以下の内容はhttps://blog.takaumada.com/entry/rfs-for-aging-societyより取得しました。


「日本の 6 つの高齢化」に挑むスタートアップを考える ―― 人、インフラ、産業、非営利、制度、思想

広い意味での「高齢化」にどのように対処していくのか、という日本が直面している課題が、ハイグロース・スタートアップヤスタートアップ的な活動の次の領域になり得るのではないかと思っています。

具体的に挙げると、

  1. インフラ
  2. 産業
  3. 非営利
  4. 制度
  5. 思想

の 6 つの重要な領域での高齢化(老朽化)が起こっており、これらによって起こっている各種課題を、スタートアップ的なアプローチで解決に貢献することができないか、ということです。

 

これら6つの領域はそれぞれが単独というわけではなく連鎖しています。文字では一方向しか表せませんが、たとえば

人の高齢化 → 労働供給不足 → インフラ更新難 → 地域縮退 → 非営利負荷増 → 制度更新負荷増 → 思想の分断→ さらなる社会的負担

と問題同士が関連する構造になっているため、これらを同時に解いたり、同時に緩和していかなければなりません。

NotebookLM による課題のまとめ

そのためには、それぞれの領域で、大きなインパクトをもたらしうる解決策――スタートアップ的な解決策――を作る試みが必要だと思っています。

この記事はそうした考えを背景とした私個人の現在の問題意識の一端であり、言うなれば、Requests for Startups (RFS) であり、Problem Statement であり、そして同じような問題意識を持つ仲間を捜すためのブログ記事です。

 

注記 (1) これらはあくまで例であり、これがすべての問題意識というわけではありません。もう少し世界的な課題もありますし、ビジネスとしては人間の欲望に基づくような課題領域もあると思います。念のため…。

注記 (2) 人や社会が年齢を重ねることは悪いことだとは思っていません。それだけ無事に生きながらえてきたというのは、むしろ素晴らしいことです。しかし何事も年を経ると、問題は不可避的に起こります。人間が高齢化すれば体に不調は起こりますし、社会でも摩擦は起きます。そうした高齢化とその症状としての問題が発生することを現象として認めた上で、それらにうまく対応していくことで、私たちはより健やかに生きていくことができるのであれば、うまく問題を解決したい、ということであり、高齢化=悪と認識しているわけではないことは最初に注記させてください。

 

NotebookLM によるまとめ

長いのでスライドでざっくり掴みたいとき用です。

 

 

(1) 人の高齢化

❓ 何が起きているのか

2025年時点で日本人の中位数年齢(中央値)は49.8歳となり、この数年は年間0.4歳ずつ上がっているなど上昇傾向にあります。65歳以上の人口については、既に29.4%が65歳以上を超えており、2045年には36%を超えると予想されているなど、今後数十年にわたってさらに高齢化が進むことはよく知られています。

 

⏩ 今後何が起きるのか

こうした高齢化は、労働供給の劇的な不足を引き起こします。

高齢者であっても消費者としては残りますし、介護や医療といった一部の需要は増えるため、総人口の減少に比べて、働き手は総体的に減少幅が大きくなる傾向にあるからです。(さらにいえば、働く高齢者がいたとしても、1人あたりの労働時間が減る傾向にあるのと、職種のミスマッチが発生しやすくなります。)

加えて高齢化に伴って、スキルと地域のミスマッチも増える傾向にあり、総労働投入量とスキル、労働力の地域配置にギャップが生まれやすくもなります。

この詳細については『供給力という課題を解く』という記事で書いたので、そちらをご覧下さい。

 

❗ どう解決するか

この点では、

  • 社会維持を少人数で行えるような技術や事業を発明すること
  • 少人数で高い付加価値を生み出せる産業を発明すること

が求められます。単に目の前の問題解決をするのではなく、「大幅に効率的・効果的な方法や仕組みを発明していく」という点が、「人の高齢化」に対するスタートアップへのリクエストとなります。

「大幅に」というところがポイントで、ツール提供などのちょっとした効率化や、人材紹介の効率化などによる流動化を考えるのではなく、価値を生む方法を見直して、やり方を考え直すぐらいのことを考えていかなければならないのがこの領域だと思っています。

 

📢 Requests for Startups

以下ではサンプルとしてアイデアを出しますが、そこまで深く考えているものではないので、あくまで例としてお考えください。

  • 介護・医療供給を、増員ではなく生産性全体で+50%以上引き上げるケアシステム
  • 高齢者を「低単価労働力」ではなく、経験をレバレッジして価値を出す能力増幅
  • 一部領域の研究開発の自動化

そのほか、(2) インフラや (3) 産業などで挙げるものも、こちらのカテゴリになります。

 

(2) インフラの高齢化(老朽化)

❓ 何が起きているのか

道路、橋梁、上下水道、公共施設(市役所、学校、公営住宅など)のハードウェア的なインフラは、日本では1960年から1970年の高度経済成長期に一気に建てられました。これらが一気に耐用年数を迎えつつあります。たとえば水道は40年、下水道は50年、建築物は約50年などの目安がありますが、既に越えつつある状況です。

ただし、こうしたインフラは耐用年数が来たら必ず更新する、というわけではなく、実寿命や重要度とリスクを考えて、延命・更新・統合・廃止などを判断することになる&期待耐用年数を長くする長寿命化やピークを分散させる平準化も行われているので、今すぐ、というわけではありません。とはいえ長くしても80年などが多いため、まさにこれから更新が始まっていく、という段階です。実際、更新費用捻出のための料金の段階的な値上げも始まりつつあります。

 

⏩ 今後何が起こるのか

インフラの更新の時期と時を同じくして、日本は「人口減少」により、以下の2つの課題を抱えることになります。

①労働供給不足

②人口密度減少

①については、インフラの刷新が増えてくるタイミングで、スキルや地域配置のミスマッチなども含んだ労働供給が不足します。現時点で既にノンデスクワーカーの労働供給は逼迫しているのに、こうしたインフラ更新の需要がさらに増えれば、費用は高騰しますし、技術者も足りないことが想定されるので、「お金はあっても人がいない」という状況も起こりえます。それにインフラの今後の判断をする自治体も人手不足という状況なので、調達もままならなくなるでしょう。

②については、地理的な人口の密度が減ってきても、インフラの修理や維持のコストはそう変わりません。現在の地域のインフラの維持費用も、都市の税収を再分配することでなんとか支えている状況です(『風の谷という希望』では、とある街の1人あたり年間約260万円の公費が投入されているという試算もありました)。これを今のまま維持することは難しいので、インフラの維持・刷新と同時に、どこを縮退するか、という議論が必要となります。単にインフラを更新・増強すればいいというわけではないのが問題をさらに難しくします。

さらに②の人口密度が減ることは、交通、医療・介護、教育、衛生、公共サービスなど、生活インフラとも言えるサービスのコストもかなり高くなるということでもあります。そしてこうしたサービスが消えると雇用も失われ、さらに人が離脱して、人口密度が減るという悪循環になります。そうして密度が減った地域では、昨今のクマの問題のように、安全維持のコストが高くなることもあります。

一方、人の受け皿となる都市は都市で、多くの人がアフォーダブルに住める環境作りや、東京に頼らない税収を作っていく必要があります。

 

❗ どう解決するか

一部の地域では縮退やサービス水準の低下をしていかなければならず、完全に今の生活水準を維持することは難しいと考えます。政治や合意形成の難しさを乗り越えて縮退を実現していかなければ、負債が増えていくだけです。

しかし一方で、十分に安いコストで維持管理や刷新ができるのであれば、縮退の範囲を小さくすることもでき、政治や合意形成のコストを下げることもできます。これは技術や事業によって政治が規定される一種でもあります。

よって、

  • 低コストで生活インフラを維持するための技術・事業開発
  • 都市をより安価に住みやすくする技術・事業開発

がスタートアップへのリクエストとなります。

これはソフトウェアだけで完結する話にはならないため、ハードウェアを絡めて何かをしていく必要がある領域のように思います。また生活インフラは1つでも欠けると生活できないので、総体的に揃えていく必要があります(たとえば上下水道がなんとかなっても電気がないと生活できないなど。1社で全てする必要はありませんが)。

一方で、これらはインフラの刷新のタイミングで、新しいインフラを入れていく機会にもなるのではと思っています。こうしたタイミングで新しい像を描くことができないか、とも考えています。

なお、これらは単に「こうしたインフラ問題に(うっすらと)貢献しています」という事業を作る、というわけではなく、経済的・技術的な数値目標を置いて、大きなインパクトを目指していかなければならない問題のように思います。

 

📢 Requests for Startups

  • 分散・モジュール型のユーティリティ提供(水、熱、電気など)
  • インフラの遠隔点検サービス+予防保全の保険を合わせたサービス
  • 自動運転等の技術+α(金融、路面太陽光、無線給電等)などによる交通サービス提供
  • 介護サービスの垂直統合(建物・保険含む)
  • アフォーダブル都市住宅の提供(金融+運用サービス+規制との折衝込み)

 

(3) 産業の高齢化

❓ 何が起きているのか

新規参入が少なく、退出・再編が遅く、設備・IT投資(とくに更新投資)が停滞している状態を「産業の高齢化」と呼ぶとしたとき、日本ではその傾向が強いと言えます。

産業の新陳代謝やビジネス動態が弱い背景には、

  • 新しい産業や事業が育つ速度
  • 退出・再編が起こる速度
  • 新しい産業への労働移動の速度

が相対的に遅いことがあり、全体としてダイナミズムが弱い状態です。

本来は、高付加価値を生み、海外市場でも稼げる産業を育て、その収益を国内の投資・賃金へ還流させることが求められます。しかし、日本の内需の伸び悩み見通しや、グローバル化に伴う現地生産の進展によって、日本国内での設備投資や賃上げが進みにくい状況が続いています。その結果、

  • 設備・システムの更新が遅れる
  • 生産性が伸びず、投資が弱まり、さらに設備の更新が遅れる

という悪循環が起きやすくなり、新しい事業(スタートアップを含む)が社会実装・拡大しにくい環境となっています。

一方、サービス業では、高付加価値産業の育成の遅れ、低賃金構造によるソフトウェア投資等のインセンティブの少なさ、「おもてなし」による過剰サービス、個別最適な受託開発の志向などが重なり、標準化・ソフトウェア化による生産性改善が進みにくい状況がありました。

本来、こうした停滞に風穴を開け、次の産業を作る役割がスタートアップに期待されていたはずですが、十分に応えられていなかった(あるいはそうした領域をそもそも狙っていなかった)という面があります。これには大きな反省があります。 

 

⏩ 今後何が起こるのか

労働力不足が進むと、社会の維持に必要な領域へ相対的に人手が取られ、残りの人員でより多くの付加価値を生む構造が不可欠になります。

同時に、人手不足は統廃合・共同化・標準化を促し、再編のインセンティブを強めます。「国内では大企業でも、グローバルでは中堅規模」という企業も多く、投資や機能が分散した領域では、規模の経済を効かせる動きが進みやすくなるでしょう。

これからの局面では、DXとGXは「できたらやる」ではなく、「やらないと産業として維持できない」テーマとして前に出てきます。 

 

❗ どう解決するか

必要なのは、①各産業の再構築(再編)と、②新産業の創出を同時に進めることだと思っています。特に労働力が減る局面では論点が単純化し、「ある程度の人数で大きく稼げる企業・産業」を作れるかに集中できます(雇用創出“量”の比重が相対的に下がります)。

産業の再構築では、デジタル前提でワークフローを作り替え、現場実装までやり切る主体が必要です。スタートアップもツール提供に留まらず、顧客に届く価値(最終財・サービス)まで含めて設計し直す役割が求められるようになるでしょう。

新産業の創出では、SpaceXやOpenAIのように、周辺の企業・人材・資本を呼び込み、産業横断で波及する基盤となるような企業の構想が重要になります。たとえば、単なる「生成AI活用」ではなく、生成AI級に周囲の企業群を作っていくような規模で大きくなる企業や産業を作っていく試みが必要なのだろうと思っています。

 

📢 Requests for Startups

  • 各業界でのロールアップと垂直統合+モダナイゼーションを組み合わせた取り組み(スタートアップではない可能性は高いですが)
  • 各業界でのデジタルを前提としたワークフロー改変+垂直統合による取り組み
  • 設備更新の成果連動・保証付きの導入金融事業
  • 産業間の労働移動を制度・運用まで含めて高速化するインフラ 
  • 2045年頃に大成する産業の構想

 

(4) 非営利の高齢化

 ❓ 何が起きているのか

1995年の阪神淡路大震災が「ボランティア元年」と呼ばれ、1998年のNPO法成立・施行以降、非営利セクターの裾野は広がってきました。

一方で現在、そこから約30年が経ち、NPO法人(認証法人)数は2017年頃を境に減少傾向にあります。活動の器がNPO法人から一般社団法人等へ移っているケースもあり、法人数の増減だけで非営利全体の活力を断定はできませんが、現場で聞く声としては、理事・事務局・中核ボランティア等の「担い手」の高齢化や、若手・ミドル層の継続参画の難しさが、複数の領域でボトルネックになりつつあるようです。

また、従来から非営利セクターは公的サービスの隙間を埋める補完的役割を期待されてきましたが、社会課題は多様化・複雑化しており、公民ともに十分に対応できているわけではありません。外国人の若者の方も増えました。単身者増や地域コミュニティの希薄化によって、自然発生的な互助・共助ネットワークも弱体化しつつあります。結果として、非営利への期待は増える一方で、担い手・運営能力が追いつきにくい構図が強まっています。

その一方で、NPOの経営基盤は脆弱なままです。1つの理由として、短期・用途指定型の資金が中心になりやすく、間接費・基盤投資(採用育成、会計・労務、IT、ガバナンス整備等)に十分割けていないという構造があります。また、現場が案件対応に追われることで、中長期の基盤整備が先送りされ、結果として非効率が固定化してさらに案件対応に時間が取られる、という悪循環も起こっていると聞きます。

また、インパクト投資等によって、受益者負担が可能な市場に近い領域には資金が増えつつある一方で、受け皿となるNPO側の経営基盤が十分に育っていない状況は、本来生まれるはずだった社会的インパクトの機会損失にもつながり得ます。

 

⏩ 今後何が起きるのか

人口構造や財政制約を踏まえると、分野によって濃淡はありつつも、公的サービスの縮小・再編が進む可能性があります(このあたりはReadyforさんのインパクト研究所の記事などをご覧下さい)。

そうなると公共セクターから非営利セクターへの期待は増しますが、気をつけなければならないのは、非営利側も同様に人手不足に直面するということです。産業・市場でも人材獲得競争が激しい現状を考えると、非営利領域では特に、専門人材・マネジメント人材の不足や、地理的ミスマッチ(地方ほど担い手不足が顕在化)がより起こりやすいことが想定されます。

さらに、SNS等で可視化されている環境を見ると、非営利セクターにあたりが強くなっていることを感じます。もともと日本人は慈善団体への不信感が高いというデータもあったり、NPOの数が少ないので1つの団体が不正を働くと全体への風評被害がある、といったこともあるのではと思います。

こうした状況が続くと、健全な活動が萎縮したり、新規参加や寄付・協力の流入が細ったりするリスクがあります。

 

❗ どう解決するか

従来型の非営利セクターの方法(サービス提供等)にも価値があるし、もっと数が増えることで市場の外にある課題がもっと解決できていくことを期待していますが、一方で現状の構造のままでは厳しさが増していくのではと思っています。

よって構造の転換を試みる必要となり、具体的には

  • 大きな社会的インパクトを出す志向性を持つ
  • 共通基盤の整備(デジタル基盤の整備やコンプライアンスへの準拠促進、非営利セクターの担い手を育てる仕組み、インパクト評価の仕組みなど)
  • 非営利セクター全体の信認を得るような活動+流入を呼び込み活動

など、従来とは異なるアプローチをしていかなければならないと考えています。

加えて、営利で解決できる領域は市場の力(営利・官民連携)を活用し、非営利は市場でこぼれやすい領域に集中できるよう、全体最適の設計も進めるべきでしょう。

 

📢 Requests for Startups

営利のスタートアップではなく、非営利の領域で「モデルを複製・展開できる形」や「大規模な社会的インパクトを起こせる取り組み」など、社会的インパクトの急成長を目指すスタートアップ的な活動が必要ではないかと思ってまとめています。

  • 共通基盤を整備し、一気に広めるための活動(共通BPOの提供、SaaSなどの開発、人材育成と人材の流入設計)
  • 非営利セクターに新しい資金(国内外)の流入と使途制約を外す(Trust-based Philanthropy など)等を促す活動
  • Focused Research Organization などの新しい社会的仕組みの開発と提案
  • AI-Native なシンクタンク機能の開発とパブリックアクセス

そのほかの関連記事も挙げておきます。

 

blog.takaumada.com

 

blog.takaumada.com

 

 

(5) 制度の高齢化

❓ 何が起きているのか

制度は安全性や公平性、外部不経済の抑制を担う重要なツールです。市場は完璧ではなく、再分配にも適していないため、様々な制度が必要です。

制度は高齢化します。ここで言う「制度の高齢化」とは、制度それ自体が古いというよりも、制度が前提としている社会・人口・技術・産業構造が変わり、目的に対して手段(ルール、手続、執行体制)が合わなくなって、古く見えてしまう、状態だと捉えています。

たとえば社会保障制度や税財政、インフラの維持管理・縮退、産業構造の転換などは、人口構成等の社会の変化に対して、設計や運用の更新が追いつきにくい領域です。結果として、制度が現状の課題と合わず、不満が溜まる局面も生まれやすくなります。

 

⏩ 今後何が起きるのか

社会構造の変化が加速するほど、制度が前提とのズレを起こす領域は増えます。さらに、新しい技術・事業が生まれても、普及には制度(許認可、監督、責任分界、保険、標準、調達等)が律速になりやすく、「技術はあるが、社会実装が進まない」という摩擦が増える可能性があります。

加えて、制度を設計・運用する側(中央省庁・自治体)も、採用難や専門人材不足、横断調整の負荷増などにより、更新スピードを上げにくくなることは十分に想定されますし、そうした環境下では働き手にも不満が溜まり、さらに働き手が離脱する、という悪循環が発生します。

その結果、外部委託(調査・制度設計支援等)を活用する場面は増え得ますが、行政内部に意思決定や実装の知見が残る設計(内製化・標準化・ナレッジ管理)が伴わないと、制度更新能力が長期的に弱まるリスクもあります。  

 

❗ どう解決するか

スタートアップは新しい試みをするからこそ、制度の歪みに気づきやすい(はず)です。こうした歪みに気づいたときに重要なのは、単なる規制緩和要求ではなく、公益(安全・公平)を守りながら更新する具体案を示すことです。たとえば、政府が動きやすいのは、次のような「立法事実のパッケージ」が揃ったときです。

  • 現行制度の目的(守っている価値)と、現行手段(ルール・手続)の整理
  • 前提ズレによって生じている具体的な不利益(遅延、供給不足、コスト、利用者不利益)
  • 新しく策定することによる利益(産業振興、厚生の向上等)
  • 代替案(段階導入、対象限定、期限付き特例、サンセット条項、実証条件付き等)
  • リスクとガードレール(監督、監査、モニタリング、責任分界、罰則、第三者検証)
  • 検証可能な指標(事故率、苦情、審査期間、価格、利用者便益など)

このように「高齢化した規制・制度を発見し、更新の設計図まで作って提示する」ところまでを、起業家側が担える余地が大きいということです。ロビイングというより、レギュラトリー・ストラテジーを含むプロダクト実装をどう行うかを考えることで、公益の最大化を狙うということです。ただこれをスタートアップだけで行うのは難しいので、何かしらの支援機関が必要なのだろうと思います。

また、制度を提案する人・組織が増えるほど、代替案の質が上がり、政策競争(より良い案が残る)が働きます。日本は独立系シンクタンクや政策起業の厚みが相対的に薄く、提案が点になりがちです。提案を継続的に磨き、比較し、実装までつなげる「場と仕組み」をどう作るかも、全体設計上の重要論点だと思います。 

 

📢 Requests for Startups

  • 政策競争の市場の構築
  • 制度更新のための新しいガバナンスの仕組みの実装
  • PolicyOps/GovOpsプラットフォーム
  • 調達改革OS(アウトカム型契約+リアルタイム検収)

関連記事はこちらです。

 

blog.takaumada.com

 

 

(6) 思想の高齢化

❓ 何が起きているのか

ここで言う「思想の高齢化」とは、思想それ自体が古いというより、社会の前提(人口・技術・経済・国際環境・生活実感)が変わっているのに、私たちが公共の議論を整理し、連帯し、意思決定するための言語や価値観の枠組みが更新されず、説明力を失っている状態だと捉えています。

たとえば近年、日本でも若者から中堅世代を中心に、既存の枠組みとは異なる政治勢力や言説への関心が高まったり、逆に既存政党への期待が伸び悩んだりする局面が見られます。これは、人々が「新しい思想」を求めはじめている兆候なのでは、と感じています。

また、昨今は以前なら「極端」とカテゴライズされていた主張が一定の支持を得るようにもなってきています。

アメリカの文脈でも、リベラル/保守という対立軸だけでは把握しづらい論点が増えているように見えます。リベラル側の問題は『アバンダンス』などで指摘されており、日本にも一部通じるところがあると感じています。国内外の保守も保守で、保守主義とは何かを省みることなく、時代の雰囲気に引っ張られて漂流しているように見える瞬間があります(※もちろん、これは相当程度、私の観察に基づく印象でもあります)。

国際秩序もまた揺らぎつつあります。G7ではなくG0やG2といった言葉が飛び交っており、従来とは異なるパワーバランスが表に出つつあります。また、このブログ記事を書き終わるタイミングで、アメリカによるベネズエラへの武力行使がありましたが、力による現状変更を是とする国々とどのように付き合っていくのか、日本は何の思想を堅持し、国際社会にどう貢献するのか、は改めて考えるべき時が来ているように感じます。

 

⏩ 今後何が起きるのか

社会は複雑化していくと、対立や混乱が生じやすくなります。また、ここは印象論でしかありませんが、社会が複雑になればなるほど、理解のためのコスト(認知負荷)が増えますし、さらに生活が悪くなればなるほど余裕がなくなるので、私たちの思考は「分かりやすい物語」に回収されやすくなります。

たとえば、

  • 「自分の生活が良くならないのは○○のせいだ」
  • 「それは自己責任だ(あなたのせいだ)」

のような、単純で強い説明に吸い寄せられていきます。そうすると対立は激化してしまいますし、それがSNS的な可視化・拡散の仕組みが結びつくと、不安・怒り・所属欲求が増幅されてより社会が脆くなります。

また、Make America Great Again のような、美化された形での「希望があった過去」へのノスタルジーが幅をきかせるのは、未来への希望が薄まっていることの裏返しでもあり、「大切にされている感覚」を失っている兆候ではないか、とも感じます。

こうした環境では、思想が更新されない限り、次のような事態が起きやすいのではないかと思います。

  • 分断の激化(論点の整理ができず、人格攻撃・属性攻撃に流れやすい)
  • 政策の停滞(合意が作れず、決められない/決めても持たない)
  • 信頼の劣化(制度・メディア・専門知への不信が連鎖する)
  • 国際環境の不確実性に対して、国内の結束が脆くなる

 

❗ どう解決するか

私たちは新しい未来の希望の物語を紡いでいかなくてはなりません。

ここで言う「物語」はプロパガンダでも、敵を作って熱狂を動員するのではなく、複雑な現実の中で、人々が尊厳を保ち、合意をして、前に進むための思想です。

それに、もし新しい思想の枠組みを形作ることができれば、日本が国際社会の中で大きな存在感を持つこともできるように思います。それは新しい秩序のルールメイキングの主体となる、ということです。

これをどのように形作るのか、が今求められるスタートアップ的な活動ではないか、と考えています。ある意味で、思想のスタートアップが必要であり、様々なプロトタイピングをしていくことが機会になるのではないか、ということです。

 

📢 Requests for Startups

以下は営利のスタートアップではなく、思想的起業家 (thought leader/entrepreneur) 的な人向けです。

  • 日本版『アバンダンス』に類する思想関連の出版
  • 理論に基づく保守思想の議論(“何を守るか”と“どう守るか”の再接続)
  • 「公共の議論OS」を再設計する取り組み(対話・討議のインフラ)
  • 独立系シンクタンク/公共哲学ラボの立ち上げを加速する仕組み

そのほか、思想については以下の記事も参照してください。

blog.takaumada.com

blog.takaumada.com

blog.takaumada.com

 

 

まとめ:秩序とその下部構造を整える

数十年続いた国際秩序や思想が弱まる中、新しい秩序や思想を形作っていく時代になったと感じています。

私たちの時代が新しい秩序を作っていかなければ一方で、そうした取り組みをするときに必要なのは、それを支える安定した生活であり、さらにそれを支えるハードや経済であるとも思っています。

 

そうした試みに1つでも興味のある人が増えてくれることを願っていますし、これらの複数の課題を1つのスコープで捉えて何かをやろうとしている人たちがいれば、一緒に何かしら取り組むことができるのでは、と思っています。

そうした意味で、Requests for Startups はある意味で仲間捜しのリクエストなのかもしれません。

 

以上、あくまで個人の考えでしかありませんが、現時点の考えをまとめておきます(ざっと書いたものなので、またすぐに変わるかもしれませんが…)。

 




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