Vite+ について詳しく知りたい方は、こちらの記事も非常に参考になります。 Vite 8 と Vite+ Alpha の登場 — VoidZero が描くフロントエンドの未来
Vue 3 + TypeScript の業務システムで Vite → Vite+ に移行し、ビルド・dev サーバー起動の速度がどう変わるかを検証しました。よくある「Hello World」レベルの検証ではなく、数千のモジュールを抱える実地コードでの検証です。
はじめに
背景:Vite 8 と Vite+ の登場
2026年3月、フロントエンド界隈で大きな動きがありました。
- Vite 8.0 リリース — 長らく予告されていた Rolldown(Rust 製バンドラ)がついに正式採用され、Vite の内部エンジンが Rollup から置き換え。
- Vite+ 発表 — VoidZero 社 が Vite 8・Vitest 4.1・Oxlint・Oxfmt・Rolldown・tsdown を統合した新しい統合ツールチェインを公開。
Vite+ は、ビルドだけでなく lint(Oxlint)やフォーマット(Oxfmt)など周辺ツールも Rust 実装に統合し、vp コマンド1つで完結させる「Web 開発の統合環境」を目指すプロジェクトです。
弊社プロジェクトの課題
弊社では Vue 3 + TypeScript + Vite で構築された業務システムを開発・運用しています。
- 規模感: 数千モジュール、エントリーポイント 10+ の大規模 SPA
- 課題: 長年の開発によりビルド時間の長さが開発体験(DX)のボトルネックに。
今回は Vite+ をこの「現場のコード」に導入し、どれだけ速くなるのかを定量的に計測しました。
検証環境
2026年現在のモダンな環境で計測しています。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| OS | macOS (Apple Silicon) |
| Node.js | v24.0.0 (LTS) |
| パッケージマネージャ | Yarn |
| Vue | 3.4 系 |
ベースライン計測(移行前)
各コマンドを 3 回ずつ実行した平均値です。
1. vite build(プロダクションビルド)
平均:88.0s さすがに数千モジュールあると、Rollup ベースでは 1 分を超えてきます。
2. vite dev(起動時間)
平均:2,113ms Vite は開発時は esbuild を使うため、これでも十分に速い部類です。
3. ESLint(Lint 実行)
ウォーム平均(キャッシュあり):~4s コールド平均(キャッシュなし):139.36s CI 環境など、キャッシュがない状態では 2 分以上かかっており、現場での大きなストレスでした。
Vite+ への移行とベンチマーク結果
vp build / vp dev を実行し、内部で Vite 8.0 + Rolldown が動く状態での結果です。
結果比較サマリー
| 計測項目 | 移行前 (Vite 5) | 移行後 (Vite+) | 改善率 |
|---|---|---|---|
| build | 88.0s | 32.6s | 2.7x 高速 |
| dev 起動 | 2,113ms | 2,015ms | 1.05x |
| lint (cold) | 139.36s (ESLint) | 5.1s (Oxlint) | 27.3x 高速 |
| lint (warm) | 3.90s (ESLint) | 2.3s (Oxlint) | 1.7x 高速 |
考察:現場で使ってみて分かったこと
1. Rolldown(Rust)によるビルド爆速化
ビルド時間が 88s → 33s と、3 分の 1 近くまで短縮されました。CI の待ち時間が減るのは、開発チーム全体にとって大きなメリットです。
2. dev サーバー起動は「微増」
約 5% の改善に留まりました。これは移行前の Vite でもプリバンドルに esbuild(Go 製)を使っていたため、元から速かったのが要因です。
3. Oxlint が最大のインパクト
今回の検証で最も驚いたのがこれです。数千ファイルを対象にした Lint が、キャッシュなしで 139s → 5s。
[注記] 今回のプロジェクトでは型情報を必要とするルール(type-aware rules)に依存していなかったため、スムーズに Oxlint へ移行できました。
まとめ
実際のプロダクトコードベースで(ちょっと強引に)検証した結果、ビルド 2.7倍、Lint 27倍高速化 という圧倒的な成果を確認できました。
特に Oxlint の恩恵は凄まじく、Vite+ 自体の Stable を待たずとも、既存環境に Oxlint を単体導入するだけでも「現場の負債(遅い Lint)」を即座に解消できると感じました。ただ、Oxlint はまだ TypeScript への対応が完全ではないため、現状は別途プラグインや ESLint との併用が必要です。
昨今、Claude Code などの AI ツールによって「コードを書くスピード」は劇的に向上していますが、だからこそ、そのコードを動かし、チェックするための開発環境の高速化からも目が離せません。
Vite+ は素晴らしいツールですが、これはあくまで「人間と AI の共存期間」のための最適化であり、性能の基準値を一段引き上げて「車をめちゃくちゃ速くしている」ようなイメージでいます。そのため「車の次(AI専用ネイティブな破壊的イノベーション)」を作っているわけではないのかもしれません。
今後、AI エージェント専用の開発環境や言語が生まれるかは分かりませんが、それまでの間、この強力な「高速マシン」である Vite+ の正式リリースを楽しみに待ちたいと思います。