価総額 300 億円程度であれば、機関投資家の投資検討対象になると言われています。

そこで300億円を中心にして、桁ごとに事業の作り方が違うと整理すると、起業の方法論も見通しが良くなるように思います。

  • 3000 億円~
  • 300 億円 ~ 3000 億円
  • 30 億円 ~ 300 億円
  • 3 億円 ~ 30 億円
  • ~ 3 億円

ある意味、その起業がハイグロース・スタートアップかどうかを見分けるときに、時価総額 300 億円を超える会社を作ろうとしているかどうかを一つの分水嶺と考えると、現在の日本のスタートアップエコシステム的には収まりがよくなるように思います。

(結果的にそれ以下の時価総額になるかもしれませんが、少なくとも狙っているかどうか、という観点です。)

 

業種によって違う

ここまでは規模の話でした。一方、挑む業種ごとによっても初期から考えることは異なってきます。

たとえばITとディープテックは違います。そして、ディープテックの中でも医療・創薬とその他は大きく違うため、これらは分けて考えた方が良いように思います。

  • IT
  • ディープテック(医療・創薬)
  • ディープテック(医療・創薬以外)

そしてここまでの議論で、目標時価総額と業種の掛け算で分類すると、以下のような表を作ることができます。

目標時価総額

IT

ディープテック(医療・創薬)

ディープテック(医薬・創薬以外)

3000 億円~

 

 

 

300 億円 ~ 3000 億円

 

 

 

30 億円 ~ 300 億円

 

 

 

3 億円 ~ 30 億円

 

 

 

~ 3 億円

 

 

 

 

偶発的か意図的かでも違う

さらにもう一つ区分けしたいのは、その事業の成長を、偶発に賭けるか、意図して取り組むかです。それぞれグラデーションだとはいえ、どちらかの傾向かはあるように思います。

たとえばプラットフォームや技術の大きな変化があり、「何が当たるか分からない」というときには偶発性に賭け、「数を撃てば当たる」というような数多くの挑戦をしていくことが最適解になるでしょう。実際、そうした挑戦がスタートアップに求められている面はあるように思います。

ただし、その際にもソフトウェアや研究開発の受託ビジネスだと上限があるので(律速が人材数になる等)、その先を見据えておくか、プロダクトで数を打ちに行くことを狙いに行く必要はあります。

一方、意図的な起業であれば、どの時価総額を目指して作っていくのか、というのをよく考えて、そのうえで最初の一歩を踏み出す必要があるようにも思います。

この軸を上述の表に加えると、以下のような表になります。

目標時価総額

 

IT

 

ディープテック(医療・創薬)

 

ディープテック(医薬・創薬以外)

 

偶発的

意図的

偶発的

意図的

偶発的

意図的

3000 億円~

 

 

 

数を撃つ

 

 

 

 

 数を撃つ

 

 

 

 

 数を撃つ

 

300 億円 ~ 3000 億円

 

 

 

30 億円 ~ 300 億円

 

 

 

3 億円 ~ 30 億円

 

 

 

~ 3 億円

 

 

 

 

支援の方法も違う

ここまで起業の方法論を考えながら、いくつかの区分けをしてきました。

こうした区分けをすることは、支援側にとっても重要だと考えています。どこを目指した起業なのかによって、起業の方法論や、初期に考えるべきことも変わり、その結果、支援の在り方も変わってくるからです。

気をつけたいのは、どの規模の事業を立ち上げようとも、事業の立ち上げの初期は、客観的に見える行動だとおおよそ同じだということです。やることは仮説検証と製品開発だからです。

ただ、その行動の裏にある考えはずいぶんと違ってきます。

それに、支援側としてもどういった規模感の会社を支援しようとしているのかを明確にしていないと、支援している中で、起業家の目指す事業規模の桁を落としてしまうような支援やアドバイス(まずは着実に稼ぐ方が良い、など)になってしまうこともあるように思います。

また偶発的に大きくなることを狙うときであっても、その起業形態については、「本当に大きくなりうるのか」を考えて、支援していく必要があるでしょう。

 

どこの支援を増やして、どこの起業を増やすか

話は少し変わり、日本のスタートアップ・エコシステム全体で見たとき、最も希少なリソースは挑戦する起業家のように思います。

日本の年間開業数は15万件程度と言われていますが、その多くは急成長を目指すスタートアップというわけではありません。

年間のシード投資の件数は毎年約1000件弱程度を推移してきています。投資に至らなかったケースや、投資を受けずに急成長する道を選んだ会社のことを考えると、スタートアップ的な起業は年間おおよそ2000社程度と推定できます。

この年間2000の挑戦を、上記の表のどのボックスに配分するかが、ハイリスクな事業領域における日本全体のイノベーションのポートフォリオを構築する、ということなのだろうと思います。

たとえば、3000 億円~ という最上位のボックスは、恐らく成功確率が低いところもあり、200の挑戦は振り分けたいが、それができているか、などを検討するということです。

実際は意図的に配分することなどはできないので、どのボックスに起業家を誘引するインセンティブを付けるか、をエコシステム全体で最適化していくことになります。

 

それにエコシステム全体へのリターンは、

 起業数 × 成功確率 × 成功時の大きさ

でおおよそ決まります。

起業数や成功確率は、頑張れば 10 ~ 20% は上げられるかもしれませんが、それ以上はかなり難しいように思います。実際、市況が良かったこの数年であっても、劇的にシード投資の数が増えたわけではありません。だとすると、スタートアップの起業数を今後劇的に増やすことはかなり難しいと考えた方が良いでしょう。

アメリカは雨後の筍のように起業家が出てくるほか、駄目なら会社をさっさと閉じて次の挑戦に移るような、数を撃つことに適したエコシステムが形成されているように見えますが、日本はハイグロース・スタートアップに挑む起業家の数もそこまで多くなく、一つの挑戦を長く続ける傾向にあることを考えたとき、「数を打つ」ことに頼る戦略は日本には適さないように思います。

成功確率も 20% は上げられるかもしれませんが、それを最大限上げられたとしても、現在求められているスタートアップエコシステムへのリターンには届かないのでは、と思います。

となると、成功時の大きさを上げる取り組みをしていく必要があります。つまり、ボックスとして最上段にあるところです。

そしてその領域に行けるかどうかは、アイデアのフェーズ等、企業のかなり初期の方に決まってしまうようにも思います。

そうしたことを考えた上でも、私個人としては 3000 億円以上を意図的に狙うような起業家の皆さんに対する、超初期の支援を通して、その方法論を模索していきたいと考えているところです(以下の図の赤いところ)。

 




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